少し話を遡り入国前の4人
ラット→サウジスカル帝国宮廷魔術師で、元ナシェスの部下。
今の状況を見たまま説明した方がいいか?
まず俺達が立っている場所はサウジスカルの一番北のカスバール帝国との境界線。
街を挟んだ正式な入国手続きをするダジィールって場所だ。んで、最近我が国で行われた親善交流で他国の状況を知ったデズロとエルハド様はそれを確かめようとまずはカスバールに向かう事にした。
こうやって話すと、まともそうに聞こえるだろ?
だけど違う! 全然そうじゃない。そもそもこの旅、公式なものではないんだ。我が国の陛下のお許しを得ていない!
だいたいエルハド様を国外に連れ回すなんて本来許される事じゃない。この方はこの国の元皇帝陛下。サウジスカルの象徴とも呼べる存在だ。本当なら世代交代なんてまだ必要なかったらしいぞ? それを病を患っただの何だと言って息子にサッサと引き継いでしまったらしい。
病を患った?
あんたデズロと荷物両脇に抱えて平然と歩いてたよな?
人をおちょくるのも大概にしろよ? このオヤジ共が。
え? で、何で宮廷魔術師である俺ラット様がコイツらと一緒にいるかだと? 分かんねぇかな? 明らかに巻き込まれてんだろ? ササラを騙す為のカモフラージュらしいぞ?
いっぺん死んで来いよ!
そしてもっと面倒なのも待ち構えていやがった!
「ティファ? 何故ここに? そして、何故・・私に巻きつくのだ?」
「そうだよティファ? 巻きつくなら僕の所においで? 僕の方が柔らかいよ? そいつ硬いでしょ? 中身ムキムキだからね?」
いや。だから、それよりもちゃんと理由を聞け。
そして、デズロ複雑なその顔止めろ。
収拾がつかなくなりそうだ。
「・・・・こっそりカスバールに行くんですよね?」
ギクリ。
分かりやすい。
この二人思ったより分かりやすいな?
そして、何かやましい事でも、あるのか?
「そろそろ皆の目が気になって来たから、羽を伸ばしに行くんでしょう? いいんですか? そんな事して」
お? やっぱそうなのか?
こいつらさては、ただ遊びに行くだけだな?
だから何も言わないんだな?そんなの知られたら 怒られるもんな? そしてエルハド様に関しては厳重な監視が付きそうだな? まぁ、この二人に監視とか全く意味ないけどよ?
あんたら力技で逃げられるもんな?
「もしかして、ハイトに言われて止めに来たのか?」
ああ。コイツの旦那騎士団長だもんな?
えらい優秀らしいぞ?新人 騎士の奴等皆泣きながら書類持って走ってるもんな? 大丈夫なのか? あの騎士団。
「違います! 私も仲間に加わります!!」
アイッターーー!!事態が悪化したぞ?コレはマズイ。
絶対にセレクトしてはならないこのメンバー。
カスバール。本当に滅びるんじゃね?
「しかしなぁ? お前結婚して新居でハイトと新婚生活を始めたばかりではないのか? ハイトにはちゃんと言って来たのか?」
「はい! ハイトさんには花火のお礼参りにメリルに会いに行ってくると伝えました! お父さんも連れて行くと言ったら渋々了承してくれましたー!」
「因みに、ソレいつの話?」
「昨日の夜です!!」
特攻だな! 特攻かけたな!!
おまっ!お前そのまま出て来たんだな? 知らねぇぞ?
俺はこの後どうなっても絶対責任とらねぇからな!!
「まぁ来てしまったものはしょうがないな。デズロ・・・ってお前・・・なんだその顔は」
見事なふくれっ面だな?
お前いい加減自分の歳、考えろよ。
「複雑・・・複雑だよ。僕ティファと居られるのはとても嬉しいけど。今回ばかりは納得出来ないなぁ?」
「大丈夫です! 私お父さんの邪魔しません! なんて言ったって私成長しました! 空気、読みます!」
いやいや、読んでねぇよ?
ここにいる時点で読んでねぇからな?
そもそもこの旅行は・・・・。
「私やラットの事は、この際空気か何かだと思って下さい!二人は遠慮なくイチャイチャして下さいね!」
「ダァレが空気読めるだって! お前本当駄目だな! 色々勉強し直して来いやぁ!!」
俺も行くんかい!!
俺はただの見送りの筈だったんだけどな!
ナチュラルに巻き込んでんじゃねぇぞこの女!!
あとサッサとエルハド様から離れろやコラ!
「前から気になっていたんだが、何故この間から私に巻きついて来るのだ? 前はこんな事して来なかっただろう? まぁ、私は構わないのだが・・・」
甘やかさないでくれ!
デレデレだな! エルハド様ティファにデレデレだな?
ムスメが欲しかったみたいだが実際の父親達、そいつの扱いに相当苦労してるからな? 別の奴にしとけ!
「え? だってお父さんの家族なら私の家族ですよね? 家族には甘えていいんですよ?」
「「・・・・・・・」」
黙ってんじゃねぇぞ!!
そして、全て許されてんじゃねーぞ! 俺は許さん!
「わ〜緑も増えて道も綺麗になりましたねぇ。馬車が使えるって便利です」
「この前はティファ達、力技で空から飛ばしたからねぇ。たまには、のんびりもいいねぇ?」
「ティファのご飯が食べたいな。何か作ってくれるのだろう?」
「はい! 料理が作れる場所を借りられる所に宿を取りましょう! 楽しみです!」
はぁ。
コレは何言っても駄目だな。
多分今頃サウジスカルでは気付いたササラ辺りが血相を変えて俺達を探してるに違いない。
俺が残したメモにいつ気付くかな。
「あ、ラットクッキー食べます? 甘さ控えめなのでラットでも食べられると思います」
「・・・・ああ。もらう」
で、結果的に俺達見事なまでに巻き込まれたな?
間に合ったと言うべきなのか。
ティファのあの様子から、カスバールに来るのを本気で止めなくて良かったと思う。
もし止めてたら・・・想像もしたくねぇわ。




