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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第2章メリル動く
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クララはご不満である

誠に遺憾ですわ。


「クララ。そんな顔しても駄目だ。テゼール殿はまだ帰って来ない。肉料理は諦めろ」


フンヌゥー! そうですけれど! テゼール様、とても料理、お上手なんです。そして、メリル様の御姉様はサウジスカル国民絶賛の料理人だそうですのよ?


何故一つも私のお口に入らなかったのでしょう?

納得いきませんわ!


「いずれ戻って来られる。それまで我慢しろ。お前大人だろう?」


「子供でいいですわ。永遠の10歳で構いません!」


「凄いなお前。本当に毎回感心する」


ディアナは呑気ですわね?

私、実は知らぬ間に大ピンチですのよ?

その報せが来た時、本当に奴等滅ぼしてやろうかと思いましたもの。何やってくれちゃってますの?我が父は。


「・・・はぁ。人生の終わりに飛びっきり美味しいお肉を望んだっていいじゃありませんの。ディアナ、私先にリタイアしますわ」


「・・・・・・・おい。嘘だろ? まさか・・・」


「クララ・エドモン様」


あら。思ったより遅かったですのね?

陛下の事だからとっくに調べて我が家を焼き討ちしているぐらいはしたのかと思いましたが。

いえ、これは私の願望ですが。


「陛下がお呼びです。申し訳ありませんが直ぐにおいで下さい」


「・・・・・クララ!?」


「お互い、苦労しますわね ディアナ。まぁ、貴女のお陰で多少なりとも楽しめましたわ」


あれ程邪魔をするなと釘を刺したにも関わらず、メリル様に危害を加えようとするとは・・・。

どうしようもないですわね。


「メリル様が帰って来たら宜しくお伝えくださいな。テゼール様にも。一生分には足りませんが、充分美味しい料理に満足しましたわ」


そんな顔するものではないわ。

運が良ければ命だけは助けて頂けるかもしれませんわよ?

リディ様ちょくちょく甘いですものね?


「来たか。掛けろ」


「お久しぶりですわ、リディ様。お仕事は宜しいので?」


「ああ、綺麗に片付いた。菓子があるから食べて構わない」


えーと。毒入りでしょうか?

そもそも何故テラス?

謁見室ではなく?


「では、遠慮なく」


私の領土は他の領土に比べて土壌の穢れが酷かった。

食べられる物が育たず。私達は自分達の財産を切り崩し、他の余裕がある領土から食糧を買わなければならなかった。皆、必要な栄養をまともに取れず労働者も日に日に減り、それでも、なんとか生き残れたのは・・・アトレイア様が現役時代に我が領土を訪れ、父に恩賞を与えて下さっていたからですわ。それを他国に売ったお陰で何とか今まで生き延びて来れたのです。


「食べながら聞いて欲しい。先日ここを発ったメリル達が何者かに襲われたらしい。今デズロ様から連絡があり、調べているところなんだが、その中の数名に魔力に秀でている者がいてな? その者たちが身につけていた服の模様の特徴が貴女の領の織物だったのだ。何か聞いてないか?」


「このクッキー甘過ぎますわね。砂糖の無駄使いですわ、勿体ない」


「お前、人の話は無視か? 相変わらずだな?」


人が悪いからですわ、リディ様。

まぁ・・・たまには真面目に答えて差し上げましょうか。


「何故わざわざそんな事をお聞きに? 調べればわかる事ですわ。と、いうより、もう全部知れているのでしょう?」


「・・・・認めるのか?」


「ええ。私の所にも報せが届きましたので。即刻燃やしましたが・・・。もう少しのんびり出来ると思っておりましたのに、残念ですわ」


これは、首を切られてしまうかも知れませんわね。

ディアナ大丈夫かしら? あの子あれで結構私の事大好きですのよ? え? 違いますわよ?あくまで 友人として、ですわ。


「メリルを消すためか?」


「恐らく。後、我が父はサウジスカルに恨みがありますので、その繋がりがあると知りあんな事をしたのでしょう。父は、メリル様の実力を知りませんでしたので」


「・・・・何故直ぐに私に報告しなかった?」


「ふふふ」


リディ様って面白い方ですわ。

それは、どういう意味なのでしょう?


