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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第3章 翔ける想い
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テットの決意

俺もメリルも本当に演技が上手いと思う。


まぁ、俺がそうしようってメリルに提案したんだけど。

それに、その方がメリルも余計な事を考えずに過ごせるかと思ったんだ。


メリルがリディ様に想いを寄せている事は、最初からなんとなく気付いてた。


メリル、リディ様のお願いを跳ね除けるのに、本気で逃げようとはしないんだ。


それで、リディ様が困る事を知っていたから。

絶妙なタイミングでいつもさり気なくリディ様を助けてたよな?


自分は無理矢理手伝わされていると言いながら。

不満を口にしながらも、リディ様が安心する様子を見てホッとしていたのを俺は知ってる。


俺がメリルを最初信用出来なかったのもそこにある。

もしかしたら、リディ様に付け入る事が目的なのではと疑った。


馬鹿だよなぁ。

逆だよ逆。


メリルはちゃんと分かってた。

リディ様が、この国にとってどれ程大事な存在なのか。


自分には、リディ様の皇妃は務まらないということも。

リディ様が、メリルを選ばないということも。


俺達は本当に自分勝手な大人だと思う。

ひっそりと暮らしていたメリルを無理矢理ここへ連れて来て国の為だからと重要な役割を押し付けて。

メリルの力が万能だと彼女に過度の期待を寄せて、挙句ここから逃がさない為にリディ様と婚約しろとまで言いだした。メリルは、表には出さなかったが内心複雑だったろう。


好きな相手と婚約出来るチャンスがあるのに、自分からそれを突き返さなければならないんだ。


ずっと知らない振りを続けて来た。


クララと婚約するとリディ様が言った時のメリルの顔が忘れられない。


彼女はいつも通り笑い飛ばしながら"おめでとう"と言った。


俺は思う。

なんで、いつも我慢するのがメリルなんだろう。







「・・・・・行ったッス・・か?」


「・・・・うん」


良かった。

上手い具合にメリルの秘薬半分に割れたッス。

俺にはアースポントを破壊する事は出来ない。

もしもの時の為に秘薬をメリルに残していける。


「テット。多分宮廷内の各場所に術がかけられてる。急いで応援をよんできて。お母さん達も」


「恐らくこちらに来れないよう魔法防壁が張られてるッスよ? どうします?」


「それだけど、老師がなんとか出来るかも。テットは内側から外側にコンタクトを取ってみて」


本心を言えば、もしこのままリディ様が目を覚まさなければメリルは苦しまなくて済むのかもとか、考えた。

でも、直ぐにそんな考えは消えたけどな?

悪りぃメリル。


「メリル」


「・・・うん」


だって、メリル全然諦めてないんだよ。

目を見れば分かる。

俺はずっと側でお前を見てた。


「リディ様の事は知ってたからな? 気にするな」


「はぁ? 別に気にしてない。さっさと行って!」


妬けるなぁ。

妬ける。メリルのその一途な想いを俺にも向けて欲しい。

少しでもいいから。我儘なのかな? 俺。


「偶にはご褒美が欲しい。そしたら、俺多分頑張れる」


お前、俺が女の子に囲まれてるからって自分もその1人だとか思ってるだろ? 薄々気づいてる癖に、勝手に納得しないでもらいたい。


「勘違いしてないか? 俺、メリルだけだけど?」


「だーーー!! うっさい! うざいうざい!! 分かったわよ! で? 何が欲しいの!?」


「シャミと同じ物が欲しい。それでとりあえず我慢する」


驚くなよ。お前、俺がいつもサボってると思ってるな?

ちゃんと、側にいたんだからな?

シャミに嫉妬とか、本当ないわ。俺。


「私との約束、忘れないでね?」


「おう。でもそれは、本当に最後の手段だからな?」


キスが少し手荒くなるのは許して欲しい。

これは、リディ様に対する宣戦布告だからな。

俺は、もう知らない振りをするのは止める。


「すぐ、助けてやる。リディ様と一緒に」





部屋を飛び出して走り出すとそこら中に魔物が徘徊してやがった。


あの野郎、用意周到な事で!

あとやっぱりメリル様が張った魔法防壁がおかしくなってる。何しやがったあの野郎!


[テット!!]


シャミ! と、へんた・・じゃなくマイネラ様。

無事だったんだな? もしかして、マチェスタに見つからなかったのか?


「これは、どういう事だろうね? テット説明してくれるかな?」


バリッバリバリバリバリ!

え? なんで防壁が崩れ始めたんだ?


「・・・・・!? あれは!」


崩れた防壁から現れた赤黒い雲の塊を見つけた時、俺はアレがマチェスタの目的なんだって気が付いた。


さっきメリルから湧き出した魔力のオーラもあんな感じの色だったからだ。


「アレで一体何をするつもりだ?」


「・・・おかしいな」


なんだよ。

側に寄るな、こんな時にまでセクハラしようとするのはやめて欲しい。いい加減オスカールに苦情を訴えたいと思う。


「これだけの魔物を召喚し、メリルの魔法防壁を奪い、そして、あんな物を作り出す・・・禁呪の力は持ち主にかなりの負担をかける筈。彼の体はもう既に限界を迎えていると思うのだけどね? そこまでして彼が成し得たいものとはなんなんだ? 私は彼の目的はメリルだと思っていたのだがね?」


「・・・・俺も、それは間違いないと思うッスけど・・」


「とにかく外の人間と合流しよう。奥にエドという子も怪我をしているんだ。危険だから置いて来たが、直ぐ治療しなければ」


「メリルは? メリル無事なの?」


悪いシャミ、その話は後でな、とりあえず・・・。


「やれやれ。こう魔物が多くてはゆっくり話も出来はしないな?」


「すみませんマイネラ様はこのまま外へ向かって下さい!リディ様死にそうッス。メリル様も危ないッス」


「そうか。シャミ、頼めるかな?」


「俺、急ぐ!!」


外に伝えるのはあの2人に任せて・・・俺は。


「・・・・はぁ・・・はぁ。あれ? シャミ達がいると思ったのになぁ? 君、生きていたの?」


「・・・簡単には死なねぇよ。お前にトドメを刺すまで安心してあの世に行けないんでね?」


メリルの秘薬は半分しか使っていない。

もしかしたら、俺は体が保たないかもしれない。


「はぁ・・・はぁ・・・こんな所に居ていいの? メリル、リディを助ける為に無茶したみたいだよ? ・・・僕の計画の一部がまたこれで一つ駄目になったかも」


「?・・・何の事だ? お前の目的はなんだ?」


「このままだと、僕が目的を達成する前にメリルは魔力を暴走させて、この国を滅ぼしてしまうかもね? 彼女にも、それを止める事はきっと出来ない」



"私が自分を止められない事態に陥った時は、躊躇わずに私を殺してほしい。約束出来る?"



俺、本当に過去の自分の浅はかな提案を取り消したい。

でも、しょうがない。


あの時は、アレが俺の出来る最善の選択だったからな。


「じゃあ俺は、メリルとの約束を遂げに行く。お前を倒して!!」


わかったよ。

俺もお前と同じ様に最後までやり遂げる。


俺は、メリル。

お前だけの騎士だからな。

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