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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第2章メリル動く
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テゼールとデズロは仲が良い

大分寒くなって来たな。

そろそろ冬支度を始めた方がいいか。


カタカタカタカタカタカタ。


幸いな事に、この国は雪が降らないからな。

オスカール国の北東は雪が降るのだったか。


カタカタカタカタカタカタ。


だが皆の毛布を用意しておくか、それで・・・。


[ちょっとテゼール? 無視なの? 早速僕の事、無視なの?]


「・・・・お前、それどうやっているんだ?」


何故私の部屋の置き鏡にお前の姿が映し出されているんだ?気持ち悪い。


[そりゃあ、テゼールと連絡を取り合う為に僕がそちらとこちらを鏡で繋いでいるからだよ? いいでしょ? コレ]


「それならそうと言っておけよ。わざわざ驚かそうとか考えるな」


つまらなそうな顔だな。

今更私を驚かそうとか無駄だぞ。

お前どれだけ昔、無茶してたと思う?

私はそれをずっと隣で見てきたからな。

エルハド並みにお前に対する耐性は付いている。


「で? ティファに何かあったのか?」


[そうだね。ティファの婚約者だって言ってた子が大樹に飲み込まれた]


「何だと!!」


ちょっと待て。

つまり、どういう事だ?


[・・・・僕等がサウジスカルに戻った時は、全て終わった後だった。でも、話を纏めるとハイトは自ら大樹を受け入れたらしい。実は、それで分かった事があるんだよね]


これは、真面目な話なのだな?

リディではなく、私に連絡してくるという事は・・・。


[サウジスカルには精霊がいる。でも、それは大樹じゃない。大樹は本来カスバール国の精霊になる筈だったらしいんだ。大昔ハイトの先祖が手違いでこちらに連れて来てしまったみたい。しかも盟約まで交わしちゃったらしくって、そのお陰でカスバールには、居なければいけない精霊が不在だったらしい]


そうなのか。

だが、その話が今、関係あるのか?


[分からない? カスバールがずっと荒廃し続けたのは、その所為なんだよ? しかも、そこに僕達も関係してる]


「・・・・・マスカーシャか?」


[テゼールは本当に嫌ってるよね? 一応僕達の一族の姓なんだけど?]


「兄さんがどうかしているんだ。よくも、そんな呪われた姓を名乗れるものだ」


私達を物のように売り飛ばした家の名など、思い出したくもない。何故、お前はその名を名乗っているんだろうな。


[テゼール。僕達の血族は、大樹の精霊を守護する使命を課せられていたらしいよ? それで、僕は呼び寄せられたらしい。サウジスカルの精霊にね]


「・・・まさか・・・では、エルハドが?」


[そう。エルハドの血族は、サウジスカルの精霊を守護する一族だったんだ。だからエルハドは精霊に導かれ僕達の所まで来た。全て、精霊の仕業だったってわけ]


なんだそれは。

そんな事の為に、私やデスロは・・・テリアーゼは・・。


[勘違いしないでテゼール。僕は、精霊に感謝してる]


「・・・兄さん?」


[あの時。エルハドが僕達の前に現れなければ、僕はずっとあそこから抜け出せなかったよ? テゼールだってそうだ。僕は精霊やエルハドに感謝してる。僕は今、とても幸せなんだ]


「・・・・そうか」


デズロもティファも、そちらに渡って幸せになったんだな。

少し、悔しいが仕方ない。

あの国の人々は確かに、皆温かかった。


良かったな。兄さん。


[うん。だからテゼールも同じくらい幸せにならないとね? それで本題なんだけど、恐らくハイトは大樹と同化して完全に人間になろうとしているんだと思う。つまり、大樹は精霊としての役割を終え、この国から消える。それと同時にそちらに精霊が誕生する筈だよ]


