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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第1章カスバール宮廷
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ラフィネラはリディを止めたい

「・・・・・今、なんと言った?」


「ナシェス様が・・・こちらにお越しになっているようです。離宮を出て真っ直ぐアトレイア様の下へ向かったと」


そんな馬鹿な。

ナシェスはあの離宮から出てはいけない事になっている。

陛下が許可していないのに勝手にこちらへ赴くなど、あってはならないのに。


「・・・・・・じ、実は今、アトレイア様の下にはメリル様がご来訪中でして・・・如何致しますか?」


なんだって! あの阿呆が?

それは益々ややこしいぞ! あの女何かやらかしそうだ!


ガタンッ


「今直ぐ私も父の下に向かう。ラフィネラ、私の剣を」


「は!」


まずい事になった。


下手をすると、リディ様がナシェス様を殺してしまわれるやも。そうなれば、ナシェス擁護側の人間を皆敵に回してしまいかねない。ただでさえ味方が少ないこの宮廷で・・・・・。なんとかして、止めなければ。


「・・・何故、勝手な行動をされたのでしょう?」


「決まっている。私を舐めきっているんだ。私に自分を処罰できる訳ないと・・・・」


隠しているが、かなりお怒りだな。

この方も普段は沈着冷静なのに、アトレイア様とナシェスの事になると途端に取り乱す。まぁ、散々振り回されてきたから、分からなくはないが・・・・ハッ!あれは!


「テットさん!!」


「お! ラフィネラ、陛下! 丁度良かったッス! 今あり得ない事が起こったッス! ナシェス様来てますよ?」


「もう会ったのか? メリルは無事か?」


「ん? 私がなんだって?」


なんだお前いたのか。

って、テットさんが居るんだから当たり前か。チッ!


相変わらず態度がでかいなコイツ。


「メリル! あの男に何もされなかったか? 怪我はしなかったか?」


「は? な、何急に? 大丈夫よ、何? どうしたのよいきなり」


「ナシェスと会ったのだろう? アイツは危険だから近づくな。お前に害を与えるかもしれない」


確かに。

俺は当時下っ端の兵士だったから詳しい内容は分からないが、ナシェス様が女騎士に心酔していると宮廷内で噂されてたからな。しかもナシェス様のなさる事全てがとても好意を向ける相手にするような行動ではなかったしな?


あれは、ただの嫌がらせだった。


「大袈裟な。別に何もされてないけど? それにしても、あの人リディと兄弟とは思えないよね〜」


お前! それは口に出すな!

リディ様が一番気にしている事だぞ多分!


「・・・・メリル様、今はその話は・・」


「そんなに似ていないか?」


「ぜんっぜん似てない! 最早兄弟とは思えないぐらい血の繋がりを感じない。ナシェスって完全にお母さん似なのかなぁ? どうなの?」


「そうだ。母と生き写しだ。私は全く母に、似ていないからな」


その所為でリディ様は今までアトレイア様から無視され続けて来た。好き勝手に行動し戦争まで引き起こしたナシェス様をそのままこの国の皇帝にしようとしたぐらいだからな。そんな事されたら今頃俺達はまともに暮らしていなかったかもしれない。


「へぇ? お母さん綺麗な人だったんだねぇ? でも、リディはアトレイア様に似て良かったね?」


「・・・は? 私が、父に似てる? 何処が?」


「何処が? 目元も口元もあと、耳の形とか? 物腰が柔らかい所も親子なんだって思うよ?それに比べてナシェスはアトレイア様に全く似てないんだもん! 最初何処の御令息かとマジマジ見ちゃった。そして考えられないくらい不遜だよね?私、リディの事、見直しちゃったよ」


「見直した?」


「あんな人が側にいたのに、よくまともに育ったよね? リディ凄く真っ当だもんね? いや、凄いよリディ。よくぞまともに育ってくれた! ありがとう!」


お前は何様目線でリディ様にそんな事言ってるんだ?

お前はリディ様の母親か何かなのか? 馴れ馴れしくリディ様の肩をポンポンするんじゃない!

リディ様若干呆然としておられるぞ!!


「・・・・お前は、ナシェスに会ってあの人をどう思った?」


「どう思った? え? んーーー?」


こんな女にそんな事聞いても望む答えは返って来ないと思います。テットさんも興味深々な顔だし。気に入らない。


「10歳の子供」


「「「え?」」」


「身体の成長に心が全く追いついてない印象を受けた。もしかしてあの人病気なんじゃない? 顔色も悪かった。リディは至って健全なのに・・・もしかしてアンタ達同じ場所で育ってないのでは?」


・・・・コイツ、少し会って話した程度で、よく気付いたな? 確かにお二人は途中から引き離されて育っている。


「よく勘付いたな? あの人は周りから散々甘やかされて育って来た。望むものは全て与えられ間違いを犯しても肯定され続けた。あの容姿で、剣の腕も私より強く学力も優れていた。あれで人格者だったなら、完璧な王だったんだがな」


「そう? 私はそうは思わないけど? それでも私はリディが皇様の方がいい」


「なんでッスか? 」


「完璧な人間は、完璧ではない者を受け入れることは出来ない。わからないから。痛みを知らない人間に人の痛みは理解できない。苦しみを分かち合えないから。皇様ってさ、優れてるからなるものなの?私は違うと思う」


「・・・・・メリル。お前」


「リディは私達と一緒に苦しみを背負って生きてくれる。例えばリディが皇様じゃなかったとしても、リディならきっとこの国の為に何かしようとしてくれたと思う。私は、肖像画に描かれた夢物語みたいな皇子様に夢を抱いたりしないの。だって、そんなの眺めてたってお腹は膨れないもの」


・・・・メリル様。

普段はふざけた態度の癖に実は色々考えているのか。


もしや、リディ様とナシェス様の事を実は知っていたのだろうか?


「アンタさっき酷い顔だったわよ。詳しい事はわからないけど、自分の為にならない事はしない方がいい。時間の無駄だから。私今からデズロさんに会いに行くんだけど、一緒に行かない?」


「デズロ様に? アースポントの事か?」


タイミングがかち合ったのは、こちらではなくメリル様側だったらしい。絶妙なタイミングだ。


「私のお姉ちゃん、実は私の従姉妹だったらしいわ。その事実確認に行く。もしかしてリディも聞いてた?」


「・・・それは、やはり事実なのか? 」


「わからない。でも、多分そうだと思う。デズロさんに初めて会った時から、お姉ちゃんに凄く似てるって思ってた。見た目じゃなくて、性格が」


これは、リディ様を止められて良かったのか、それともそれ以上の波乱が起きる前触れなのか。


テットさん! どうします?


「デズロ様に似てるお姉さんとか、じっくりお話してみたいッスね? ティファさん超美人ですもんね?」


「・・・そうだな。色々な意味で、凄いぞ彼女は。メリルに匹敵する衝撃を受けるやもな?」


「あ、じゃあいいッス!」


「おいコラ! それはどういうこった! ちょっと詳しく説明しなさいよ! ッスッスコラ!!」


・・・まぁいいか。

あのままナシェス様の所に突撃されるより数倍マシだ。

それに・・久々のテットさんと一緒にお仕事が出来る!

やったーーーーー!!


「ん? なんッスか? ラフィネラ近いッス」


「お気に為さらず。背後は私が守りますので、テットさんは先導をお願いします」


「・・・えー? なんか、不安だなぁ」


大丈夫です! テットさんの背後は俺が守りますので!

気にせずそのまま進んで下さい! ははは!至福!

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