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最強薬師は絶対誰にも恋しない  作者: 菁 犬兎
第2章メリル動く
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クリオルは本領を発揮する

「こんにちは。あの、アンシィさんはいらっしゃいますか?」


「おや? 何だいアンタ。何処の村の子だい?」


今日は仕事に向かう途中メリル様に頼まれて、ある集落まで来ています。


つい先日獣化した女性の暮らす村です。

本当ならメリル様がここに来る予定でしたが急なご用で今日来れなくなってしまったので、その代わりだそうです。


「メリル様が今日来れなくなってしまったので、必要なお薬と、診察をさせて頂きに参りました。カスバール宮廷に仕えている医療官でクリオルと申します」


「え? アンタみたいな子供が?・・・いや、メリルちゃんも若いもんねぇ。新しい皇帝陛下もとてもお若い。あの方が登極されてから、カスバールは日に日に回復しているもんな。・・・本当に、めでたい事だ」


そうですね。それも、一年も経たないうちに回復の兆しが明らかに見え始め、この国の人々は徐々に希望を抱き始めています。


リディ様こそ、この国を救って下さると。


「テットさんにも、弟がとてもお世話になっております。僕でお役に立てる事があれば良いのですが」


「お? そうなのかい? アイツ宮廷では真面目な顔で働いてるかい?」


「真面目な顔はあまりしてないですね? 仕事は、してると思いますよ? 何処までが仕事で何処までが遊びかが僕には分からないですけれど」


「あはははは! やっぱり? 流石テットだ! そんなこったろうとは思ってた!」


話は聞いていたけれど、ここの村の人達は皆仲がいいんですね。僕の村はお互いに必要な時以外は関わりを持たかったですから、羨ましいです。しょうがないですけれど。


「それで、メリル様の治療後何処か身体に変調や変化があった方はいらっしゃいませんでしたか? 前と同じ様な症状が出た、とか。些細な事でも何かあれば教えて頂けると助かるのですが」


「今のところ大丈夫だ。それどころか何故か皆前より元気になっちまってね? 多分メリルちゃんがくれたポーション? の、お陰なのかねぇ? 」


「それは良かったです。でも、油断は禁物ですよ? 完全に安心だと言い切れる様になるまで僕達がお手伝いさせて頂きます」


「・・・そうか。嬉しいもんだね。誰かに、そうやって気にかけて貰えるようになるなんてねぇ」


そうですね。

僕もメリル様が来るまで他人を気にかける余裕なんてありませんでした。家族を守るのに精一杯でしたから。


「それが、当たり前になる日が早く来るといいですね。なるべく早く、そんな未来が来ればいい」


「来るでしょ? そう遠くない未来」


「アンシィ?」


あ、この人が?

一度獣化して切り離されたっていう女性。


「初めまして。クリオルと申します」


「アンシィよ。来たのがメリルじゃなく貴方で良かった」


え? 何ででしょう? 僕は、アンシィさんとは初対面ですよね? メリル様が来た方がいいに決まってますよ?

あの人の医療技術はこの世界で最高峰だと思います!


「メリルにはもれなくテットが付いて来るからね。まだ会いたくないの。出来れば次も貴方にお願いしたいわ」


「そうなんですか? 喧嘩でも?」


「そうなの。一方的なんだけど。あ、家に入って? 」


「いえ、女性の家に男の僕が一人で入るのは失礼ですので、患者さん全員に広場に集まって頂いてもよろしいでしょうか? そこで見させて頂きます。患者さんの中に動けない方や足の悪い方はいらっしゃらないと伺っておりますので」


「・・・・・え? 紳士? この子紳士だわ」


「こんな素朴な感じなのに、なんてしっかりしているんだろうねぇ? 流石宮廷医療官」


いや、だっていくら最近治安が良くなって来たとは言っても、悪い人間はまだ沢山居ますからね? 知らない人間を家に簡単に入れては駄目ですよ? 気をつけて下さいね?


