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"閉果"書庫の管理人  作者: ボタン脳死連打
はじまり
1/3

プロローグ

初投稿です。よろしくお願いします。

「なー、なー、なんか面白い本無いのかよー」

 

 薄暗い空間に、不釣り合いな明るい声が響く。


「さっきも言ったでしょう。ここにあなたみたいな

子供の好きそうな本は置いてないのよ。わかったら早く帰ってちょうだい」


 素っ気なく答えたのは少女の声だった。

か細い蝋燭の光を受けてうっすらとオレンジ色に輝く髪に、

僅かな衝撃で壊れてしまいそうなほど白い肌の少女。

 彼女もまた、隣に座って不満そうに口を尖らせている少年のように、

しかし、また違った意味で、この空間には似合わない風貌だった。


「ちぇっ、せっかくこんなところに来れたのにつまんねーねぇちゃんだな」

「......」


 彼女は、相手をするのが面倒になったのか彼を無視して本を読み進める。

分厚くて、古臭い感じが漂う本に、彼は顔を顰める。


「そんな本読んで何が楽しーんだよ、えーっと......なんだこれ? タイトルがついてないや」

「ここにある本は全部題名がないのよ」

「それじゃあどんな話かさっぱりわからないじゃん」

 

 少年が呆れ混じりに言う。


「ええ、そうよ」


 それに対する、予想に反した答えに、彼は絶句するほかなかった。


「私も、読んでみるまでどんなお話なのか、わからないのよ」

「面白くないだろ、そんなの」


 訝しげに言う少年に、少女はからかうような笑みを浮かべた。


「あなたにはまだわからないのね。次はどんなお話が待っているのか、

ドキドキしながら表紙を開く楽しみが」

「それで、つまらないのが出てきたらどうすんだよ」

「つまらないお話なんてないわ。どの本にも絶対に違った面白さがあるの」

「ふーん、よくわかんないや」


 彼は言うなりそっぽを向いてしまった。どこか、落ち着かないようにも見えた。


「そんなに信じられないならあなたも何か読んでみればいいじゃないの」


 先ほどとは違って、彼が本に少なからず興味を示したからか、彼女は彼に本を勧めた。

 少年の方も、ずっと話をしていてもあまり良い暇つぶしにはならないと思ったのか、

面白そうな本はないかと探し始めたようだ。


「ああ、そっちの本棚の本は取っちゃダメよ」


 彼女の思い出したような注意に彼は不思議そうな表情を浮かべる。


「なんで? 」

「......私もまだ読んでいないもの。お話をバラされてもつまらないでしょ」

「そっか、確かにそうだな」


 彼はそう言って、反対側に歩き出した。


(危なかった。あっちの本を開いたらどうなるかわからないもの。こんなところで人がいなくなるのをみるのは御免だわ)

 

 薄暗い部屋に、彼女の呟きが残った。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 それからも、度々たわいも無い話をしながら、彼らは静かに時間を過ごしていた。


「うおっ、なんだこれ」


 奥の本棚から急に聞こえた少年の驚く声に彼女は先を立って様子を見に行く。

 そこでは、少年が暖かい光に包まれていた。


「なんか、体、光ってるんだけど ......」


 少年が不安そうに言う。


「あらあら、お帰りの時間みたいね」


 彼女は、泣く子をあやすように、柔らかく言った。


「そっか、帰れるんだな......その、今日はありがとな、ねーちゃん。変なとこだったけど、楽しかったぜ! 」

「そう、それはよかった。私も、久しぶりのお客さんだったから楽しかったわ」

 

 彼女は、まんざらでもなさそうに答えた。

 そう、実に久々の客人だったので、彼女は内心かなり動揺していた。

最も、彼の明るい様子を見て、ぎこちなかった態度もかなり軟化したようだったが。


「また来るぜ! ねーちゃん」

「ふふ、待っているわ」


 そんな挨拶をしているうちに、彼の体がだんだんと白み始めた。


 そこは、依然として、明かりの少ない、とても人が住んでいる場所とは思えない所だった。

しかし、彼の体から走る光が、そんな場所を、水面に差す陽の光のように照らしていた。

 光に照らされて姿を現したのは、齢14ほどの背丈の彼女の、優に5倍は高いであろう本棚が、密林のごとく所狭しと並ぶ光景だった。


 彼女は、彼の姿が完全に消えるのを確認すると、再び座っていた机に戻っていった。


 彼がいなくなって、再び静けさを取り戻した"図書館"の闇へ少女は消えていった。



 



 



キーワード回収は早めになるよう努力はします。

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