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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第1章カスバール宮廷
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エピソード2 フィクスの秘密

「本当に・・・よかったの? 寄り道してる暇ないんじゃない?」


サウジスカルの大樹にあんな秘密が隠されているなんて思いもいなかったわ。


大樹が本当に精霊で、それをハイトの家が代々守ってたなんてね?


しかも何故かハイトの体の中に大昔、大樹から取り出されたはずの核があるなんて。


フィクス、きっと今直ぐにでもハイトの下に駆けつけたいわよね? ハイトとフィクスは親友だって聞いているもの。


「大丈夫。後の事はアイラに任せてある。俺が側にいても対してハイトの助けにはならないしな」


「アイラに? そんな事アイラに任せたってどうも出来ないでしょう? 何言っているの?」


アイラはフィクスの妹よ。

ちょっと高飛車な所があるけど、とても良い子なの。

あの子も、私の為に泣いてくれた一人。

でも、アイラはただのご令嬢よ?

騎士でもないのに何を任せるのかしら?


「ここがお墓?」


「・・・・ええ。寂しいものでしょ?」


結局到着しちゃったわね。

騎士になってからは全然来れなかったし、そのままこの国から出てしまったから荒れ放題ね。


まぁそもそも、このお墓自体ティファが作ってくれた簡単な物だけれど。


「ベロニカのご両親は、どんな人達だった?」


「・・・・そうねぇ。一言で言い表すなら、お人好しだったわ。だから私が剣をとった。私兵士になる前から自警団に勤めていたの。自警団と言っても本当に小さい街の、たいして強くもない人間の集まりだったけどね」


もう、遠い昔の事みたいに思える。

あんなに、人間を憎んでいたのに。


「私の中の両親は穏やかでいつも優しく笑っている。馬鹿みたいに。こちらが苛々するくらいに」


強く、なりたかった。

家族を守る事が出来るぐらいに。


でも、私は失った。


「ティファはね、私の両親が襲われる前から両親の料理店に足を運んでくれていたの。宮廷の仕事で近くを通る時は、必ずうちでご飯を食べてくれていた。私はその時、殆ど話したりはしなかったけど、歳が近いのに強いティファにとても憧れてた」


「そうだったんだな。襲われた時が初対面だった訳じゃないんだな」


そうよ。


あの日も霞む意識の中でティファが飛び込んで来て両親を殺した男を倒す所を、私は見ていることしか出来なかった。ティファが、息を引き取る両親から離れて私の所に来る所を。


体を動かす事も、声を出す事も出来ず。

ただ、ティファを見ていた。


「ティファは、不器用よね。私はティファを強い人だと勘違いしていた。あの人は、私とは違うのだと」


ティファはあの時、無表情でジッと私を見返した。

怒りも悲しみもそこからは感じ取れなかった。

そんなティファに、私はそれでも感謝した。

私達を救いに来てくれたティファに。


「ティファは、悲しみが深いと自分を守る為に心の蓋を閉じるのよ。無意識に、自分は何も感じていないのだと思い込む。そうやってずっと自分を守って来たんだと思う。私は何も知らずにティファに憧れて追いかけて行ったから、さぞティファを困らせたでしょうね。当時は散々後悔したけど、今はしてない」


「・・・ベロニカは強いよ。きっとずっと強かった。じゃなきゃティファと一緒に行動なんて出来ないだろ?」


そうね、私もそう思うわ。

もしかしたらティファは、私が居たから、あそこで生き残れたのかもしれない。そして私も。


「強い絆があるんだな?羨ましい」


「フィクスだってハイトと親友なんでしょ? もう帰りましょう。ハイトを助けないと」


フィクス? なんで黙っているの? さっきから何か変ね。


「俺とハイト。親友に見えるか?」


え? 仲は、良いんじゃないの?

ハイトがやる気ない感じだから分かり辛いけれど、フィクスには色々話しているように見えたけれど?


「そうだと、思ってたのだけれど?」


「確かに、ハイトと俺は子供の頃から家同士親交が深かったから付き合いも長い。でも、ちょっと違うんだ」


ん? ちょっと違う? 親友ではないって事?


「俺の家は、ハイトの一族ゼクトリアムを守護する使命を持っている。隠しているが遠いゼクトリアムの親戚同士なんだ」


「・・・・・え? それは、一体?」


「これは、ヴァンディル家の重大な秘密で、ゼクトリアムの隠された真実だ。俺達はこの事をずっと皇家に明かさなかった。何故なら、知られて核が、ハイトがレインハートの手に渡らない様にする為だ。知られない様に内部に潜んでずっと様子を伺っていた。レインハートが大樹に触れるとおかしくなるって聞いただろ?」


「え、ええ。それで、デズロ様がサウジスカルに連れて来られたのよね?」


「ああ。だけど核を持っているハイトに触れても誰もおかしくならなかった。ハイトも大樹の一部を体に秘めていたのにだ。それを俺はずっと黙って傍観していた」


フィクス? 一体何が言いたいの?


