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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第3章 翔ける想い
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メリルは認めたくない

「落ち着いたか? 全く・・・人の話はちゃんと聞いて欲しい」


「ごめんなさい。あ、貴方ここの偉い人ですか? 私と歳は近そうですけど?」


「まぁそこそこな? まぁだが、人がいない所なら気安く話してくれて構わない」


「あ、そう? 良かったー! 私敬語とか苦手なの。で? コレはなんなの?私が触れたら 水晶の色が変わったけど?」


コロッと態度を変えた私にリディ呆気にとられてたよね?

いや、最初から殿下だって言ってくれてたらさ? 私もあそこまで馴れ馴れしくしなかったと思うよ?


リディにも事情があったからしょうがないけどさ。


アースポントに干渉出来る人間がいきなり現れたんだもんね? それも偶然。思いもよらない事故みたいなもので。


そりゃ、様子も伺うよね?


「これは、この国はの各地に魔力を送る事が出来る物なんだが、この中に魔力を注げる人間が中々見つからなくてな。とても困っていたんだ」


「へぇ? ん? でも私多分自分の魔力この中に吸われたよね?」


「だな? お前はアースポントとの相性が良いみたいだ」


初めて会った時から、リディはとても話し易かった。

なにより妖精達がリディの周りにたくさんいたから、それも安心出来た理由だったんだよね。


私、この宮廷に連れて来られてからずっと緊張してたから。そうは見えなかったみたいだけど。


「ふーん? 面白いね? もしかしてリディの仕事ってコレの管理なの?」


「そうだな。それも、仕事の一部だ」


「へぇ・・・私も暫くここから出られそうも無いし、話し相手になってくれるならその時は私も手伝ってあげよっか?」


「本当か? それは、凄く、助かる」


「・・・・・・うん」


その時の、リディの笑顔がとても幼くて。

凄く親近感が湧いたというか。


私男の人が余り得意ではないけど、リディは不思議と平気だったんだよね?


嫌悪感が湧かない。


アトレイア様に対してもそうだから、もしかしたら私リディの顔が好きなのかと思ったんだけど、そうじゃない。


この人は私を傷付けない。


そう、直感的に思った。

そして、その通り。

リディは終始私の事丁寧に扱ったよね?


口や態度には出さなかったけど。

接し方で分かったよ。

リディが、私の事大切に扱ってくれてるんだって。


だから、その分ショックも大きかったわ。



「私はカスバール国皇帝リディ・ディムレムだ。メリル。其方に正式にアースポント管理の協力を頼みたい」


いやぁ。まぁ宮廷で働くぐらいだからお偉い方何だろうとは思ってた。でもさ、これはないよ。


リディ。それは、隠しちゃ駄目だよ。


「は? 嫌。なんで私がそんな事しなくちゃなんないの? 私は家に帰る。私は薬師なんだから、此処では働かない」


知ってたら最初から仲良くなんてならなかった。

私達からしたら雲の上の人だよ? でも、リディに会って皇族のイメージが大分変わったから、それは良かったかもね? 何も知らない間はとても楽しかったんだけどな。


でも、私なんであんなにがっかりしたんだろうね?


最初から、分かってたのにね?



「リディ!!リディ!!」


「ありゃ? 自害しちゃった? ちゃんと緊急事態用に持ち歩いてたんだね? あーあ。計画が狂ったなぁ」


どうしてこうなったんだろ?

それに、なんでバレたのかな?


私、リディに悟られるような態度とった覚え、ないんだけど? もしかして、皆知ってた? なんで?


「残念だったねメリル。君が恋した彼は死んでしまった。でも、大丈夫だよ? 君には僕がいる。僕が、君を愛してあげるからね?」


「汚い手でメリルに触るな変態が! 後お前がリディ様の代わりになるとかあり得ないからな!」


「え〜? でも、君はあり得ないよ? メリルはね? 清廉潔白な男性が好きなんだよ? 君はそれになり得ない」


「お前にそんな事言われたくねぇな!!」


私の魔力、徐々に奪われてる。

恐らくだけど、あの男入念にこの宮廷内に自分の魔法を増幅させる仕掛けを施しているんじゃない?


だって、アイツ本人には、こんな事をしでかせる程の魔力は無いと思う。


「・・・イテテ。キリが無いなぁ・・・」


ブォン!

何? 私を捕らえてる水晶の色が赤黒く・・・。


「あっ!ああああああああ!!」


「メリル!?」


「はい。急所ガラ空き」


ザンッ!


「・・・っか!」


あの変態! まさか私から吸い出した魔力を使ってる?

