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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第1章カスバール宮廷
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ラフィネラのぼやき

「今日からお前はメリル付きだ。彼女の側を離れるな」


陛下にテットさんはそう命令された。

それを聞いた時の、俺の絶望感を皆に知って頂きたい。

やっと、やっとテットさんと肩を並べて仕事が出来るようになった矢先に・・・。


俺はラフィネラ。

勿体なくも陛下の側近としてお側に仕えさせて頂いている。この国は前の前の皇帝が治めていた頃、大勢の優秀な人間が他愛もない罪で追放され、そして殺されている。


そのせいで慢性的に人手が足りていない。

悪政時代の影響で、まともな者は宮廷に近寄りたがらないからだ。そのお陰もあったのだと思う。俺みたいな若輩者がリディ様のお側にいられる事が、だ。


「久しぶりッスね?お前ちゃんとリディ様見てろッス。この前みたいなのは困るッスよ」


「力不足で申し訳ありません。二度とあのような事がないよう、陛下に張り付いております」


シーーーーーーン。


「・・・・別に。俺も今は陛下のお側にいれないッスからね?ラフィネラ一人に任せて悪いなと思ってるんすよ?」


・・・・・・優しい。本当にテットさんは優しいと思う。

テットさんもあんな我儘女の側付きにされて大変だろうに俺を気に掛けてくれるこの懐の大きさ。


俺は寧ろ、この人の側付きになりたいくらいだ。


「お気になさらず。貴方のお仕事も重役です。どうか、ご自分のお役目に集中して下さい」


「・・・・それ。嫌味ッスか?」


嫌味?え?なんでだ?俺は素直に気持ちを伝えただけなんだが?何がいけなかったんだろう?


「何を仰っているのか、よく・・・」


「そッスか?じゃあ代わる?」


そんなにあの女の世話、大変なんだろうか?

俺で役立てるなら、役に立ちたいな。


「構いませんよ。お辛いなら、いつでもそのお役目を代わらせて頂きます」


「涼しい顔で言い切ったッスね?可愛くないッス。どうせ俺はリディ様に真っ先にお側から外される程度の人間ッスからね?お情けなんて受けねぇッス」


テットさん?

別に俺はそんな事これっぽっちも考えていないんだが?


どんどん話がおかしな方向に進んでいるような気がしてならないんだけどな?


昔から俺はこの目つきの悪さで人から誤解されやすい。

テットさん今までは俺に、こんな風に噛み付いて来なかったのにな・・・・・。

ここは、ちゃんとフォローしておかないと。えーと。


「情けなど。テットさんには必要ありませんから」


「お前酷いッスね!! そしてやっと本性が出たッスね?クッソ覚えてろよーー!」


いや、違う。何故だろう?

そんなつもりで言った訳ではないんだけどな?

このままではテットさんに嫌われてしまう!


それは嫌だ!テットさんは俺の憧れの人なのに!


「貴方は私などが心配しなくともどんな仕事もやり遂げられる人です。私の事はお構いなく」


あ。なんだろう。そんな冷めた目で見ないで欲しい。

地味に俺ダメージ受けている。

もしや、これ、嫌われたのでは?


「あ、あの。テットさん・・・・」


「テットーー!!終わったぁ。帰る」


「あ、そッスか?今日はいつもより遅かったッスね?」


「リディを診てたからね? 毒は体に残ってなかった。少し疲れてたから疲労をとる薬、渡しといたわ。サッサと帰ろう! 煩いのが来る前に!」


このちんくしゃ女。

大事な話の途中で平気で割り込んで来たな?

こんな女がこの国を救う程の魔力を持つなど信じ難い。

そしてテットさんに近付くな! 馴れ馴れしい奴だ!


「メリルーー!! やっと会えた!今日こそは私と一緒に薬剤室に来てもらうわよ! 」


「げ!ブリィッツォ! テ、テット! 逃げるよ!」


「了解ッス! 担ぎますよ?」


「好きにして! 私の足じゃ追いつかれる! テニアの結界があるお屋敷の門の前まで絶対に追いつかれないで!」


お前、テットさんに何をさせてるんだ! その人陛下付きの騎士だぞ!!あんなオカマから逃げる為だけにテットさんをこき使うなんて・・・信じられない!!


「テットさん。そんな事しないで下さい。貴方はその人の護衛が仕事では?」


「そうッス。だから仕事してるッスけど?」


「あ! こら! テット待ちなさい!! メリル置いて行きなさい!」


「それはできねぇ相談ッスね?いい加減諦めて下さいッス!!」


「もたもたしてないで走って! 追いつかれちゃうでしょうが! 」


ダダダダダダダッ


「・・・・・・・・あの、おんな・・・信じられない」


よりにも寄って何故テットさんがあんな女の側付きに?

別にテットさんじゃなくて適当な奴に護衛させればいいんだ。寧ろあの女を誰か消してくれないだろうか?


俺の憧れのテットさんにずっと守られているなんて、なんて羨ましいんだ。正直、あの女が憎い!!


「ラフィネラ。そんな所で突っ立ってどうした?」


「陛下。陛下は何故テットさんをメリル付きに? 別に彼でなくても良かったのでは?」


「今の所この宮廷で一番信用出来て騎士として優れているのは彼とお前だけだ。お前は誤解されやすいからな。テットも似たようなものだが、お前よりマシだからだ」


俺の所為か!!

対人スキル・・・・ここでも弊害が。


「今、メリルを失う訳にはいかない。彼女は本物だ。本人が自覚しているよりも、遥かに優れた能力を所持している。絶対に守れ。もし、私とメリル、どちらかの命を選ばなければいけなくなったら迷わずメリルを助けろ」


「・・・・・・本気ですか?」


これは、俺が想像していた以上に深刻な内容なのでは?


「最悪私の代わりはどうとでもなる。だが、メリルの替えはいない。皆メリルにそれを悟られないよう動いているが、彼女は最重要人物だ。ラフィネラ、勘違いするなよ?」


テットさんは、これを分かっているのだろうか?

いや、きっと分かっているだろう。


「彼女の我儘など大したものではない。彼女が一回アースポントに触れるだけで、この国のどれ程の民が死なずにすむと思う?彼女がここに来てから実りのない作物があっという間に実をつけたと報告が上がっている。通常の数倍の速さでだ」


それは、とんでもない事なのでは?

しかも数倍とは・・・・。


「彼女がアースポントに触れても、あの中身がすぐに空になる原因はそこにある。なかった魔力を一気に大地から吸い上げられるからだ。これを続けられれば土壌は潤い荒れた地は整えられ人がまともに暮らせる大地を取り戻せる。彼女にしか出来ない。彼女しか、いない」


「・・・・・・私も、命を賭して彼女をお守り致します」


不服だが、仕方ない。

テットさんも頑張ってるのだ。

俺も個人的な感情は捨てなければ。


「不敬な奴だが、悪気はないのだろう。それに、彼女の我儘に値する対価を我々は既に多く受けている。私は、祖父や父が犯したような失敗は繰り返したくないんだ」


・・・・・そうだ。それは、分かっているんだが。


「ギャアーー追いつかれたじゃん! テット! この役立たずが!」


「ちょっとメリル様が重い所為ッスよ?何いっぱい袋に詰めてるんすか?勘弁して下さいよーー!!」


ギャーギャーギャアーー!!


・・・・・・・。


「じゃあ。用が済んだら処していいでしょうか?」


「悪いが、そんな日は来ない。耐えろ」


え?無理だと思う。

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