第八話 シーン1〜2
1
草原と森の丁度中間に、エルギアが一機だけで立って居た。その上空には雲が垂れ込めて、ガルグを少しだけ陰鬱にする。
だがガルグとティアがここに来たのは、それなりに理由があってのことだ。
「ふむ。不味いことになってきた」
ガルグはぽつりと呟いた。
「ご主人様。どうかしたのですか?」
「まあな。ちょっと強い嵐が来る」
心配してきたティアに応えたが、事態は思ったよりも深刻だ。
ガルグは直ぐエルギアを歩かせてエルフの森へと引き返す。
「嵐、ですか?」
「ああそうだ。備えはしてきたが、間に合うか?」
ガルグはティアに問われ答えたが、今度は自分自身に問いかけた。
2
その日の朝。レイランド王城で──歴史は非常に大きく動いた。
いつものように王に呼び出され、接見の間へと訪れたアズマ。その視界はレイランドの国王、そしてフレイドを同時に捉えた。問題はフレイドがしたり顔を、隠そうともしていなかったことだ。
これは悪夢始まりだと言えた。
「アズマ・ロロドール。参上した」
が、アズマはとにかく王に言った。
すると案の定、横のフレイドが即座にアズマに向かって返す。
「アズマよ。王が決断なされたぞ!」
鼻息も荒くフレイドは言った。
しかしさすがに出しゃばりが過ぎる。
「これこれフレイド。予から言わせぬか」
「これはすみませぬ。余計な真似を……」
王が言うとフレイドが引き下がる。
そして代わりに王が立ち上がり、一歩二歩と、前に進み出た。
「アズマよ。予は遂に決断した。エルフに対し決戦を仕掛ける!」
その上で王はアズマに告げた。珍しく力強い印象で。
だがアズマにすれば予想の通り。まさに愚行と呼ぶべき行いだ。
とは言えここで苦言を呈しても、王の機嫌を損ねるだけだろう。
アズマは慎重にことを進める。
「なるほど。具体的な戦略は?」
アズマは王に対し、まず聞いた。
「うむ。まず防衛部隊を残し、ほぼ全軍をエルフの森へやる。複数の野営地に集結させ、揃ったところで一斉に攻める。エルフの生活の源である、大聖樹を焼き払い倒すのだ」
「もしも、辿り着けない場合には? 痛手を被ることになりますが……」
「安心せよ! そこも織り込み済みだ! フレイドによるとエルフの多くは森を離れられぬ脆弱な者。仮にこちらがやられたとしても、首都まで攻め込むのは不可能だ! なんならそこで和平を持ち出せば、奴らもころりと乗ってくるだろう」
「ふむ。なるほど。筋は通っています」
アズマはその解説を聞き、内心王を酷く馬鹿にした。
すべてフレイドの入れ知恵だろうが、攻撃後の和平など不可能だ。森を大切にしているエルフが、そんな提案に乗るわけがない。
フレイドと、アズマの折衷案──とでもおそらくは言いたいのだろう。だがフレイドは負けるつもりが無い。故に王へと吹き込んだのである。
アズマは戦うのが好きだ。が、無駄死にを増やす趣味は無い。
さて、問題はどう動くかだが──
「では王よ。私も進言が」
アズマは次善の策を考えた。
「ほうなんだ!? なんでも言うてみよ!」
「念のためと言うこともある。私は王の護衛に回りたい」
アズマは王に策を提示した。
だがその言葉に反応したのは、王ではなくその横のフレイドだ。
「なんだと!? では指揮官はどうする!?」
「ヘイザーに譲る。適任だ。頭が良く、部下の信頼もある」
アズマはフレイドへと返答した。
これ以上アズマが国を空ければ、部下や国民がどうなるか。それにアズマは敵の性格を──あのハーフエルフを一度見ている。
「さすが忠信アズマ! 良く申した!」
幸い王は至極馬鹿である。この提案の裏には気付かない。
「では私の鉄機兵ドラークを、与えヘイザーに指揮を執らせます。私には新型がありますので。フレイドもそれで文句は無いな?」
「無論だ! 王の決定なのだぞ!」
フレイドは露骨に嫌がりながら、アズマの作戦案に同意した。
「ではヘイザーには私から。攻め方は彼と煮詰めてください」
アズマは言って彼等に背を向けた。
フレイドには一本返したが、そのアズマの顔には喜びなど無い。アズマは既に次の戦いに、考えを巡らしていたからだ。
燃えさかる炎。苦しむ民草。生存を賭けた戦が始まる。
アズマがそれを一番知っていた。
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