でも、この色は、何?


「う・・・ぐぅ・・ぅ」


「メリル。よく見て」


どうにかしないと。

どうにかして、此処から出なきゃ・・・。


「君が限界を迎えるのと君の大切な人達が死ぬの、どちらが先だろうね? 」


こいつ。私の魔力が暴走するのを、待っている?


「黙れ変態。サッサと此処から出しやがれ」


「口が悪いなぁ? 昔はもう少しお淑やかだったよね?」


煩い! そんな大昔の事忘れたわ! ってかあんたの事もさっき思い出したくらいだわ!


「ごめんねメリル。君を傷付けたりして。でも今はもう、君だけしか愛していないよ?」


「・・・・メ、リル・・」


テット。


ごめん。私もしかして、テットの事、傷付けてる?

本当はこんな事アンタ達に知られたくないし、正直同情されるのも心配されるのもうんざりなんだけど。


「まさか、君が本気で僕の事好きだとは思わなかったんだ。だから、あんな事したんだよ? ショックを受けたティファを見た時よりも、君が僕が君ではなくティファを好きだったのだと知った時の、あの表情が忘れられなくて。本当に、あの時の君は素敵だった」


駄目。立ち上がらないで。

動けるなら、そのまま出て行って、テット!


「ずっと君を探してた。まさか、ここで見つけるとは、夢にも思わなかったよ?」


「私は二度と会いたくなかったわ。筋金入りの変態野郎」


お願い。


私を助けようとしないで。

これ以上は、私に見せないで欲しい。

私に失わせないで欲しい。


「いつまで、強がっていられるかな?」


ザンッ!


「メリルから離れろ。・・・そいつは、お前が触れていい相手じゃねぇよ」


「・・・・残念。そこは、急所じゃないんだなぁ?」


失う事を恐れている自分を、思い知らさないで欲しい。

じゃないと、私は立ち上がれなくなる。


ザンザンザンザン!!


「ーーーーッ!」


「テットーーー!!」


目の前でテットが串刺しになってる。

すぐそこにいるのに!


直ぐ。目の前に!!

テッ・・・・。


「死んじゃったかな? よし、じゃあメリル行って来るよ」


「・・・・な、に?」


「せっかくシャミを迎えに行かせたのに邪魔が入ったからね? ちゃんとシャミのとどめを刺して来る」


ふざけんなよ。

このサイコパス野郎!!


悔しい! こんな奴、この水晶が無ければ・・・。


「大丈夫。ちゃんとシャミの首を持って来てあげる。それまで、その二人とお別れしておいてね? もう、二度と会えなくなるんだからね?」


「・・・っざけんな! 待ちなさいよ!!」


「また後でね? メリル」


シャミ!! お願い、誰か気付いて!

誰か!!


ギィィィイ・・・バタンッ。


「・・・・・行ったッス・・か?」


「・・・・うん」


いや。絶妙なタイミングだね?

あんた役者になれるよ。

殺される直前に上手く秘薬、口にしたね?


「テット。多分宮廷内の各場所に術がかけられてる。急いで応援をよんできて。お母さん達も」


「恐らくこちらに来れないよう魔法防壁が張られてるッスよ? どうします?」


「それだけど、老師がなんとか出来るかも。テットは内側から外側にコンタクトを取ってみて」


アイツがこっちに帰って来る前に、なんとかしないと。


「メリル」


「・・・うん」


いや、凄く気不味い。

色々知られたのもあるけど、うん。


「リディ様の事は知ってたからな? 気にするな」


「はぁ? 別に気にしてない。さっさと行って!」


う、うん。近い、近いよテット。

人が動けないからって調子に乗んな!


「偶にはご褒美が欲しい。そしたら、俺多分頑張れる」


なんだそれ! なんで私がアンタにそんな物!

っていうかアンタ勝手に私の騎士になったんだよね?


「勘違いしてないか? 俺、メリルだけだけど?」


「だーーー!! うっさい! うざいうざい!! 分かったわよ! で? 何が欲しいの!?」


「シャミと同じ物が欲しい。それでとりあえず我慢する」


なんで知ってんだーーー!!うぐぐぐぐっ!


「私との約束、忘れないでね?」


「おう。でもそれは、本当に最後の手段だからな?」


テットの癖に生意気だな!

私がちょっとトキメクとか本当にない。

これは、多分窮地に追い込まれた時に起こる錯覚に違いない!


「すぐ、助けてやる。リディ様と一緒に」


信じてる。

そして、考えろ私!


まだ、私にも出来る事がある!

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