クララは開き直る
まさか、本当に私がこの国の皇妃になる日が来るなんて思いもしませんでしたわ。
この国の未来が心配ですわね?
「時間だ。行こう」
「ええ」
この方も災難ですわね。
いくらこの国を統治しなければならないとしても、妃に迎えられる選択肢が私かディアナしかいなかったなんて。
心底同情致しますわ。
それでも、私も貴族の娘。
皇家に仕える者として覚悟はしておりました。
「これが終わったら貴女の好きな料理を作らせよう。それを励みにして乗り切れ」
リディ様? 私の事、完全に誤解しておりません?
私、流石にこんな場面でお腹空いたなどと申しませんわよ?
「リディ様」
「なんだ?」
覚悟はしているのです。
だから、もう我儘は言いませんわ。
「お支え致します。貴方は一人ではありませんわ」
最後まで、貴方は自分の望みを口にしませんでしたわね?
私がわざわざ抵抗する振りで時間を稼いで差し上げましたのに。お二人共思いの外、頑固でしたわ。
気付いてらしたのでしょう?
「・・・・クララ、貴女もだ。私が貴女を生涯守る」
私達は同士ですわ。
お互いこの国を愛し見守り育んでいく。
貴方の覚悟を私は今日から一緒に背負う。
一度は諦めかけた願いを貴方は叶えてくれるのですから。
「メリル様。私はいつでもお待ちしておりますわ。私、メリル様が側室なら大歓迎ですわよ?」
「しつこいなぁ。もう諦めなよ」
私こう見えて結構リディ様の事、認めておりますのよ?
今では私の旦那様ですしね? 私なりにリディ様を幸せにして差し上げたい、くらいには気に入っております。
「まぁ時間は沢山ありますので? いつでもお待ちしております。その気になったらお声をお掛け下さいませ?」
「はいはい。ほら、お父さんが帰って来た。全く・・・リディも甘いんだから」
そうですわね?
皇妃になった今でもコッソリこうしてテゼール様の料理をご馳走して頂いております。
これがあるとないとでは、私の仕事の頑張り具合に格段の差が出ますものね?
リディ様、よく分かっていらっしゃいますわ!
「皇妃様。またこちらに? 宰相殿が嘆いておりましたよ? 」
「ああ。彼は放っておいて大丈夫ですわ。全く。デリカシーのない男ですもの」
人の顔を見れば世継ぎはまだかと鬱陶しい。
一度彼も同じ立場になってみればいいのですわ!
「あー。確かに・・・アレじゃ出来るものも出来ないわよね。どれ?」
ウォン!
ちょっとメリル様?
いきなり触診するのはやめて頂きません?
ちゃんと毎日かかりつけの医療官に診てもらっておりますわ。
「クララ様」
「なんです?」
え? ニヤケ顔? 悪い顔ですわね?
また、何か企んでおりますの?
「おめでとうございます」
「「「え!?」」」
メリル様? 今・・・なんと?
ま、まさか・・・。
「やっぱりクララ様にはクリオルについてもらうべきだったわね? ちょっとコレ説教だわ。丁度三ヶ月目ってところかな?」
「そ、そうなのですの? で、でも医療官は体調を崩していたからだと・・・」
「うん、それもあるとは思うけどね。性別知りたい?」
え!? わ、分かりますの? この時点で?
こ、怖い!
「ちょっとそこの護衛! 動くんじゃないわよ! 知らせに行こうとしてたわね? 勝手な事すんじゃない」
「メ、メリル様。ど、どうしましょう・・・」
「大丈夫だよ、私もお母さんもいる。無事産まれるから」
そうではなくて。
私、本当にリディ様の子供産むんですの?
「明日からクララ様の側には私がつく。悪いけど他の奴はイマイチ信用出来ないからね?」
未だに私を皇妃と認めない者がおりますものね。
え? 皆どうしたのです?
「では、暫くはあちらで生活する事になりますわね? メリル様、支度して参りますわ」
「あ〜暫くはラフィネラと一緒かぁ。面倒ッス」
「俺もメリルと一緒に行きたいな。クララ様駄目?」
愛くるしい。
私といえどもシャミの愛くるしさには完敗ですわよ?
と、いうか皆様、万全の備えですわね?
「え? あの、クララ様の護衛を仰せつかっているのは私なのですが・・・」
「勿論貴方にも側に付いてもらうわよ? え? なんなの? 私達が側に居たら都合が悪い事でもあるの?」
「い、いえ! そのような事は・・・」
あら? もしかして、気づかれましたの?
このやり取りだけで気付くとは、流石ですわね?
やっぱりリディ様の側室になって下さいませ!!
心強いですわ!あと、仕事もしやすくなりますわ!
皇妃業・・・辛い!!
「食事の管理もしないとねぇ。もういっそコッチ来る?」
「お! いいではないか! 子供が産まれるまで此方に居れば安心だ。私もその間、此方に来ようかな」
「滅茶苦茶ですわね? そんな事許される筈無いですわよ」
「え? 許されるよ? 私の言うことが聞けないの?って言い放つ」
コレですわよコレ。
メリル様、官吏の者達に良く思われておりませんわよ?
皆、迷惑がっていますわ。
「後悔しても遅いわよ? 今更私を追い出そうとしても無駄だからね? 私最強だからね? 後、私の背後にも最強が二人控えてるからね?」
凄い脅し文句ですわね?
確かにメリル様のご親戚は皆、最強ですけれど。
あまり敵を作らない方が宜しいのでは?
「アンタの主人に伝えといて。敵に回す相手はちゃんと選んだ方が身の為だと。私達はリディやクララの近くにいる者の素性は全て把握しているの。側に置いて貰えてるからと安心してると、痛い目みるわよ?」
「・・・・い、いえ。私は・・何のことやら・・」
こうなってしまっては仕方ありませんわね?
もう少し泳がせておきたかったのですけれど・・・。
「困りましたわねぇ。無事に産まれるまで騒がしくなりそうですわぁ」
「え? 元々でしょ? その筆頭がクララ様でしょ?」
こんな簡単に後継が出来てしまったら、メリル様をリディ様の側室に迎える計画が困難になってしまいますのに。
予定より早まりましたが仕方ありませんわね。
ここは、開き直る事にしましょうか。
「メリル様。私、女の子を産みますので。寧ろ男の子だったら女の子に変更をお願い致しますわ」
「出来るかそんなもの! リディ号泣するよ? 本気でやめて欲しい!!」
くぅ!!
私が皇妃として優秀過ぎて上手くいかない!
プランAからプランBに急ぎ変更しなくては!
私の快適な生活の為に!!
「・・・クララ。無駄な労力をそこに注ぎ込むの、いい加減やめたらどうなんだ?」
自分が免れたからと勝手な事を!
ディアナ・・・そんな事言っていると貴女も同じような目に遭いますわよ? あ、手遅れでしたわね?ほほほほ!!




