騎士隊長は目撃する
「魔物の群れが宮廷に押し寄せているだと?」
「は!メリル様の使いが魔物の群れがこちらに向かっていると」
あの我儘放題だと噂の胡散臭い薬師か?
どれだけ信用していいものか・・・だが、彼女がアースポントに魔力を貯められる事は確かなのだから仕方ない。
「陛下をお護りしろ! 残りの者は私と外へ! 魔術師たちには?」
「既にブリッツォが報告しております。我々も外へ」
正直女の戯言だと思い込んでいた俺は、空の向こう側に広がる魔物の軍勢に呆然とした。
なんだあの数は!
あんなものが一気に攻めてきたら我々でも防ぎ切れないぞ?
ヒュンヒュンヒュンヒュン!ウォン!
「え?こ、これは?魔法防壁?こんな広範囲な魔法防壁を一体誰が?」
魔術師達が張ったのか?これは助かる。
これで暫くは時間が稼げるぞ。
「直ぐに陛下を安全な場所へ!我々は防壁から出て魔物が中に入らぬよう討伐する!」
「アズニィール!!」
「陛下! ここは危険です! お下がりください」
「奴等の狙いは恐らくアースポントに溜まっている魔力だ。決してアースポントに近づけるな。あれが無くなれば今度こそカスバールは滅びる」
ミシミシミシミシッ
しまった! もうこんな所まで魔物が!
奴等の中には体を魔力で覆っているモノもいる。
そいつらには魔法防壁は壊すことが出来る。
そもそも、魔物の数が多過ぎる!
バリンッ!
「グキャァアアアアア!」
「陛下宮廷の中へ!! お下がりください!」
サッサと中に入れよ! 戦い難い!
いくら剣を扱えても、貴方対して強くないだろうが!
ザシュ!バキィ!
「陛下お急ぎ下さい!」
「私はアースポントへ向かうぞ」
だぁああああからぁ! 危ないから引っ込んでろ!
「クアーーーーーー!!」
「陛下! 危ない!!」
「!?」
キィィィン!
あっぶねぇええ!! 爪を受け止める反射神経はあったか。
でもこっちが今、手が離せないぞ! くそっ!
「・・・っく!なんて、力だ」
こちらの兵の数が少なすぎる・・・このままでは・・。
「はーい!ちょっと通るッスよー?」
ビュン!ザシュッ!バシッ!ガンッ!ドシャァアア!
「テット!!」
助かった・・・。
お前が陛下の側に居てくれれば、こんな心配しなくて済むんだぞ・・・あの女の、メリルの所為だ!!
「あちゃー見事に破られちゃいましたね?でも破られたのはここだけッスか?」
「恐らく集中的にここだけを攻撃されたのですわ。メリル様が作った魔法防壁ですから、そんな簡単に破られたりはしないでしょう」
「は? メリル様がこれを?どうやって?」
「ちょっとー?悠長に話してていいの?どんどん来てるけど?」
おいおい! なんで噂の魔術師様がこんな所に?
陛下口開けたまま固まってるぞ。
「メリル!! 何故こんな所に! 安全な所に今すぐ避難しろ!!」
「それはこっちの台詞なんだけど? 先頭きって魔物の前に現れるなんて自殺行為じゃないの? 自殺志願者なの?」
「ちょっ!お二人共! 今は言い争ってる場合じゃないッス!怪我人も出てますから! 下がって下さい!正直邪魔ッス!」
その通り! ここは俺達に任せて逃げてくれ!
正直切羽詰まってる。
「イヤイヤイヤ。どう考えてもこの数、貴方達だけじゃどうにもならないでしょ?あ!ブリッツォ!」
「はぁ! メリルなんでこんな所にいるのよ! サッサと中に入りなさい!!」
だぁああああからぁ!俺達魔物を倒しながらお前ら護るの大変なんだぞ!! サッサとこの場からいなくなれ!!
