閑話テゼールとマリオーネ
(マリオーネ) メリルの母親
(テゼール) メリルの父親
(ティファ) メリルの姉 サウジスカルに捕らえられ行方不明になっていたのだが?
「お前達がティファの身内だと?」
「はい。娘が行方不明だと伺い、詳細を伺いに参りました」
その日。私達は今まで決して近づく事をしなかった宮廷の門まで足を踏み入れた。
娘のティファがサウジスカルに捕らえられそれを皇太子のナシェスが取り返す為戦争を始めたと情報が入って来たからだ。私には宮廷の中に情報を提供してくれるツテがある。昔、私もここで働いていたからだ。
私達はティファが家を出て、ここの兵士になった時からずっとあの子を見守って来た。
会う事が出来なくなっても、もしもの時あの子を救出出来るよう、何年もかけて計画を立ていつ実行しようかと考えている矢先ティファはサウジスカルに捕らえられ生死も分からない状態になった。
「はっ! あの女の家族ねぇ? お前達の娘は裏切り者だ。戦の途中脱走してあちらの兵士に捕らえられた。アイツの所持していた物は全て処分した。お前達に渡す物も情報もない。さっさとここから去れ」
「何を・・・・」
「・・・・そうですか。分かりました」
「お母さん?」
相変わらずクソの掃き溜めのような場所だ。
これでは話にもなりはしない。
今の私達では宮廷の中に入る事は出来ないし、陛下にお会いする事もかなわないだろう。
そもそも、陛下は気付いておられないようだ。
ティファはあんなにテリアーゼに似ているのに。
あの方は、本当に目が曇ってしまっておられる。
「メリル・・・・私達はサウジスカルにティファを探しに行く。あの子はきっと生きている。皇太子殿下はティファをこちらへ連れ戻すつもりのようだから、その前に私達がティファを連れ戻さなければ」
「・・・・素直に言う事を聞いて帰って来るかな? お姉ちゃん」
そうねぇ? 中身はデズロにそっくりだから、私達の思う通りにはいかないかもね? でも行かないと。
「そんな事は再会したら考えればいい。メリルはどうする? 」
この子はきっと行かないだろう。
あの集落には面倒を見なければならない者達が少なからず残っている、メリルは置き去りには出来ない。
「私は面倒だからいいや。薬草を管理しなきゃいけないし。お父さんとお母さんで行って。危険そうなら場所を移して暮らすから、もしあの場所に居なかったら、迎えに来てね。二人に分かるように行き先を隠しておくから」
ゴメンねメリル。
本当は貴女も連れて行きたい。
でも、貴女はあの人達に必要なの。
貴女なら一人でもなんとか生き残れる。
私達の自慢の娘。
今はまだ、真実は言わないわ。
ティファを連れて帰って来たらちゃんと話す。
ティファの事も。私達の事も。
「メリル。一人だからといって食事を抜いたり、何日も寝ないで調合に明け暮れたりしては駄目だぞ?何かあったら魔法で文を飛ばせ、やり方は分かっているな?伝言鳥は飛ばせば勝手に私に辿りつく。何かあればすぐ駆けつける」
「大丈夫だよお父さん。私もう子供じゃないし、結構強い。簡単にはやられない」
「何を言っているんだ。お前は女の子なんだから危険な目に合いそうならすぐ逃げなさい。決して戦っては駄目だぞ!」
いやいや、テゼール。
その子ティファ程化け物じみた強さではないけど相当強いわよ? 今すぐ魔術師団引き連れるぐらいの強さ、持ってるから。全く、相変わらず心配症ねぇ? 娘が可愛いのは分かるけれど、小うるさい母親みたいなことを言って・・・。
母親、私なんだけれど?
