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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第1章カスバール宮廷
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アトレイアは再会する

「アトレイア! ひっさしぶりー!! 元気そうだねぇ!」


「・・・・デズロも、相変わらずだな。エルハド殿も、息災か?」


「ああ。私は変わらずだ」


こちらに来ていると聞かされた時は信じられなかったのだがな。本当に、来ているとは。


「掛けられよ。お茶でも飲んでいってくれ」


「では、お言葉に甘えさせてもらおう」


「僕ミルクティがいい!! 甘いやつ!」


懐かしいなぁ。本当に懐かしい・・・。

あの頃はこんな和やかな空気ではなかったがな。


「しかし、相変わらず思い切った行動に出る。エルハド殿。貴方自らカスバールに赴くとは・・・まぁ、前も今も皇帝という立場ではないが・・・デズロに振り回されておりますな」


「お互い様だろう。それも全て引き受けての行動だからな。仕方がない」


そうですな。

皮肉なものだ。

あんなに連れ戻そうとして失敗を繰り返し、諦めた途端にひょっこり現れる。お前はいつもそうだった。


「それで? 今回はどうしたのだ? 何か目的があってこちらに来たのであろう?」


「そうなんだけどさぁ。流石にメリルまで連れて行く訳には行かないから。メリルに薬を作ってもらってる所なんだ。実はティファとメリル絡みでサウジスカル側にちょっとしたトラブルが発生してて、ベロニカって覚えてる?」


ベロニカ? ああ。確かいつもティファの隣に控えていた女騎士だな? 彼女も彼方にいるのだな?


「あの子がメリルの作った薬を飲んで今、副作用で死にそうなんだ。それを治したい」


「・・・・たかだか騎士一人の為に動いたのか?こんな危険を犯して?」


「たかだかじゃないよ? あの子はもう、サウジスカルの国民だ。エルハドや僕が国民の命を助けたらおかしいの?」


それはそうだが、そういう意味ではなく。


「あの子はずっとティファの側でティファを支えてくれた子だ。ティファにとって彼女は既に欠けてはいけない一部になってる。僕はね? ティファの側にいられなかった分あの子を幸せにしようって決めているんだ」


「・・・・そうか。彼女もまた、ここから解放されたのだな。最早私には何も出来はしないが、上手くいくとよいな」


「うん! ありがと! あー美味しい〜」


歳をとっても本当にお前は変わらない。

・・・・幸せそうで良かった。


「ナシェスはどうしている?」


「・・・・あの子は今、離宮に隔離されている。もう暫くは顔を合わせていない」


私はあの子を見ると、どうも甘やかしてしまうらしいからな。会わない方がいい。

私とナシェスがいるとリディに要らぬ心労をかけてしまうからな。


「・・・ねぇ、アトレイアはさぁ? なんでリディを見てあげなかったの? 明らかにあの子の方が国を統治する才能も器もあったでしょ?」


「・・・・あの子が妻にも私にも似ていなかったからだ」


「・・・・・それは、どういう?」


「私は、リディが自分の子ではないと疑ってしまったのだ。あの時は精神的にも身体的にも追い詰められていた。妻も先立ち、一人残されて、私は不安定になった」


私は彼女を深く愛していたが、彼女は私など愛してはいなかった。彼女は私と過ごすうちに私に失望していった。


「ナシェスが私に笑いかける、それだけが、私の生きがいだった・・・あの子は、彼女ではないのに」


「・・・・・そう。君は最後まで分からなかったんだね?」


分からない? 一体何を?


「彼女の愛が。彼女はちゃんと君を見ていた。君が、ベルシャナを殺す決意をし部屋を飛び出したあの日、彼女は僕の所へ駆け込んで来た。君を、助けてくれと」


「・・・・・・・・そ、んな、馬鹿な。ベルシャナを殺せと私に言ったのは、彼女なのに」


「君は先にベルシャナの部屋に行ったから、謁見室に向かった僕の方が先にアイツを見つけた。そして、僕はテリアーゼの亡骸を発見してしまったんだ。本当に、運命は残酷だよね」


デズロ・・・そして、お前はエルハドに救われたのだな?


私は見ていた。

父を、あの男を殺したのは、お前ではない。


「私を恨んでいるか?」


私は、何も出来なかった。

エルハドがあの男を殺し、暴走するデズロに真っ直ぐ駆けていく、その姿を。


ただ、見ていた。


「恨んだことなど、一度もない。ただ、それでも、諦めきれなかったのだ。私はあの男から解放されてなお、デズロに寄りかかっていたのだな。・・・すまない」


お前は昔と変わらない笑顔で私に微笑む。

それを見て私はやっと気がついた。


「お前を救うのが、私でなかった。それだけが、心残りだ。だが、もういい。デズロ・・・お前が幸せならそれで良い」


「うん。僕、毎日とっても楽しいよ? アトレイアも楽しく過ごしなよ! せっかく生き残ったなら残りの人生楽しまなくちゃね?」


お前が言うと説得力がある。

サウジスカルの人間には分かるまい。

あの奈落の底からデズロがどれだけの人間を救いだしたか。


デズロがどれ程慈悲深く、どれ程人間を愛しているか。

だから今度は、お前が愛される番だろう。


そして、誰よりも幸せになれ。デズロ・マスカーシャ。

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