マチェスタ
残酷な描写てんこ盛り
苦手な方は回れ右でお願いします。
「可哀想ですが、そう長くは生きられないでしょう」
「うっ・・・うう・・あなた・・・」
「泣くんじゃない。マチェスタに気付かれてしまう」
僕はある男爵家の一人息子としてこの世に生を受けた。
母は気弱な人で、父は貴族としてのプライドだけはやたらと高い人間で、過去自分の親が残して来た数々の功績を自分の事のように誇らしげに僕に聞かせた。
僕は産まれた時から身体が弱かったらしい。
でも、このカスバールに生まれてたのに僕は飢える事もなくわりと不自由なく暮らしていける。
それは、とても幸せな事なんじゃないだろうか?
「マチェスタ? 入りますよ?・・・きゃあ!!」
「あ。お帰りなさいお母様」
「・・・ま、またなの? マチェスタ・・無闇に、そんな事をしては。駄目よ?」
あまり外に出られない僕はよく窓の外に餌を撒いて小鳥が遊びに来るのを眺めていた。
その内、その愛らしさに触れてみたくなった。
一番手懐け易そうな子を選んで根気強く、僕は小鳥と距離を縮めた。そして等々その子が僕の指に止まり、その小鳥の頭を指で撫でられるまでになった時。
僕はその子の羽をナイフで突き刺した。
可愛い悲鳴が部屋に響き渡る。僕はとても満たされた。
何か気に入らなかったのか? とんでもない。
僕はこの小鳥が大好きだった。
他の小鳥が無視する中でこの子だけは僕に目を向けてくれた。僕が向ける愛情を感じとって僕を信じてくれた。
裏切られ、悲痛な叫び声を上げながらも逃げ場を無くした僕の可愛い哀れな小鳥。
僕はそれを見ると、堪らなくなる。
僕は、ちゃんと今、生きている。
何も感じない事はない。
僕は、ちゃんと喜びを感じ取る事が出来る。
「・・・マチェスタ。これ以上は無理だ。もう、やめなさい」
「そうなの? じゃあ、お城に行ってお父様のされてた事を言ってもいい? 僕はお父様程殺してはいないよ? 」
「違う! あれは仕方がなかったんだ。それに、もしこれが知られれば陛下もお困りになるのだぞ?」
僕のお祖父様は、先々代の陛下の重要なお仕事を賜っていた。公には出来ない、汚れ仕事だと聞いていた。
僕もこうなるまで知らなかった。
「じゃあお父様は僕の事も処理しないとね?見つけられたら大変だよ?」
「・・・・マチェスタ・・どうして・・」
どうして?
それはこちらの台詞だ。
僕は身体が弱く直ぐに死ねる筈だった。
貴方達が余計な事をしなければ僕は自分がこんな生き物だという事を知らずに死ぬ事が出来たと思う。
だって、元は本人の物なんだ。
この見た目も能力も、そして、この思考もね?
「あの子がいいなぁ。ほら、最近この町の近くに住み始めた人達の子供。ティファだったっけ?」
あの強そうな目。
そして、声をかけてもニコリともしない、あの女の子。
崩し甲斐がありそうだ。
「あの子は駄目だ。あの子はそこら辺の兵士より強い。あの家族には呉々も気をつけなさい。マチェスタ、お願いだ」
確かにティファは驚く程強かった。
それに、手懐けるのもかなり難しそうだった。
彼女達は長く此処にはいない。
時間が無ければ口説く事は出来ない。
じゃあ他ならどうかな?
例えば家族。
親とか兄妹。
どちらかを壊したら、ティファはどんな顔するのかな?
・・・・・そうだ、そうしよう。
僕は、具合の悪い母を連れて外に出た。
彼女の家は薬師を生業としていたからだ。
その途中、母が転び怪我をして目的の人物からこちらに近づいて来るとは思わなかったけどね。
「大丈夫? これくらいなら私が治してあげる」
・・・・・本当に、予想外だったよ。
現れた君はティファとは全然似てなくて、小さくて可愛らしくて、でも子供なのに何処か飄々としていたよね?
いつもの様に僕は、君を利用してティファの苦しむ顔を見て満足するのだと思っていた。
「ねぇメリル。もし、僕が人間じゃなかったら、僕の事嫌いになる?」
「何それ? 面白いね? 私にはマチェスタは人間以外には見えないよ? どこら辺が人間じゃない?」
「僕が、人間じゃないけどメリルをお嫁さんにしたいって言ったらどうする?」
これは、ただの戯れで、明日になれば僕はこの子をあの小鳥の様に扱うだろう。明日を過ぎればメリルはここから居なくなる。・・・居なくなってしまう。
「え? マチェスタ私の事好きなの?」
「好きだよ。誰よりも」
好きだよ。好きだ。
そうなんだ。
僕はメリルと出会って始めて人に恋をした。
それなのに・・・・。
「じゃあいいよ? 私もマチェスタが好きだから」
「今は離れ離れになるけど、いつか君を迎えに行く。それまで僕以外には恋しないでね?」
「分かった。待ってるマチェスタ」
「約束だ。僕は約束を守るよ、メリル」
それなのに。
どうして僕は変わらないんだろう?
メリル・・・・僕は、変わらず君を壊したい。
失いたくないのに、君を壊したくて壊したくてしょうがないんだ。もし、僕が本物だったら、この想いを抑えられたのかな?
「・・・・どぉして・・・マチェスタ・・・」
メリル。
約束だよ?
君を必ず、迎えに行く。




