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装虹のエルギア  作者: 谷橋ウナギ
第一章『回帰』
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第五話 シーン5



 例え頭が痛かったとしても、やらねばならないことがある。

 演習した日の夜。エルフの森。魔法の明かりが灯る森の中、ガルグはサシャとニノを待っていた。

 丸太で作った椅子に腰掛けて、目の前には四角く広い机。その上には美味しそうな料理が、皿一杯に盛り付けられている。尚、ティアは置いてこようとしたが、着いてきてガルグの横に座った。

 そんな状況で待機していると、やがて二人が訪れた。


「ほ……本日はお招きいただきありがとうございます! 隊長!」

「私、夜は早めに寝たいです。なのでお昼にやってくれません?」


 かしこまるにも程があるサシャと、早速文句を言いだしたニノだ。

 二人が到着した以上、ガルグが嫌でも始めるべきだ。


「あー。ではこれよりエルフ軍、特殊部隊懇親会を開く」


 ガルグは心底嫌々言った。


「今日の食事はエルフ仕様にした。肉は無いから安心して食べろ」


 まずは一応、食事の説明だ。

 エルフは基本的にベジタリアン。その上森の中に居るときは、食べる必要も特に無い。森の木々からエネルギーを貰う。よってこれはレジャーの一環だ。


「では乾杯」

「かんぱーい!」

「乾杯」


 そして懇親会が始まった。


「ふわぁ! どれもこれも、美味しいです!」

「確かに。これは普通に美味ですね」


 幸い食事はサシャにもニノにも、喜ばれているようである。

 ガルグも腕を振るったかいがある。


「ま、長々旅をしてきたからな。料理の腕なんて勝手に上がる」

「これ、隊長が作ったんですか!?」

「そうだ。エルフにシェフはいないだろ?」


 サシャに聞かれてガルグは返事した。

 だが何事にも裏がある。この旨い料理にも同じことだ。


「お口に合ったようで嬉しいよ。ではこれから反省会をする」


 ガルグは棒読み加減で言った。


「やっぱり裏があった」

「ニノうるさい。まずはサシャからだ。お前はその後」

「ひゃあ!? えとその、私からですか……」


 二人共反論ありそうだが、生憎ガルグは認めない。


「サシャ。お前はまず鍛練を積め。それと動きが少し素直すぎる」

「はあい。隊長。善処します……」


 ガルグが言うとサシャはうなだれた。

 しかしまだ言葉には続きがある。


「ただし発想は良く、機転も利く。転けなけりゃもう少し戦えた」

「はい! 頑張ります! ガルグ隊長!」


 今度は、サシャは褒められ喜んだ。

 さてさて次はニノの番である。


「ニノ。お前はかなりの手練れだな。積み上げた訓練が見て取れる」

「どうも。ありがとうございます」


 ニノの方は賞賛から始まる。無論指摘も後に続くのだが。


「ただし仲間を軽く見過ぎている。サシャを助けておけばあの瞬間、フォローが見込めたはずだ。たぶんな」

「気をつけます」


 彼女はクールである。賛辞を受けても、指摘を受けても。

 さてこれで部下二人は終わったが、この部隊には──もう一人が居た。


「よし。じゃあ最後は俺達の番だ。お前ら何かあったら言ってこい」


 ガルグは二人に向かって言った。

 嫌々とは言え部隊長。部隊員の意見は大切だ。


「正直、想像より強いです。今の話も納得できました」


 するとまずニノがガルグに言った。

 意外にも肯定的な意見だ。てっきり貶されると思ったが。


「私も凄いと思います! 隊長は最高の隊長です!」


 一方サシャの方は予想通り。両手を合わせてガルグに言った。今にも飛び跳ねそうな雰囲気だ。

 この二人でより問題なのは──おそらくはサシャの方だろう。


「おいサシャ。さすがにおかしくないか? 俺が何かしたなら謝るが」


 ガルグは素直にサシャへと聞いた。

 彼女の態度は最初から変だ。ただでさえガルグは、ハーフのエルフ。好かれる要素などは何処にも無い。

 だが彼女からは露骨なほどに──尊敬のような思いを感じる。


「謝るなんて……とんでもないです! 私、隊長に助けられました。その恩返しが出来ればと!」

「俺が助けた? あー……もしかして、鉄機兵を鹵獲したあのときか?」


 サシャの言葉で思い当たるのは、ガルグの記憶の中では一つだ。

 ヘイザー達が攻めてきたときに、ガルグは聖樹とエルフを守った。


「私、戦いは好きになれなくて。通信士を務めて居たんです……。そこからガルグ隊長の勇姿をたっぷり見させて頂きました!」

「なるほど。それでこうなったわけか」


 その話を聞きようやくガルグも、今までのことに納得がいった。

 とにかくガルグが嫌でもなんでも、部下が出来た事実は変えられない。ならせめて、関係を築くべきだ。たとえそれが仮初めだとしてもだ。


「よし。サシャ、ニノ。二人共聞きやがれ。こうなった以上、俺たちゃ仲間だ。しかもこのコロニーにおいてかなり、重要な策を担うことになる」


 故にガルグは二人へと言った。


「だから仲良くしろとは言わないが、背中を預けられるよう務めろ。これは俺からの、まあお願いだ」

「はい! 頑張ります!」

「それが任務なら」


 その返事はなんだか頼りないが、これも取引だ。仕方ない。


「なら今日は共に楽しんで食え。それが明日の活力に繋がる」


 こうして三人はそれから少し、食事を摂り互いに話し合った。

 しかしティアだけはそれを見ていたが、結局一言も喋らなかった。


ポイントくれるとやる気が上がるっす!

感想もお待ちしております。

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