「アンタ雷魔法使えたよね?ちょっと使い方おしえて」
「は?アイタ!!」
ウォンッ!
「メリル? 何をするつもりだ?」
「私、本当は医療行為以外に魔力を使いたくないの。だから、覚えなかったんだけどね。緊急事態だからしょうがない」
な、んだ?地面からビリビリと何か這い上がってくるような・・・鳥肌が一斉に立つような感覚が・・・。
「シャミ。遠くにいる魔物にも直撃させたい。眼を貸してくれない?」
「俺、視ればいい?」
「そう。私をシャミの背に乗せて?」
「うん! 出来る! 」
おいおい!待て! 勝手に空に飛んで行くな! 危ないだろうが!
「メリル止めろ!! お前は何もしなくていい!」
あんなヒョロヒョロもやしの癖に暴れ馬だな。
アレじゃ俺達にはどうにも出来ないぞ。
「・・・初めて使うから加減がわからないけど・・・数が多いから、思いっきりやっても大丈夫よね?駄目だったらリディに後でなんとかしてもらおう」
だが、俺にも分かる。
これは、強力な攻撃魔法が放たれる前触れだ。
「テニア。陛下に魔法防壁を。皆、盾を構えろ」
ビリッビリビリビリビリッ
「いくよ!!」
[我を遮る愚か者を撃ち落せ! テェレビィル!]
カッ
この国には昔最強の魔術師がいたらしい。
先帝が何度も取り返そうと躍起になって、結局取り返せなかったサウジスカルに奪われた最強の魔術師。
あとは俺を倒した唯一の女騎士ティファ。
俺は、その二人以外に最強と呼ばれた者を知らない。
そして俺は、昔いた最強の魔術師がどんな魔法を使うのか見た事はないが・・・・・きっとこんな感じだったに違いない。
ビュンッーーーードドドドドドドドドドドドドドドドッ
「「「「・・・・・・・」」」」
今、目の前でコレを見て、理解した事がある。
何故、先帝があんなにも必死でその魔術師に固執したのか、今ならハッキリと理解出来た。
「あーーーーーコレ・・・魔物滅びたのでは?」
「すげ・・・一寸の狂いなく魔物にも直撃してるッスね?あの人、化け物だったわ。これは間違いないっすわ」
「メリル様。素敵・・・痺れますわ・・もう、私メロメロですわ・・」
「・・・・一体、あの体の何処にあんな魔力が?」
あ、降りてきたな?
俺達の出番、もうないな?
「・・・・しまった。初めてだから、加減を間違えた」
「お、おい!!」
「メリル!!」
「・・・・・ごめん。少し・・・寝る。グーーーー」
この女めちゃくちゃだ。ここで寝るのか?
宮廷の周り、魔物の死体だらけだぞ。
遠くの方も酷い有様だ。
「馬鹿が、無茶をして。後は任せる。メリルを休ませないと」
こりゃ確かに一大事だ。
アースポントに干渉できて、しかも魔力が底知れず、そして人外の魔法を操る事が出来る。
そんな人物、誰が手放す?
絶対に手放したりしない。
どんなに生意気で我儘だろうが、そんな事は大した問題じゃない。
「・・・成る程。やっと納得した」
この事が知られたらかなり厄介だが、もう手遅れそうだな・・・。陛下は恐らくメリルがどれ程の価値があるのか気付いていたようだ。
面倒な事にならなければいいが。
「メリル様をお姫様抱っこするだなんて・・いくら陛下でも許すまじ・・・男が・・・憎い」
「ああ、メリル。薬術魔法だけでなく攻撃魔法まで強いだなんて・・・益々欲しい!」
「あーーメリル行っちゃた・・・」
いや、既に面倒な事にはなっているような予感もするが・・・。後で陛下から詳しい話と、今後の具体的な指針を立たなければ。
今度は、絶対にこの国から逃すわけにはいかない。
この国を安心して人が暮らせる場所にする為にな。