「俺さ、ハイトが死ねばいいのにって何度も思った事がある。そうすれば、ハイトも俺達も皆解放されるのかもしれないのにって」


「・・・・・・フィクス?」


「俺は、ハイトが生まれた瞬間から、必要ない人間になった。ゼクトリアムの為に教育されたのに、伯爵家の長男として皇家とゼクトリアムの橋渡しをする役目も必要無くなると言われた。ハイトは本来生まれる筈ではなかったんだ」


生まれる筈ない? それは、どういう事?


「ゼクトリアムから男児が産まれた記録は一度もなかった。それは、大樹の誓約でもあった。俺達ヴァンディル家や他の親戚はその血をつなぐ為にゼクトリアムに入る事になっている。逆に女性は大樹の核を保護する能力を持って生まれる。そうやってヴァンディルを絶やさぬ様、影から見守ってたんだ」


何それ・・・・じゃ、じゃあアイラもその使命が?

だから、アイラに任せて来たと?


「ハイトは核をその身に宿して男として生まれた。異例中の異例だ。つまり、俺は用無しになった訳だ。だから、俺は騎士になった。かっこ悪い理由だろ?」


「フィクス・・・・・」


「多分、俺達には何も出来ない。でも、ハイトはきっと大丈夫だと思うぞ?」


そんな顔しないでフィクス。

貴方は、要らない人間なんかじゃないわ。


「アイツは自分の欲しい物は必ず手に入れてきた。そのハイトがティファを置いて行くと思うか? ハイトは手段を選ばないからな。俺は、ハイトは大樹が望んだ姿なんじゃないかって思ってるんだ」


「大樹が望んだ?」


「大樹はずっと人間になって。人間を愛したかったんだ。そして、自分も愛されたかった。ハイトの願いが叶う事は、大樹の願いが叶うのと同意義なんじゃないか?多分ハイトはその為に生まれて来た。俺は、そんな気がしてる」


「・・・ハイトが自分で何とかするから、必要ないと?」


いえ・・・・この人。まさか・・・・。


「もしかして、フィクス全てを捨てる覚悟で私と来たの? それで、自分は駆けつける資格無いとか思ってる?」


「言っただろ? 俺が帰っても大して役に立たない」


そうね。

今から急いでサウジスカルに向かっても間に合わないかもしれない。何も出来ないかもしれないわね?

でも、だったらそんな顔しないで。


「出来る出来ないは関係ないわ。大事なのは、フィクスがどうしたいかよ。周りが貴方を必要としてないのなら、フィクスは自由だという事よ」


「ベロニカ?」


「帰りましょう、サウジスカルへ。私達の国へ。貴方はあの国に必要だわ。もし、本当に必要ないと言われても大丈夫よ」


貴方には沢山救われた。

そして他の仲間達やアイラにも。

私はもう、サウジスカルの人間よ。

それに役に立つか立たないかなんて関係ないわよ。


「私には貴方が必要だもの。ずっと、側に居てくれるんでしょう?なら、一緒にいて」


「・・・・・・・本当に?」


「ええ」


「・・・・・・・・それ、取り消さないからな」


「・・・・・・ッハ!」


え? フィクス? その笑顔・・・・ま、まさか!


「ありがとうベロニカ。これで安心してサウジスカルに戻れる。さ、帰ろうか?」


「フィ、フィクス・・・貴方。私を嵌めたわね?」


ちょっ! だ、抱き寄せないで!!

両親の墓の前で恥ずかしい!!


「嘘じゃない。でも、ベロニカの言葉を聞いて安心した。俺、ベロニカが側に居てくれるなら、どんな事でも耐えられそうだ」


やめて。

そんな蕩ける様な表情で私を見つめないで!

緊急時なのに私めげそうだわ!!


早く帰ってティファの様子も確認したいのに!

ちょっ!その顔を近づけないで! きゃーーー!!


「俺の家の秘密も話しちゃったからな? もう、逃げられないぞ? ベロニカ」


黒い!この人真っ黒だわ!!

こんな事ならやっぱりデズロ様達と一緒にサッサとサウジスカルに向かうんだった! 悔しい!


・・・・でも。きっと真実も含まれていると分かってるから、今回だけは目を閉じるけど・・・次はないわよ。


「好きだよ。ベロニカ」


本当に・・・次なんてないんだからね!!

フィクスは、腹黒いです。

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