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赤い金魚 冬

やっと更新できました。

ちょっと描写がわかりにくいカモです。

すいません;;

ある日の日曜日。

友達の家から帰る途中で変なものを見つけた。

人通りの無い路地裏に、男物の浴衣を着たおじさんが折り畳み椅子に座っている。

ビーチパラソルの下。

水の入った盥に金魚が泳いでいる。


おじさんと目が合った。

おじさんはニカツと笑った。

「君、ちょいと見ていかないか」

手招きをしたので仕方なく近づいた。


短く切った栗色の髪は所々銀に染められ、瞳は明るい茶色、色白の顔に朱い唇が際立つ。

近くで見るとおじさんというほど歳をとってはいない。

寧ろ青年と呼ぶ方がしっくりくる。


「金魚を売っているんだが、君、朱い金魚はいらないかい」

盥をみると、赤、黒、斑模様の色鮮やかな金魚が泳いでいる。

「一匹いくらなの?」

「なぁに、心配することはないさ。みてごらん」

何を言っているのだろうと思って顔をあげようとした時

朱い金魚がこっちの方へすいっと、泳いできた。

驚いていると、金魚売りは、さっと網で金魚を掬い上げ、水の入ったビニール袋に入れた。

金魚掬いの普通の袋…

「さ、君にやろう。この金魚は君に惹かれたんだ。このまま泳がせといても死ぬばかりで、コッチには何の役にも立たない」

そう言うかいなか、金魚を手に握らされた。


「世話は簡単だ、これを朝遣るだけでいい」

と言って金魚売りは白い布の袋を取り出して見せた。

中には白銀に輝くコンペイ糖のようなものがはいっている。

「何、これ」

見たことがあるような、無いような。

不思議に思い、聞いた。

星屑ほしくず

金魚だからな」

金魚売りはさも当然のことのように言った。


「何故、金魚だと星屑なの」

「何故って、金の魚と書くからに決まっているじゃないか。星は金に光るだろ」


よくわからなかったが、黙っていることにした。

「さ、俺は次に行かなきゃならない。

さよならだ。君も帰るだろ」


そう言われて、すぐに帰らないといけない気持ちになった。


家へ帰ると、魚の飼育が好きな父が、四角い水槽とハイテクな機械を倉庫から取ってきた。


さっと洗い、庭に置いてある水の入ったバケツを持ってきた。

二人でバケツの水を水槽へ移して機械のスイッチをいれた。

酸素を送り込む装置はコポコポと水泡を出した。

金魚をいれたら、父が

「物足りない」

と言って、庭にある金魚と鮒と小さい鯉のいるかめから水草を取ってきた。


これでよし。


一匹の金魚は優雅に水槽の中を泳ぎ廻っている。


きちんと世話をすれば、金魚は長生きをすると聞いた。

星屑を食べる金魚はどうなのだろう。


北風の冷たい、冬の日に買った金魚

長生きするだろうか…



藤堂昇とうどうのぼりの朝は早い。

どんなに寒くても6時に起きる。


顔を洗い、ジャージに着替えるとパンを食べてから、近所を一周走る。

その後、家でまたパンを食べて牛乳を飲むのが日課だった。


最近、その日課にもう一つ金魚の餌やりが加わった。


走りに行く前に

「おはよう」と、たった一匹で水槽で泳ぐ金魚に声を掛け、星屑をやる。


赤い金魚は嬉しそうに星屑を食べる。


「なんだか、恋人同士みたい」と、姉に言われた。


「金魚だよ。恋人なんかになれないよ」


反論したら、フフと笑われた。

何かを秘めた笑い方だった。



ある朝、金魚に星屑をやったら、星屑が無くなりそうだということに気づいた。


金魚売りに貰った分しか無いし、星屑なんて普通に売られている所なんて見たことがない。


どうしようか…。

走りながら考えることにした。


勢いよく、玄関の戸を開け外へ飛び出す。


「寒いな…」


冷たい風が頬に当たる。

いつものコース。

一周してまた家の前へ戻った。


ゴミを外へ出しにきた母さんが

「お帰り。今日、朝練無いって吉沢君から電話があったよ」


そういえば、昨日の夜は雨が降っていた。

アスファルトの道は乾いているが、学校のグラウンドは水浸しだろう。


顧問はあまり部活に熱心ではないから、なにかあると部活はすぐ、中止になる。


「そっか。…今何時?」

「6:34だよ。もう少し走る?」


「そうする」


今度は、違う道を行くことにした。

家の前には広い道路が通っていて、東西に伸びている。


東に行けば踏切、西に行けば十字路と緩やかな坂。


どっちに行くか迷って、西に決めた。

学校とは反対方向だ。

何か楽しいことが落ちているかもしれない。




まだ冷たい風が吹く。

少し汗ばんで暖まった体には心地よい。


十字路の坂道を越えた。信号は待たずに済んだ。スピードを加減して、止まらずに行けるように、信号を注意していた。


少し行くと左側に空き地のような公園が見えた。そこへ行くには、狭い道を通って行かなければならないようだ。


(ちょっと休憩しよう)

走るスピードを落とし、ズボンのポケットへ手を入れた。

120円が入っている。

(自動販売機があればジュースを買おう)


公園への道に差し掛かった時、

(…あ、れ?)