「今、正にその事でメリル達が振り回されているぞ。お前達がカスバールを出て数日後、こちらに居た妖精が一斉に光を放ち消え去った。その光はチェシャに吸い込まれ、本人はそれ以来一度も目覚めない。メリル曰く彼等は精霊を守護する一族かも知れないという事だ。お前の話と合わせると、私達の後継がディムレム、と、いう事か?」


そもそもこの世界にどれだけ精霊が居て、それを守る者がどれだけいるのかなど私達にわかる筈もない。


面識もなければ親から受け継がれもしなかったのだから。


[どうだろう。精霊が誕生する度に守護する人間も毎回変わるのか・・・相手が人間じゃないから、あまりこちらから聞けないんだよね。結構危険な行為だから]


その通りだ。ティファは軽いノリで子竜と誓約を交わしていたがな? アイツは本当に・・・しょうもない!


[嫌な予感がするね? もしかして生まれて来る精霊は危険を感知してナシェスの中に逃げ込んだのかもしれない]


その可能性は私もメリルも考えていた。


わざわざチェシャの体を介して精霊が誕生しなければならない理由がある。


「チェシャは理由を知っていたのか、それを受け入れたらしい。だが、それではチェシャが狙われて危険な事に変わりないと思わないか?」


[・・・・そうだね。それか、チェシャが誰かに殺されると何か起こる・・・とか?]


おい。お前また物騒な事を言いだしたな?

もしかしてまだ色々根に持っているのか?

そんな事メリルは絶対許さないと思うぞ?


[精霊は役割を終えて人間になれるらしいよ? そしてその逆も・・・・一応可能らしい]


「そんな馬鹿な。人間が精霊になど、なれる筈ないだろ?」


その顔は、冗談では無さそうだな。

しかし、そんな事になったら人間のチェシャはどうなるんだ?


[昔ハイトの先祖はそれを拒んだらしいよ。そして、精霊も人にはならなかった。大樹は自分を連れて来た人間と同じ者になりたかったらしいからね。ゼクトリアムの先祖の古い日記にそう書いてあったから]


「・・・一体、どうしたらいいんだ・・・」


[こちらの大樹が完全に消え去る前に、チェシャを起こすしかないよね? ()()入れないの?]


「・・・私には無理だ。マリオーネかメリルなら入れるかもしれないが、アレは危険すぎる。下手をすると帰ってこれなくなるからな」


もしやると言ったら私は全力で止める。

絶対にやらせたくはない。


[・・・・じゃあ、この話をメリルにするかしないかは、テゼールに任せるよ。テゼール]


「・・・なんだ」


[僕は今まで自分がしたいように生きて来た。どんな境遇の中にいた時でもそれは変わらない。だから、一度だって自分の不遇や困難を人の所為にした事はないんだ]


そうだな。それが、ずっと不思議だった。

兄さんは、幼い頃からずっと周りの人間から虐げられて生きて来た。それなのに、自分の不幸が誰かの所為だと口にした事は一度もない。私が居なければ、もっと楽に生きられた筈なのに、決して私を手元から離そうとせず、文句も言わず守り続けた。


[だから僕はお前がどんな選択をしてもそれがどんな結果になっても構わないと思ってる。それでカスバールが滅びても、僕はお前の味方でいてあげる]


「・・・・・どうして、お前は、私の兄なんだろうな?」


[何それ? 相変わらず失礼な奴だよね? 僕が兄じゃそんなに不満なの?]


阿呆が。逆だ。


「お前は、私の兄にするには勿体無かった。お前は、もっと家族に愛されるべき人間だ」


・・・・・私もだ。

お前の周りに誰も居なくなったとしても、私だけはお前の味方でいる。そんな事、あり得ないから考えた事もないけどな?お前が誰からも愛されないなど、あり得ない。


「愛している。お前は私の自慢すべき兄で、私の家族だからな」


[・・・・・普段もそれくらい素直なら可愛いのに。テレ屋なんだからなぁ・・・]


お前はいつも一言多いな。

それさえ無ければ私はもう少し素直な人間に成長したと思うぞ? 少し反省しろ!

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