プロローグ
何時間寝ていたのだろう。
なぜだかひどい頭痛がする。それと、手足に食い込むような痛みもある。
あたりは目を閉じていてもわかるくらいに明るい。
もう起きないと。
そういって、まぶたを開くと天地が逆転していた。
身体を起こそうとするが動きたくても動けない。
金縛りとかではなく物理的に動けないのだ。
なぜかって?
わたしはいま丈夫そうな木に手足を縄で縛られ吊るされているからだ。
ーーあれは晴れた日の午後だった。
わたしは幸運なことにもエゾマツの近くに一本の松茸を見つけたのだ。
急いで駆けつけて松茸の香りを楽しみ、いざ食すそんなときだった。
後ろから頭を思いっきり木の棒で殴られ気絶した。
そして気がついたら、こんな状況だ。
まったく何も悪いことをしていないのだからそっとしておいてくれればいいのに。
はぁ。
目の前には薄紅色の着物を着た老婆と青緑色の着物を着た老人が囲炉裏で鍋を温めながら和気あいあいとしている。
「ばあさんや肉なんて食べるの久しぶりだなぁ」
「野菜もたくさん採ってきたから今日は豪華な鍋ですよ」
と老婆は笑いながら答える。
っておいおい。
えっっ、もしかしてわたしこれから食べられるの!?
いやいやないないそんなことない、てかそんなことあったらダメでしょ。
動物愛護団体に怒られますよ。
わかってますか、というかお願いだから食べないでぇぇ。
「うゆーーん」
「ゔーーーー」
と泣いて懇願するもどうも通じている気がしない。
そんなわたしのことなどつゆ知らず老夫婦は上機嫌だ。
「婆さんや湯も沸騰してきたしそろそろ、野菜を用意してくれないか? その間にわしは獲ったアナグマを捌いとくから」
「わかりましたよ」
と老婆が答えてから、二人は立ち上がり台所へ向かっていった。
いやいやしゃれにならないから。
どうにかしてここから逃げ出さないとまずい。
といっても両手両足縛られてるからどうしようも無いんだけど。
頭をフル回転させてこの状況を解決できる打開策を。
「……」
「……」
「……」
あっそうだ、死んだふりをして相手のスキができたうちに逃げればいいじゃないか。
いままでにも何回もこの技を使ってピンチを切り抜けてきた。
絶対にうまくいく。
ふふ、わたしってやっぱり天才だな。
老人が包丁を持ってこちらに近づいてくる。
冷静になれ、慌てるな。
まだ終わったわけじゃない本番はこれからだ。
精神を落ち着かせろ。
そう身体も心もクールになるんだ。
身体が持ち上げられた。
全身が左右に揺さぶられながら外に運び出される。
怖くて身体が小刻みに震えている。
だけど大丈夫今までどおりきっとなんとかなると自分に言い聞かせて死んだふりを続ける。
外に着いたのだろうか。地面に降ろされる。
敵は完全に油断している。
まぁ、それもそうだろう動物って有利な立場にいるときにはスキだらけだからな。
いっときの優越感に浸っているがいいさ。
ふふ、わたしに逃げられて悔しがってる顔が目に浮かぶわ。
さぁこの縄をほどくがいい。
ん、どうした。
老人はいっこうに縄をほどく気配がない。
それどころか、どこに包丁を刺すかさぐっている。
「よし、ここかな」
といって、老人は包丁を右手で握りしめた。
あれ、おかしい計画と違う。
まさか縄ほどかないでこのままいくとかいわないよね。
そんなの聞いてないよ。
「……」
いやだぁァァーーーー。
まだ死にだぐなぁぁぃ。
生きだいっ!!!!
必死に抵抗し暴れまわる。
こんなことしても無駄なのかもしれない、でも抵抗せずにはいられなかった。
「おうおう、元気があっていいね」
と言って老人は包丁をバケツの上に置いて、木のこんぼうに持ち替え大きく振り上げた。
ガンッ!!!
わたしは頭を思いっきり殴られた。
眼の前が白くなり意識が遠のいていく。
そんなとき老人が一言つぶやいたのがきこえた。
「アナグマの肉は鍋にして食べると最高だからなぁ」
えっ……。
今アナグマっていった?
あの、わたしたぬきなんですけど。
こうして、わたしはアナグマと間違われて鍋にされた。
プロローグだけは書きましたが、ここから続きは他の人に任せます。
これ面白そう読みたいと思ったらブックマークやツイートなどリアクションお願いします。
話題になったら誰か作品化してくれるかも……。
一緒に作品づくりしたいっていう作家さんご連絡お待ちしております。