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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第3章 翔ける想い
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フェルナンディは不憫に思う

[・・・・・これは・・・]


それは、唐突にやって来た。

私は()()がなんなのか直ぐに分かった。


「え? 光の雨? 」


「これは、一体?」


そして、初めて彼を目にして私が感じていた弱々しい反応が彼だったのだとやっと気づいた。


マチェスタは、私と同じだ。


「ふ、ふふははははは!!」


「何を笑っているんです?」


そうか。

では、彼の目的はまさか・・・。


「あ〜あ。間に合わなかったかぁ。後もう少しで完全な形で生まれ変われたのになぁ」


「・・・・生まれ、変わる? 何の事ですの?」


黒い渦が集まって来る。


これだけの供物を捧げて、恐らく本体の体も保管していたのだな?


「僕は、ずっと考えていた。もし、メリルと出会ったのが僕の本体が死ぬ前だったら僕はメリルの望む僕になれたんじゃないかな?」


「本体?・・・ってお前、まさか・・・」


「あんた・・・寄生、虫?」


彼の笑みに皆、理解したようだ。


だから、このタイミングで計画を実行したのだな?


[私達の体が浄化されこの世界から消える前に、自分の本体を生き返らせるつもりだったのか?]


「意味が分からない。何故、そんな事を?」


「マチェ・・・スタ?」


私達に宿主を選ぶ事は出来ない。

彼はきっと、知りたかったのかもしれない。


「危険だからまだ動かないで。あの黒い霧に触れては駄目だよ」


始祖を見つけ捕らえ、全てを知りこんな事を考えたのだな?


そこまでして、彼女に自分を忘れて欲しくなかったのだろうか?


「あれ、は。子供?」


「・・・・・あ。マチェ・・スタ」


凝縮された黒い霧が晴れた先にいたのは、シャミと同じくらいの子供だった。


銀色の髪にブルーの瞳。

彼は一つ首を傾げて周りを見渡した。

悪意なき無垢な顔で。


「メリル。大丈夫か? しっかりしろ」


「リディ・・・怖い・・・あの子・・」


きっとあの子供はすぐにダメになる。

この術は恐らく完成しなかった。


メリルや他の人間の呪詛返しでマチェスタの術は後一歩、及ばなかったのだろうな。


「お前に、聞きたい事があるんだ」


「お兄さんが僕を助けてくれたの? なぁに?」


光の雨が降り止まない。

私の体も少しずつ消えていく。


「フェルナンディ?」


[気にするな。あるべき場所に還るのだろう。最期まで、見届けてやる]


この術は不完全で良かったと思う。

私達は確かに宿主と同じもので作られる。


姿形も精神構造も。

けれど、だから本体と全く同じかと問われれば・・・。


「君は可愛い物が好きだよね? もし、この世で一番好きな物が手に入ったらどうする? それをどうしたい?」


「可愛い物? 動物かな? それとも女の子? うーん」


違うと思う。

だから、苦しんだんだろう?


「縄で縛って苦しむ所を観察する。あまり強く締めると鳴き声が聞こえないんだ、調整が難しいんだよ?」


「・・・・狂ってるッスね?」


「ふっ!ふふふふはあはははは!!そうか、やはりお前もそうなのだな? はは! ・・・ううううっ!!」


「メリル? お、おい?」


「メリル様?!」


抗いたくて、でも抗いきれない。

私達は人の人生を奪って生まれる者だ。

本来ならここにいてはならぬ者だ。


「勘違い・・・しないでよね・・・」


「・・・・メリル?」


皆臨戦態勢だな?

だが、まぁ同じ物で出来ている身として少しだけ待ってやって欲しい。きっとこれが最後だ。


「私が・・・うっかり、好きになったのは、この子供じゃない。アンタよ。人間じゃ、なくても、いいって・・・言ったでしょ? 今は大っ嫌いだけどね!!」


体が消える。

そろそろ動かなければ。


「フェルナンディ!!」


全く。

難儀な生き物だな、私達は。


だが、私は結構楽しめた。

チェシャの体内にいる時は、あれ程苦痛に感じたのにな?


「可愛い子だね? お兄さんの? その子・・・」


[テニア!!魔法 防壁を張れ! 禁呪が解かれるぞ!]


「一度でいいから、君をちゃんと愛したかった・・・・君の願いを、叶えてあげたかったのになぁ・・・」


お前は、()()()が本当なのかを知りたかったのだな?


壊したいのがどちらなのか。

愛したいのがどちらなのか。


本当は自分がメリルをどうしたかったのか。


答えは、見つかったか?


「あは?あはははあは!! なんだろぅ・・スゴクイイギブンダ・・・」


「あわわわわわ!! な、なんですかぁあ、あれぇ?」


「術者の手を完全に離れたねぇ? しかもこの魔力の強さ・・・困ったねぇ」


すまないな。

私が出来る事はもう何もない。


メリルをちゃんと受け取ったようで安心した。

では、あとは頑張れ。


なに、これを乗り切ればあと百年は平和だろう。

人間が無駄な戦を起こさなければな?


「マチェスタ! 覚えてなさいよ! アンタのことなんかこれっぽっちも引きずってないんだからね!」


おいメリル。

お前いくらクリオルに少し回復魔法で治療してもらったとはいえ暴れない方がいいぞ? もう体は限界値ギリギリだろう? あと、中指を立てるのは良くないと思う。


「あ、そう? じゃあ僕よりいい男捕まえてごらん。それで幸せになってみなよ? まぁ今のメリルじゃ無理だと思うけど?」


「ああん!? 上等だコラ! 超絶美形の男前で私の言う事なんでも聞いてくれる完璧主夫を捕まえてやるわ! 見てろコラァ!?」


・・・・・・・おい。その相手どうなんだ?

お前の理想の男性像はなんなんだ?


緊急事態発生中なのにも関わらずお前の両隣り絶句してるぞ? そいつらは無いんだな?お前は本当に罪作りな女だな?


[さぁ・・・還ろう。迎えに来たよ]


最後の最後で心配事は山積みだが、お前達なら成し遂げられるだろう。


成し遂げろ。

そして、無事に新しい明日を手にいれろ。

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