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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第1章カスバール宮廷
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チェシャは意外と扱いやすい

「あ、ああああ!! ここはどこだ!! ここから出せ!」


「おはよ〜チェシャ。よく眠れた?」


チェシャ? 何を言っている?

私はそんな名などではない!

私、わたし、は?


「・・・・ 私は、何を?」


「診療中に意識が落ちたんだよ? 私が誰だか覚えてる?」


そうなのか? 私はどこか悪いのだったか?

いや、そうじゃない・・・私はこの女に無理矢理連れて来られたんだった。


「貴様、私に何をした? なんだか、気持ち悪い・・」


「ふむ? 気持ち悪いだけ?」


おい。隣に座るな。馴れ馴れしいぞ平民風情が。私を誰だと思っているんだ? 私は・・・う・・ぇ。


「・・・きもち・・わる・・うぇええ」


「おっと! 危なかった。はい、ここに出してね。ウンウン思ったより不安定じゃないね? 形成された人格も壊れてない。これは嬉しい誤算かも」


「・・・な、にを。うぇ」


何故こんなに気分が悪いのだ。

さっきから自分の名を口にしようと思考するだけで気持ちが悪くなる。なんなんだコレは。


「吐けるだけ吐いちゃいなよ。動ける様になったら上に行こう。チェシャの部屋に案内する」


「私の、部屋、だと?」


「ここは宮廷内に立つ古い屋敷よ。チェシャが軟禁されていた場所みたいな綺麗な部屋じゃない。貴方は私の管理下に入った。もう、自分を皇族なんて思わない方がいいと思う」


殺される私をお前が助けたからとでも言いたいのか?

誰がそんな事を頼んだ! 誰がお前などの言う事を聞くか!


「少しはスッキリした?」


「・・・・・口の中が・・・」


「はい。コレで口をゆすいで、そしたらこっちを飲んで。スッキリするよ?」


お、気が効くではないか。うむ。スッキリした。それになんだこの飲み物。初めて飲んだがとても私の口に合うぞ。


「チェシャ聞いて。チェシャはね、赤ちゃんの時ちょっと体に良くない事をされて、体と心が少しおかしくなってたの。その悪い物を貴方の中から取り出したんだけど、ずっと体にあった物を取り出してしまったから、たまに副作用みたいな事が起こると思う。だから、それを緩和させる為に貴方の事は"チェシャ"と呼ぶ」


そ、そうなのか?

なんだこの女。なんだか最初と大分印象が変わったな?

妙に・・・優しい。


「前の名で呼ばれても貴方はチェシャよ。わかった?」


「・・・・・わかった」


さっきから、上手く言葉が出てこない? 何故だ?

思考はちゃんと出来ている筈なのだ。

どうして私はこの女の言う事を・・・。


[チェシャ! 久しぶりだね? やっと私達に気付いてくれた]


「・・・・・・・あ、れ?」


[あはは! 目の色が元に戻ったよ? 懐かしいねぇ? チェシャ!!」


今、私の目の前で小指サイズの生き物が喋りながら飛んでいる。なんだこれは? 一体何処から現れた? いや、でも、なんか見た事があるような?


「・・・何処かで会ったか?」


[チェシャが子供の時に会ってるよ? チェシャって名付けたのも私達。昔は呼ぶたび笑ってくれたのに、もうずっと気付いてくれなかったね]


記憶はないが、とても懐かしく感じられる。

昔も、こんな風に囲まれていたような・・・・。


「この子達の事はこの屋敷の人間以外には教えては駄目よ? そうしないとチェシャが危険な目に会うからね?」


「・・・お前は、何故私を助けた?」


出会って間もない、主人でもない私を助けるメリットがこの女にあるとは思えない。きっと何か企んでいるに違いない。


「なんでって、死にたくなかったでしょ?」


「いや、そうではなく・・・・・」


「私が入って行った時、私に助けを求めてたでしょ? あとこの子達にも後でお礼を言っておきなよ。貴方を助けようと必死に私に訴えて来た」


「そんな事、私は頼んでいない」


そうだ。皆私がいなくなる事を望んでいたのに、余計な事をしたものだ。皆望んでいたのに。


「チェシャ。大丈夫よ」


なんでなんだ?


私は今まで自分の事を肯定され続けて来た。

父にも部下にも、周りの者達全てに。

母と弟以外には。


私は、それを疑わなかった。


それなのに、今は皆、私が間違っていたと言う。

そう言って私を責め立てる。


だが、私には理解出来ない。


私の何がいけなかったのだろう?


「理解が出来ないのは病気だったから。これから少しずつ理解出来るようになる。貴方は子供なの。小さな子供。わからない事は私が教えてあげる。チェシャ、怯えなくていい」


どうして。

こんな女に抱きしめられて慰められるなど。


こんな風に、涙を流すなど。


「貴方が安心できるまで私が側にいる。だから怯えなくていい。私が貴方を怖いものから、守ってあげる」


そんな事は信じられない。

皆そう言って結局私から離れて行った。


もう、その者達の名前すら思い出せない。


「わからない。どうして私は・・・」


「チェシャ。一緒にいよう。私が貴方を治してあげる。何故なら私は天才だから!」


この女の言っていることもよく分からないが、そうか、私は病気だったのだな? ・・・成る程?


「うむ! 大いに励むがいい」


「流石チェシャ! 驚異的な早さで精神を立て直して来たわね! 興味深い! あ、メモメモ〜」


・・・・・お前。私の事ペットとか言ってたが、本気で実験体にするつもりではあるまいな? 一抹の不安を覚えたぞ?

この女、本当に大丈夫なのか?


「お前、本当に大丈夫なのか?」


「お前じゃない。メ・リ・ル!天才薬師のメリルよ? チェシャは超優秀だから、私の名前くらい覚えられるでしょ?」


うむ! よくわかっているではないか! 私は優秀だ!


「当たり前だ! 誰にものを言っている? メリル、私に覚えられないものはない!」


今、どこからか笑い声が聞こえた気がするが? いや、気のせいだろう。しょうがない。この誰よりも優秀な私が特別にお前の名を覚えてやろうではないか。


不服だが、しばらくお前から離れることが出来ないようだからな?


「素晴らしい! チェシャ、宜しくね?」


なんだこの女、最初見た時は、魔力が多い事しか取り柄がない、もやし女かと思ったが。笑えばそれなりに見れる顔ではないか。気に入ったぞ!

しょうがないからメリルに従う振りでもしてやろう。


フフン!

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