目が回る。

気分が悪い。

遠くで何かが倒れる音がしたと同時に、身体に衝撃が伝わった。


(なんだ?…倒れたのか?)


頬や手脚に冷たい物が当たっている。

次第に感覚が戻って来たようで、冷たい物が(地面か…)と分かった。


気分の悪さも引いた。

ゆっくり目を開けながら上体を起こしてみる。


「あ…え?」


周りは玉虫色に光っている。

どうやら洞窟のような場所にいるみたいだ。


乳白色の石は光を通しているのだろう。

とても明るい。


「今何時だ?」

周りを良く見回してみる。穴がいくつもある。

そこから迷路のように乳白色の回廊が伸びている。


今いる場所は、広い部屋みたいになっている。真ん中には円形の噴水があり、こんこんと透明で綺麗な水が出ている。


「はぁ…、あ」

小さな吐息が聞こえた。

振り向いてみると、

「起きた?身体は大丈夫みたいだね」


髪の長い少年がいた。

柔らかな笑みの浮かぶ顔は、人形のように綺麗に整っている。

黒い瞳はキラキラして、優しい。

抜けるように白い肌。

赤い衣を身に纏っている。


「よかった。目を覚まさなかったら、どうしようかと思ってたんだ」


「…綺麗な所だな」

何だか気が抜けてしまった。

あまりにも自然に話かけられたから、あまりにも相手の少年が無防備だから。


「そうでしょ?僕の秘密の場所なんだ」


秘密を共用することが嬉しいのか、満面の微笑みを浮かべた。


「水を飲む?」

「ああ、うん」


少年はどこからか硝子ガラスのコップを出すと、噴水から水を汲んだ。


「大丈夫だよ、自然にろ過されているから」

と少年にコップを渡される。


飲んでみる。

少し炭酸が入っている。気が付かなかったが、とても喉が渇いていたのか直ぐに飲み干してしまった。


少年は始終、笑みを浮かべて見つめていた。


俺は胡座をかいて座り、赤い着物の少年は正座をして座っていた。


「なあ、名前は何て言うんだ?俺は…」


少年は慌てて

「ダメ!…ほら名前は大事だから」と言った。


「じゃあ、呼び方決めるだけならいいのか?」


聞くとコクリと頷いた。

俺の名前は、漢字一文字。

音読みで《しょう》と読める。


「俺のことは、ショウって呼んでくれるか?」


「…しょう?」

少年は噛み締めるように《しょう》を繰り返した。


「お前のことは、何て呼べばいい?」


「…え。名前付けてくれるの?」

驚いた顔から嬉しそうな顔になる。


表情豊かだな。…呼び方を聞いてるだけなんだがな。


「呼び方を聞いてるんだ」


嬉しそうな表情は変わらない。


「ショウが決めて」


「俺が決めるのか。そうだな…」



「み、ら。ミラ」


「ミラ?」


「ああ、鯨座にある赤い星の名前だよ」


「…綺麗」


ミラはうっとりした顔で

「ショウ、ありがと」


「どういたしまして」


「あのねショウ…」


「ん?」


「…やっぱりいいや」


「なんだよ?」


「なんでもないよ」


「いいよ。言って」


ミラは少しの間、俯いて考え込んでいた。


「ショウ…、また会ってくれる?」


なんだそんなことか。


「いいよ」


「本当?」


「何が本当なんだ?」

ミラは何か怯えているような表情になり、立ち上がった。


声のしたほうには、誰かが立っている。


シルバーブロンドのサラサラの髪をショートカットにした、ミラくらい綺麗な少年。

威圧感がある瞳は鋭い。

銀色の少年の体格より大きいサイズのシャツに半ズボン。


「捜したよ、赤色」

その少年はミラに言った。


「…白銀」


「帰るよ」


「!い、嫌だ!ショウともう少し、一緒に居たいんだ」


白銀と呼ばれた少年は、呆れた顔をした。


「何を聞き分けのないこと言ってるんだ。さあ来るんだ」


ミラの腕を無理矢理掴んだ。


「やだ!」


ミラが暴れて白銀の頬を手で打ってしまった。


「赤色…」


「う゛」


昇の目には何が起きたのか解らなかった。


ミラは気を失い、白銀は軽々とミラを抱き上げた。


「あんたも帰ったほうがいい」


白銀は昇に言って洞窟から出て行こうとした。


「…また会う約束したんだ」


「…目を開ければ戻れる」


「…約束は果たしたい」


「時期が来るまで待てばいい」白銀は仕方なさそうに答えた。


「…あ」目を覚ますと家の前にいた。


「お帰り」


勝手口から出てきた母さんが、微笑みながら言った。


「遅刻するよ」


「うん」


家の中に入って、学校へ行く支度をした。


ふと金魚の水槽を見てみた。


水槽の中は空だった。

…どうでしたでしょう?

赤い金魚の話はまだ続きます。

《冬》の話しがあるのだからほかの季節の話もあるんです。

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