「本当に、村に残るのか?」
「そう言ってるでしょ? 私よりもお姉ちゃんの方が心配よ・・・。必ず見つけて来てね?」
「ええ、メリル。私達が帰るまで、無事に生き延びなさい」
「大丈夫だよ。私、図太いから」
私マリオーネと夫のテゼールは、娘のティファを探す為サウジスカルに足を踏み入れた。
両国の戦争の影響で入国するのに半年、ティファを見つけるのに一年以上かかった。そして、やっと。やっと再会出来た娘のティファは・・・・・。
「・・・人違いではないですか?私、貴方の事存じませんが?」
見事に私達を拒絶した。
「また、そんなふざけた事を抜かして!!私達がどれだけ心配したと思ってるんだ!!」
「ですから。貴方の事、私知りません。勘違いです」
「お前!!」
「落ち着いて下さい。私はハイト・ゼクトリアム。この国の騎士です」
「・・はっ!失礼。私はテゼール。カスバール国民で、薬師を生業にしている者だ。こちらは妻のマリオーネ」
そうよ。
ショックなのは分かるけどちょっと落ち着いて。
ティファが未だかつてないほど面白い状況に陥っている。
あの子があんな風に人に引っ付くなんて、デガルドさん以来じゃないかしら?
「実は、ずっとその子、ティファを探していたのです。昨年行方不明になった、私の娘を」
「「・・・・・え?」」
「では、デズロ様のご兄弟?」
やはり。
ティファはもしかしてデズロに辿り着いて保護されているのかもしれないわね。それは好都合だわ。
それならば、このままここにいた方が安全だもの。
「やはり、あなた方はデズロの事を知っているのですね?アイツは宮廷に?」
「それが、話すと長くなるのですが、今カスバールにいる筈なのです。ティファは現在デズロ様の養女としてこの国の国民として暮らしています」
それならそうと連絡の一つでも寄越しなさいよね。
デズロめ・・・・あとでしばき倒す。
「ティファ?いい加減、私達にちゃんと顔を見せて?ずっと探していたのよ?」
「誰もそんな事頼んでません。私あの家は出ましたから」
・・・・・ティファ? 何故そんなに怯えているのかしら?
やはり、出て行く前に何かあったのだわ。
でも、一体この子に何があったのかしら?
「ティファ!その方に失礼だろう?いい加減離れなさい!」
「いえ、お構いなく。いつもの事ですので。彼女はかなり、混乱しています。もう少し落ち着かせてから話を・・・」
「いいえ!そうやって甘やかすから調子に乗るのです!ティファ!来なさっ・・」
「彼女は僕の婚約者です。乱暴な真似はやめて頂きたい」
婚約者?
え? ティファに? あの、全く女の子のするような遊びに興味が無くて男の子をしばき倒してたティファが?
恋愛なんて今まで一度だってした事がない、あの子が?
「ですから、彼女を勝手に僕の手の届かない所に連れて行かれては困ります。落ち着いて話が出来ないのであれば、お引き取りを」
「な!婚約者だと?君が?」
これは、テゼールが荒れそうだわ。
ちょっと予想外な展開になって来たわね? どうしよう。
「あーーーーー。えっと、取り敢えずお二人共、長旅でお疲れでしょう?今日の宿屋はお決まりですか?」
「ええ。暫くこの街でティファを探すつもりでしたので」
「では、一度我々の暮らしている宿舎へお越し下さい。ティファも、夕飯の準備あるだろ?今日はこの人達の分も頼む」
「・・・・・・いやです」
ティファ? 本当にどうしたの? なんで、さっきからそんな目で私達を見るの?
まるで、本当に心を閉ざされているような・・・。
「その人達、私の料理なんて好きじゃないんですから」
「・・・・・・ティファ」
私達、本当に愚かな親ね。
今日ティファに再会するまで、まさかティファがあの家を出た原因が私達だったなんて少しも考えていなかった。
私達が、どれだけこの子に甘えきって暮らしていたか、全く自覚していなかった。
ティファは全て分かっていたのね。
自分が、私達の本当の娘ではない事も。
ティファ自身ではなく、あの子の面影に私達が思いを馳せていた事も。
デガルドさんは、そんな私達にティファを預けられないと思ったのだわ。だから、ティファの面倒を見てくれた。
私達達が与える事が出来なかった、ティファの求める愛情を彼はティファに与えてくれた。
だから、ティファはデガルドさんに懐いたのだわ。
そして、失って気付いたのね。
私達の下には自分の求めるものは、もうないのだと。
カスバールを出立する前の何か言いたげなメリルの顔を今になって思い出す。あの子は、知っていたのかしら?
ああ・・・・・何処から間違えたんだろう。
テリアーゼ・・・私、貴女に申し訳が立たないわ。




