リディはメリルを外に出したい
「チェシャは妖精と何か約束をしたのだと思う」
「約束? なんだそれは」
兄のナシェスことチェシャが意識不明になり数日後メリルはアースポントを口実に私に会いに来た。
最近アースポントに余裕があるお陰でメリルとこうして話せる時間が減ったのだ。
意図的に、妨害されているともとれる。
私がメリルの様子を気にする必要がないとやんわりと行動を制限して来るのだ。
宮廷官達の意見は今のところ大きく分けて二つ。
メリルを私の側に置きたい者。
私から引き離し、手に入れたい者。
アースポントが増え必ずしもメリルがいなければならないという事が無くなった今、後者の動きが目立ち始めている。これに関してメリルは私にキッパリ言い放った。
「あのね? 私がただ大人しくアースポントに触っているだけの慎ましい女の子に見える? 散々暴れている所を見てるのに分かんないかな? 私はリディの味方になるって言ったでしょ? なら、最後まで見届けてあげるわよ」
メリルからそんな言葉を受け取るたびに、私は感じた事も無いような気持ちに襲われる。
メリルは、どうして私に協力してくれる気になったんだろうか? 彼女は、この国が滅びるのならしょうがないと思っていた。積極的にこの国を変えようなどとは思っていなかったと思う。だったら何故?
「妖精のことは分からないけど、精霊や人でないものとは本来人間は接触してはならないと思う。何故なら彼等との会話や約束の中で誤って盟約や誓約を交わしてしまう場合がある。相手がそのつもりで話してこちらが了承してしまえばそれは取り消しが効かない場合が多い。だから、私は妖精とは殆ど言葉を交わさなかったわ。その話はお母さんや昔宮廷で働いていた事がある秘文書を扱っていた人が教えてくれたの。その人はヨボヨボのお爺さんだったから、今となっては詳しい事は分からないけど」
そうだったんだな。
おかしいとは思っていた。
メリルは実は妖精が見えて妖精と会話も出来ると言っていたのに、彼等からは一切情報を引き出そうとしなかった。
妖精達の会話や行動はよく観察していたから、何か起きる前や、予兆などはそれで把握していたんだな。
「それに、兄様は応えた、と?」
「恐らく。精霊を護る役目をリディ。貴方の血族が請け負う可能性があるって言ったよね? 実はリディの周りにも妖精は沢山いたの。リディは見えなかったけど」
「そうなのか? 全然気付かなかった」
「貴方、気付かない内に彼等に何度も助けられていると思う」
「私に、その精霊を見つけろと?」
「うん。見つけて・・・精霊と話して欲しい」
それはまた、難易度が増したな。
私はここから離れられない。探しになど行けないぞ。
「だから精霊は私達が探す」
「・・・・は?」
「私をここから出して。今なら可能でしょ? 私をリディから引き離したい奴等の思惑に乗っかってやろうって言ってるの。久しぶりに喧嘩しよう!」
アーーーーーっ・・・・そうか。アレをやるのか。
まぁ、しょうがないな。
「それで? 話したい事とはなんだ?」
「あのね? もう私ここにずっと居なくていいよね? いい加減ここから出して」
「メ、メリル様? 何を仰います! まだ、新しいアースポントが出来て間がありません! もう少し様子を見てから」
「いや、確かにメリル様の言う事も一理ある。アースポントに余裕もでき、閉じ込めて置かなくとも良くなったのだ。少しは外に出ねば、メリル様も窮屈だろう?」
テンプレか? お前達はテンプレなのか?
それとも実はメリルと打ち合わせしているのか?
面白いぐらいメリルの言う通りに事が進んでいるぞ。
「だよね? 私いい加減新しい服とかも欲しいから街に降りたい。いいでしょ?」
「何を言っている? お前は優秀な魔術師だ、誰に狙われるか分からんのだぞ? 許可出来ない」
「へ、陛下・・・」
さて、耳を塞ごうか?あ、そんな事したらバレるな。はぁ。
「はぁーーーーー!? リディが許可するもしないも関係ないけど? 私はリディの配下でもなんでもないけど? 私は城下町に行って新しい薬の参考になる材料を見に行きたいの! 行かせてくれないなら、もう協力なんてしない!!」
「駄目とは行っていないだろうが! 今は許可出来ないと言っている! お前自分がこの宮廷でも襲われた事を忘れたのか!!」
「それはリディの所為でしょ!! そもそもなんで私勝手にアンタの婚約者にされそうになってんの! 冗談じゃないわよ!誰だそんな事吹聴した奴〜!」
思いっきり顔を逸らした者が数名いるな?
他にもいるんだろうが。お前達の所為でメリルは大変な目に合っているらしいぞ? 小悪魔天使の快進撃が止まらないらしい。なんだそれ。誰と戦って勝ってるんだ? シャミは。
「と・に・か・く!! 私に外出許可をくれるまでアースポントには触れないから! いくら他の人が使える様になったからってまだまだ私のレベルには程遠いんでしょ?」
メリル。お前すごいぞ。
とても演技だとは思えない。いや、演技じゃないな?
結構本気だな? 本気の不満が混ざってるんだな?
「・・・・城下町だけだぞ? そこからはまだ出るな。まだお前に必要な護衛を用意出来る状態じゃない」
「そんなのいらないわよ。私強いよ?」
「何を仰います! そんな事を言いながらこの前は・・・」
「アレはさぁ。あの状態で魔法使ったらこの宮廷全部吹っ飛びそうだったからギリギリまで迷ってただけ」
「・・・・・は?」
おいメリル。それは、聞いてないぞ?
つまり、あの状態から魔法を使ったら下手すると全滅していたって事か?
「自分一人だけならどうとでもなるからね? これでもかなり 気を使ってあげたんだよ? 私の伯父さんがデズロさんだってもう皆知ってるよね? あと変な考えは起こさない方がいい。いざとなれば私、自分だけ生き残れればそれでいいからね?」
「・・・・肝に命じておこう。もう下がれ」
「じゃ、明日から街に出かけるからよろしく〜」
「そ、そんな。メリル様・・・」
相変わらず強引だな。
だが、任せたぞ?
大丈夫だ。私はお前を、信じている。




