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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第3章 翔ける想い
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メリルも手段を選ばない

「・・・・リディ・・・」


左腕を斬られて出血が多い上に致死量の毒。


でも、その瞬間リディを覆っていたアースポントのかけらが崩れ落ちた。


多分これは、生きている者か、魔力にしか反応しないどちらかね。


「リディ・・・死んじゃったの?」


テットの阿呆も、秘薬はテット専用だって言ったにも関わらず、アイツ半分残していったね。


だから、これはリディには使えないんだよ!


・・・・このままの状態じゃね?


秘薬を個体にしたのは、ある意味正解だったかもね?

じゃなきゃこんな風にテットが私に秘薬を残してはいけなかった。


なんとかして、これをリディに与えないと。


「・・・はっ! 何してんだろ、私」


私は普通の平民で、ひっそりと薬師として暮らしてた。

荒廃したこの国で、この国が終わりを迎えるその日まで、ただ静かに目立たず誰とも深く関わらず、生きていく筈だった。


私の力が悪い事に使われるそれを避ける、その為に。


だから私は外に出なかった。

でも、本当は・・・・。


「・・・・お姉ちゃん」


本当は、お姉ちゃんと外に出て遊びたかった。

普通の子供みたいに何も考えず無邪気に時間を過ごしたかった。きっとお姉ちゃんは、そんな私の心の底の願望をちゃんと感じ取っていたのだと思う。でも、その反面で私はそれがとても危険な事だと理解出来ていた。だから、お姉ちゃんに反発した。


理解、出来ていた筈だったのに・・・・。


"大丈夫。ちゃんとお父さんとお母さんの許可を得て遊びに行こう。心配だから反対されるんだよ。僕は体が弱いから危ない遊びはしないし、外に出て散歩したりお話をするだけなら危険じゃないよ。僕も一緒に行ってあげる"


終始礼儀正しいマチェスタに、お父さんもお母さんも渋々だけど外に出す事を許してくれた。

それに、あんな子供がまさか快楽殺人犯なんて思わない。


でも、お姉ちゃんだけはアイツが怪しい事に勘付いた。


"メリル。私も一緒に行きます"


表情を変えずに言うお姉ちゃんに腹が立って何度もそれを断った。


それに、その頃お姉ちゃんとはあまりいい関係ではなかったから。


その町では、小さい子供がよく行方不明になると言っていた。この町に住んでいる領主が子供を攫って何処かに売っているのだと、密かに囁かれていた。


そういう事情もあって家族は皆その頃かなり周りを警戒していたんだよね。


なのに、本当に私って愚か。

でも、私も人間なんだよ?

間違いの一つや二つあるでしょ?


"僕はティファよりメリルがいいよ"


単純か! チョロいな私!

でも、まだ子供で引きこもりの薬草オタクで妙に弁がたつ生意気女の私が、綺麗な男の子に嫌がらずに気さくに好意的にされたら、悪い気はしない。そりゃ、少しくらい期待するよね?


だから、すごい癪だけどあの変態が言った事は当たってる。私は、アイツに恋してたと思う。


"なんで? マチェスタ?! 何する・・"


深くは追求しないで欲しい。

まぁ、敢えて訂正するなら、ギリギリ致命傷は負わなかった。その前に、彼の父親が気付いて止めに入ったから。


でも、その後がいけなかった。

その父親は、マチェスタを助ける為に、してはならない事をした。私の記憶を魔法で改ざんしたんだよね。


その所為でお姉ちゃん勘違いして、その父親の方を殺しちゃったんだよね。それで、一番危険なアイツは生き残っちゃった。まんまと騙された。


「・・・あたまが覚えてなくても・・・心は正直・・」


私は、ずっと恐ろしかった。


大切な人を作る事が。


唯一の相手を見つけてしまう事が。


だから、もう誰にも絶対に恋なんてしないって決めた。


でも今、私を救ってくれるお姉ちゃんは側にいない。


「約束だよ? テット」


私は今日、自分の誓いを破ろうと思う。


不完全ではあるけど、多分これで必要最低限リディを回復させる事が出来ると思う。


全く。飲み込まないよう秘薬を精製し直すの滅茶滅茶大変なんだけど? 魔力も奪われ続けてるしさぁ?


「さて。じゃあ・・・やりますか?」


そんなに私の魔力が欲しいならくれてやろうじゃない?

魔力が空っぽになればその瞬間、私は解放される筈。


「今、助ける。リディ」


お父さんお母さんごめんね? 私、二人より早く死んじゃうかも。でも、悲しまないで。


「だぁあああああああああ!!」


私、それでもリディを死なせたくない。

いいでしょ? どうせいつかは死ぬんだし。


私にしては結構頑張ったでしょ?


ゴゥン!







「・・・・・・・リ、ディ・・・」


これは、恋と呼ぶには不完全だと思う。


でも、愛だと言われれば、確かに、しっくりくるよね。


変なの。


「・・・・・・・カハッ!・・・メリ・・ル?」


「・・・・・リディ」


うん。認める。でも、言わないよ?


私は誰にも恋、しないんだから。


「幸せになって。貴方の、愛する人達と」


「・・・・メリル?・・これは、どういう・・・」


ピキッピキピキピキピキッ


「私を殺せば・・・アイツはこれ以上禁術は使えない。リディ・・」


「・・・メ・・・」


「私を殺して。今、すぐに」


私は守るよ。


こんな事で、失ってたまるもんか。

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