リディは困惑気味である
「だからね?この地域は今の所調査に行かなくても大丈夫だと思う。それよりココとココ!多分今行かないと保たない。薬もいくつか渡すから先にこちらに行って。あと、ここの橋を早く復旧しないと物資が円滑に運べないと思う。先になんとか直せないかな?」
「・・・・そうだな。人を雇う形なら・・・まともな建築者が残っていればいいが・・・」
週に一度のアースポント補充の日。
私は出来る限りメリルが補充する場に同行している。
最初は監視する意味もあったんだが、最近は何故か国の復旧作業についての話ばかりだ。何故メリルが?お前薬術の事以外興味なかったのでは?
「後、この後またポーションを作り貯めておくから後で取りに来て? 未だに列が途切れないんでしょ?」
「・・・・・大丈夫なのか。それで万が一倒れられると困るんだが?」
「倒れないのが不思議よね?おかしいなぁ?明らかに魔力使い過ぎだと思うんだけどなぁ?全く疲れないのよね?」
どうなっているんだコイツの体。
あれからポーションがあっという間に失くなり、どうしようかと思っていたら既に次の袋が用意されていた時は、思わずお前を二度見した。一体どんな手を使って手に入れたのかと。
「あ! 一杯になった。じゃあ私はあっちに帰る。手筈通りにお願いね?」
いや、手筈通りってなんなんだ。
お前いつから宮廷で働く事に?
あんなに我々に協力するの拒んでただろう?
「本当に大丈夫なのか?無理はするな」
「・・・・・それはこっちの台詞なんだけど?」
「・・・・なんの事だ」
「リディさぁ、全然休んでないでしょ?その調子で働いたら死んじゃうよ?」
簡単に人を殺すな。こんな事で私は死にはしない。
「どれどれ?ちょっと見せてみてよ?」
「は? なん・・・・・」
フォン
人のおでこを突っつくな。
ん?体が・・・温かい?
「・・・・・・・・・うっわぁ・・・信じらんない」
おい?お前その顔ヤメろ。
人を小馬鹿にしたようなその表情・・・失礼な奴だな!
何度も言うが私はこの国の皇帝だぞ!?
あ、でも、凄く心地いいな・・・お前何してるんだ?
「これは、腕が鳴るわね。ポーションを作ろうと思ってたけど予定変更。リディ、これあげる。これから口にするご飯には必ずこれを入れて。一滴垂らすだけでいい」
「なんだそれは」
「ん?無味無臭の解毒剤。あんた毎日微量の毒を食事に混ぜられてる」
・・・・・おい。メリル。それは宮廷を揺るがす程の大事件なんだが?お前何故笑いながらそんな事伝えてきた?
そんなに面白いか? 私が毒を盛られていたのが。
「私の仕事が何か知ってるよね?私は薬師だけど、医療技術も施せる。私は今リディを診察してるの。貴方の体の中がどうなっているのか、調べてる。これは私の両親から教わった方法だけどね?このままほっとくと、まず最初に目が見えなくなる」
ゾッ! お前、こともなげに言っているが・・・私からしたら大問題だぞ?一体誰だ?信用出来ない者はここには殆ど残していない。
「まぁ早い段階で分かったから解毒薬と中和剤。後ホイ!」
おもむろに口にポーションを突っ込むな!
そのまま飲み込みそうになったぞ!!
と、いうか始めて使用したが、凄いなコレ。
一気に身体が楽になった。
「心配だから薬は私が直接貴方に渡すわ。致死量ではないから急がなくても平気だけど明日渡す」
「・・・・それは、助かる。報酬は何がいい?」
「え?じゃあ私のモルモットに・・・・」
「お前、私が皇帝だという事を忘れるな。頼むから人前ではそれ、口には出さないでくれ。大問題になる」
本当にコイツ冷や冷やするな。
そして何気にコイツ凄い使える。
実はとても優秀な人間なのでは?
「久し振りに本格的に調合出来る・・・グフッどんな薬にしようかな・・・・グヒヒ」
あ、気のせいか。ただの変人だった。
私の目の前には変人がいる。
しかし、食事に毒だと?
微量過ぎたのか誰も気が付かなかったか?
どの時点で入れられていたのか、調べなければ。
「テット返そうか?貴方の側近でしょ?困るんじゃないの?」
「もう一人いるから問題はない。なんだ? チェンジか?」
「え? チェンジ出来るなら早く言っといてよ!・・・・いや、いいわ。私人と関わるの本当苦手なんだもん」
は?どこが?お前誰とも物怖じせずに話してるだろう?
寧ろ誰にでもその太々しい態度で相対するだろ?
少しは遠慮しろ。相手を気遣え。
「ッスッスうざいけど、最近は慣れたというか。慣れた環境が変わるのも、私、好きじゃないから。本当にややこしい体質なんだよねぇ。デリケートなの。私」
誰がだ、誰が。
お前ここに連れて来られた頃から全く物怖じせずに過ごしていたそうじゃないか。夜も爆睡だったと聞いている。
デリケートのデの字もないだろ。訂正しろ!
コンコン。
「なんだ?」
「陛下、お時間です。お戻り下さい」
まぁだが、メリルに付けたのがテットだったのは確かに安易だったか?コイツより気安いテットの方が馴染みやすいかと思ったんだが・・・・ん?
「メリル?どうした?」
「目つき悪っ!あの人いやぁ〜」
お前何馴れ馴れしく俺の体を盾にして隠れてる。
彼は私のもう一人の側近だ。
「申し訳ありませんメリル様。この顔は、生まれつきです」
「それ以上近寄らないで。側に寄られたくない」
「・・・・・・ラフィネラ。そこから動くな。メリル私はもう行くが、無理はするなよ?」
「分かってるってば!しつこいなぁ〜」
ラフィネラ・・・睨むな。
頼むからメリルを刺激しないでくれ・・・・。
せっかく協力する気になってくれているんだ。
また、土下座の嵐の日々に戻るのはごめん被る。
「ちんくしゃが・・・調子に乗って(ボソリ)」
だから止めろ!
私がどれ程耐えてここまで持って来たと思ってるんだ!!
コイツ一度ヘソ曲げたら下手すると一生協力してくれなそうだから頼む!
それにメリルそれ程ちんくしゃではないぞ!
姉と比べるから劣るだけで黙ってればそれなりの見た目だ。黙ってればだがな!!