「リディ様。私は確かに貴女の婚約者候補ですわ。でも、エドモン家の人間でもあります。仮初めの婚約者候補と、自分の家族どちらを取るかなど決まりきっておりますわ。どんなに愚かな親でも、アレは私の親なのです」


「お前がここに居るのに、お前の命を危険に晒したのだぞ? それでも庇うのか?」


違いますわリディ様。

私は家族を庇ってなどおりませんわ。ただ・・・・。


「私だけ生き残れと? 冗談じゃありませんわ。私これでも自分の立場ぐらいは理解しておりますの。我が家族が愚かな行いで裁かれるのであれば私も同罪ですわ。誰が、命乞いなどするものですか」


私達はここまでよくやったと思います。

よく、生き残って来られたと。よく、生かせて来れたと。


父が愚かだったのは、その対価をこの方に求めようとした事ですわ。


「・・・・そうか。じゃあお前に相応しい罰を与えてやる」


リディ様は、きっとこれからもっとこの国を良くして下さいますわ。私の様に食べるのが大好きな人間がお腹を一杯に満たす事が出来る、そんな日がきっと近いうちに訪れる。それだけで、私は満足ですわ。


「クララ・エドモン」


リディ様? え? 何? 人の顎を掴んで何なのです?

ま、まさかここで首を斬るとでも?


それはちょっと、どうかと思いますわよ?

正式な手順を踏んで下さいませ!!


「お前を私の妃にする」


「・・・・・・え?」


あら? リディ様間近で見ると、とても整った顔立ちですのね? いつも陰気そうな雰囲気なので気づきませ・・ん? 今何と仰ったのです?


「お前の両親の望みを叶えてやろう。お前は死ぬまで私の正妻として私の側に置いてやる。嬉しいだろう? 一生食べる事に困らないぞ?」


「あ、あ、あ、あの? そ、それは一体どうしてそんな結論に? リディ様、私のお話聞いておりましたの?」


し、しかも珍しくリディ様、笑っておられますわ。

な、何でしょう? こ、怖いですわ。


「本当に、お前にはすっかり騙された。食べる事しか興味が無いのかと思いきや、ちゃんとまともな思考を持ち合わせているのではないか。安心したぞ。そろそろ本気で決めなければならなかったからな?因みにこれは決定事項だ。分かったな?」


「で、でも私、貴方より年増ですし!」


「4歳差だろう? たいして離れてはいない」


「リディ様はメリル様がお好きなのでは!?」


は!! 思わず本音が!

ん? え? ちょっとリディ様? それ以上顔近づけないで下さいませぇええええ! ん? ほ、頬?


「あのな。何故皆そう思っているのだ? 私は一度だってそんな事を口にした事はないぞ? それに、メリルもそうだ。もし、メリルが好きならば、わざわざ婚約者候補など指名しない。正攻法でメリルに申し込むぞ」


え? 勘違い?

そういえば確かにリディ様からメリル様にそんなアプローチは全くありませんでしたけれど・・・あら?でも?


「正式な誓約書を用意する。クララの両親をこちらに呼び出せ。心配するな、メリルを襲った賊は皆死んだ事にした」


「・・・・・え"」


「ついでにその優秀な臣下達も連れて来い。ここでこき使ってやる」


これは私うっかりやらかしました?

もしかして、リディ様に嵌められましたの!?


「まさか、嫌とは言わないだろう? 我が愛しの婚約者殿?」


ギャアアアアアアアアア!! やられましたわ!

正に八方塞がり! いやぁああああああ!!誰かぁ!

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