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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第1章カスバール宮廷
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フィクスは見なかった事にする

「大したもてなしは出来ないが今夜はあなた方が滞在される最後の夜だ。どうか心ゆくまで楽しんで欲しい」


初めてカスバールに来たけど、想像よりはまともな人間ばかりで安心した。


悪い話ばかり耳に入って来たからな。

かなり警戒していたけれど、何事も無く無事帰れそうで安心した。


「ベロニカ俺と踊ってくれ」


「アズニール。私、ダンス上手くないわよ? 足踏むかもしれないわ」


「あはは! 構わない。お前達に足蹴にされるのは慣れているからな」


安心・・・・出来るか!!

社交場だから我慢しているが、さっきからベロニカ大人気だな? そして、俺を見事に避けているな? ちょっとちょっと?


まぁいざとなれば婚約者の立場を振りかざして奪い返せばいいけどな? 偽だけどな! ベロニカ断固拒否するしな!


「お帰りベロニカ。元気だな」


「・・・驚く程に。今なら空も飛べそうよ」


ベロニカでもそんな冗談言うんだな?

あ、気まずいからか? 俺かなり意識されてるなコレ。


「ほら。飲み物」


「あ、ありがとう」


さり気なくこちらに引き寄せたのはさっきまでニヤニヤしながら踊ってたあの騎士が名残惜しそうにベロニカを見てるからとか関係ない。()()俺の婚約者だからね? 困った顔するんじゃありません。


「・・・・ベロニカのドレス姿が見れるなんて役得だったなぁ。付いて来て良かった」


「・・・っ!また、そうやって揶揄って」


揶揄ってないけど? ここに来て俺がベロニカを揶揄った場面なんてないぞ? 色々必死だからな。


「最後までイチャイチャなの? フィクスさんベロニカが恥ずかしがってるから程々にね?」


「あ、メリル可愛いね? ドレスとても似合ってる。マリオーネさんも」


「あら! 美青年に褒められたわ! うふふ!」


メリルのご両親には本当にお世話になった。

この人達がティファを探しにサンチコアまで来てくれなかったら、ベロニカは助からなかったかも知れない。


本当に、ティファには感謝しかないな。

彼女は大変だったみたいだけど。


「そういえば、デズロとエルハドはどうしたんだ?」


「あの二人? そういえば見てないね? 何処行ったのかな?まさか抜け出して帰った?」


あり得るが流石にそれはないだろ。

このパーティーが終わったら俺達に大事な話があると言っていたし。何だろう、また厄介ごとか?


俺この後忙しいんだが? サウジスカルに帰る前にベロニカに俺を受け入れてもらわないといけないからな。


あちらに帰ったらベロニカまた前みたいに頑なになると思う。

この子ティファの前だとカッコつけたがる所あるから。


「皆聞いてくれ。この日の為に客人に我が国の伝統舞踊を披露しようと考えていたのだが、今回その舞をサウジスカルから参られたエルハド様とデズロ様が舞って下さると申し出があった。私はこの有難い申し出を受け入れようと思う。我等の国の舞をサウジスカルの方々が舞う。そんな素晴らしい申し出を無下には出来ない。本来なら男女で舞う舞だが、長い間その舞は披露される事がなく、今は舞える者も少ない。それ故にどちらも舞えるデズロ様が今回女性パートを踊って下さる。皆心得てくれ」


なんだろうなぁ。

この国ってサウジスカルとは違う意味でデズロ様の事、特別視しているというか、なんか、気持ち悪いんだよな。

デズロ様に向ける視線が。


ギィィィィィイ。


「・・・・・・・・わぁ」


「あらあら〜」


「二人共・・・綺麗だねぇ」


あれは、特別な衣装だな。


流石伝統的な舞だけあって衣装にも力が入ってる。

そして・・・デズロ様、アンタ随分と綺麗にされちゃってますね? ちょっとビックリだよ。これ、ティファ見たかったろうなぁ。


あ、エルハド様、飾りの剣を抜いたな。


ザワッ


「・・・・・っ」


これは、凄いぞ。


音楽に合わせて剣を振るうエルハド様とそれを受けたり避けながら舞うデズロ様の動きが流れる様だ。


相変わらず息ピッタリだな。この二人。


「なんて・・・・美しい」


これ、かなりの出来なんじゃないか?

それに、あの二人なのに物凄く、その。艶っぽい。

俺は目のやり場に困っている。


あと、それを見て皆、涙を流しているんだよな。


もしかして、この踊りには何か、特別な意味があるのだろうか?


「うう・・・・デズロ様・・・」


この国にとってサウジスカルと同じ様に、いや、それ以上にデズロ様は必要とされていたんだな。


彼方では皆ふざけてそんな様子を見せないけれど、俺達は忘れてはいけない。その象徴を俺達は奪い取ったんだ。


サウジスカルの平穏はこの方のお陰で成り立っている事を決して忘れてはいけないんだな。


「本当に、凄い方なのね。デズロ様って」


「・・・・ああ。うっかり忘れそうになるけどな」


カスバールに申し訳ないという気持ちも無いわけじゃない。だけど、俺が小さい頃からデズロ様はサウジスカルにいた。居るのが、当たり前だった。


細かい事情は分からない。

だけど、デズロ様があの場所を望む以上こちらに返すわけにはいかない。


だから、悪いけど俺はコレを見なかった事にする。


「・・・・デズロ様・・・・いかないで・・・」


小さく吐き出されたその声を、俺は聞かなかった事にする。あの方は、もうサウジスカルの人間だ。


「辛気くさ。折角綺麗な舞なんだから楽しめばいいのに。本当にやんなっちゃう」


「メリル。コレが終わったら俺と踊らない?」


「げぇ! 冗談抜きに足踏みまくるけど、いい?」


構わないよ。

それにメリルに足を踏まれても何て事ないよ。

俺、散々ベロニカのダンスの練習で足踏まれたからな?



もうすぐ二人の舞が終わる。


メリル達と過ごす時間も。


きっとデズロ様の話碌な事じゃないだろうから、暫くはこちらにも来れないだろう。いっぱい思い出を作ってティファに聞かせてあげないとな?


俺には何も出来ないけど願ってるよ。


メリル。君達が手に入れたい未来を手に入れる事が出来るように。


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