「あ、もしかしてちゃんと不審者対策は万全でしたか? 余計なお世話でした?」


「うん、そうね。でも、気にしてくれてありがとう。クリオルの人となりも分かって安心できたよ。もしかして家族多い?」


「はい。実は僕を含め弟妹が4人居ます。まだ小さい子もいるので、家を離れてる僕は心配で心配で・・・」


「それは確かに心配ね。クリオルはどの辺りに家があるの?」


「今はセスターゼスの東側に。前は隣の領地に住んでいました」


治安も良いとは言えない場所だったので、メリル様が治療を理由にこちらに移り住めるよう手配して下さったんです実は。全て事後報告で聞いた時は白目剥きそうでしたもん。そして、しばらくは周りの視線がとても痛かったです。でも、僕は、悪くないと思います。



「僕は本当に恵まれています。宮廷に勤められただけでも奇跡なのに、メリル様の医療技術を間近で学ぶ事が出来る。それで、多少なりとも人を助ける手助けが出来るのですから」


「「・・・・・・」」


ん? どうされました?

ハッ! しまった。僕余計な事言い過ぎました?

つい嬉しくなって自分の事ペラペラと、すみません!


「何故かな? 私ちょっと、とても癒された。おじさんはどう思う? 」


「おらぁ、こんな息子なら、毎日可愛がる。良い子だ。この子カスバールで稀な天然記念物だ」


あれ? 怒ってない、ですね? 嫌な顔もされてないので、僕の勘違いでしょうか? それなら良かった。


僕うっかり相手を怒らせてしまう事があるので気を付けないといけないです。

最近は無くなりましたが、前はよくブリッツォ様に怒鳴られましたから。


「こんにちは。顔色がとても良いですね? 怪我をされているので、ついでに治しておきますね? 」


「「「癒されるわ〜」」」


何か、小声で内緒話されてますが、やはり触診は見慣れませんから、気になりますよね? 僕も最初はビックリして、思わず凝視してたら、メリル様に怒られましたから。


よし! 心配していた病気の根も全く見当たりません。

これなら次来た時には問題なく完治したと言えそうですね。あ、あとこれも忘れずに渡しておかないと。


「なぁにコレ。何の種?」


「実はコレ、大地の穢れを中和する効果がある種だそうです。うちの医療官長様が作られた物なのですが、コレをこの村に植えて頂けると助かるのですが」


「うーん。でも、これ食べられないんだよね?」


「はい。でも植えておけば万が一ここの土壌が汚染されてもその種がそれを吸収してくれるので、作物が枯れる事がないかと。穢れがあれば直ぐに芽がでて、花が咲き色が白く変化します。ですので、その目印にも良いと思います」


「え? そんな凄いの、ただで貰っていいの?」


「タダじゃないですよ? この地がまともな大地になるお手伝いをしていただくのです。私達の代わりにそれをお願いしたいのです」


これ、考えたメリル様とマリオーネ様、本当に凄いですよね?


この種を開発した本人でさえ呆然とお二人の話を聞いてましたもん。そして、かつてない程お二人に褒め称えられて涙目で震えてらっしゃいましたね?


褒められて良かった。

本当に、良かったですね! ブリッツォ様!


「メリルといい、クリオルといい。宮廷は天才の巣窟なの? よく、こんな物作り出したよね?」


「僕は凡人です。天才なのはメリル様です」


さぁ! あと残り僅かです。触診も多くこなしているうちに慣れてきましたから、どんどん行きましょう!


「あ、手首炎症起こしてますね? 治療しておきますね?」


「・・・・・いや、充分凄いと思うけど?」


この後行く予定の場所も問題なければいいのですが、リディ様が特別に僕に護衛をつけて下さるみたいなので、なんとしても成功させたいです!


僕も、陛下やメリル様のお役に立ちたいです!

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