「悪逆非道なマッチ売りの少女」第1話リメイク
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こどもになろうコン、冬童話祭2019の作品になります
自分の連載作品の「悪逆非道なマッチ売りの少女」の第1話のリメイク短編となります!
では、本編をどうぞ!
ひどく寒い日。
雪も降っており、すっかり暗くなり、今年最後の夜でした。
この寒さと暗闇の中、一人の憐れな少女が道を歩いていました。
少女は古いエプロンの中にたくさんのマッチを入れ、夜の街で少女はマッチを売っていました。ですが誰も少女からマッチを買いません。
ひらひらと舞い降りる雪が少女の長くて金色の髪を覆いました。少女は寒さに身を縮め、ついに我慢ならずその場にしゃがみ込んでしまいました。
「誰もマッチを買ってくれない…… これじゃあお父さんに叱られちゃう……」
すると、少女の元に青白い光が現れました。
「少女よ、俺がお前の手伝いをしてやろう、そんなに体を冷たくしてさぞ辛かろう。さぁ、俺を飲み込むがいい」
なんとその青白い光が少女に話しかけたではありませんか。
しかし、少女にはその青白い光が悪い者には見えなかったのです。なぜなら、少女は今まで数々の不幸を経験してきて、少女にこんなに優しく話しかけてくれる者などいなかったからです。
「本当に助けてくれるの?」
「あぁ、約束しよう。貴様に大金を掴ませてやる。しかし条件がある、俺にその体を引き渡せ。そしたらお前はもう寒い思いをすることもない、どうだ?悪くない話だろ?」
少女には青白い光の言葉の意味を理解することができませんでした。しかし、約束するという言葉を信じてその青白い光を手の中に入れ、そのまま飲み込みました。
するとどうでしょう、少女の瞳が赤く変わり、金色の髪に今までつけていなかった星形の髪飾りが着けられたのです。
「なんて簡単な野郎だ、よっぽど心がやられてたんだな。この体、自由に使わせてもらうぞ」
そこにはあの純粋な少女の口調はなく、その少女は裸足のまま歩き始めました。
積もった雪の冷たさなど感じぬのか怪しい笑みを浮かべています。
「まず、約束は果たすか。口調も直さねばいけないな。次に話す人間にでも試そう」
少女はゴミ捨て場に行き、そこに捨てられてあった水瓶をたくさん拾い水を汲み、その水瓶を地面に並べました。
「よし準備は整ったな。さぁ、始めようか」
少女は少し離れた民家に着きました。
「こいつが持ってたものが、このような使い方ができるなんて知りもしなかっただろうな」
そう言って少女は、エプロンの中からマッチを取り出します。そして、あろうことか民家にマッチで火を点けたのです。
少女は嗤いながら、一本、また一本とマッチを投げていきます。マッチが民家に投げられるたびに、火はどんどん大きくなっていきました。
今日は乾燥している冬の夜。火はそのまま一気に燃え広がり、たくさんの民家が焼かれていきます。
少女はすぐさま水瓶の元に戻り、焦る人々にこう言いました。
「水~!水は要りませんか~?」
少女はマッチではなく水を売り始めました。人々は少女の行動に何一つ疑問を持たず、自らの家と家族を守るため、次々と水瓶を買いました。
街が消火されると同じころに少女の水瓶は売り切れ、少女は大金を持って水瓶を捨てに行きました。
「こんなに容易く金を集められるとは、つくづく人間はバカだな」
少女は笑いながら、一本のマッチを残してその他をすべて折り、湖に投げ捨てました。マッチの棒は深く深く湖の底に沈みこんでいきました。
「さて、金も集まったことだし身の回りの物でも買い集めるか」
少女はそのまま、洋服、靴を買い、最後に武器屋に入りました。
「何だいお嬢ちゃん、ここはお嬢ちゃんみたいな子供が来るとこじゃないよ。危ないから出ていきなさい」
武器屋の主人は、少女を見るや金にならないと見たのか、そのまま追い返そうとしました。
「お金はありますので、この武器屋で一番良い拳銃を売ってください」
少女は武器屋の主人に大金の入った袋を見せて、自らが客だということを主人に見せつけた。
「ッ!?お嬢ちゃん、そのお金どうしたんだい?どこからか盗んだのかい?」
「盗んでなんていません。私が稼いだお金なんです」
すると武器屋の主人が受付台を叩きました。
「嘘をつくな!子供が稼げる金額じゃあないだろう!!」
「しつけぇよ…… こっちが下手に出てたらグダグダ文句を言いやがって、さっさと出せ」
少女はさっきまで出していた可愛らしい声ではなく、ドスの効いた腹黒い声で主人に催促をしました。
「えっ……?」
主人は今誰が話したのか、分かりませんでした。なぜなら目の前の少女がまるで別人のような声を出したからです。
「聞こえなかったのか?さっさと銃を出せと言ったんだ早くしろ」
少女が主人を睨みつけたのを見て、主人は急に背筋が寒くなり急いで拳銃を持ってきました。
「あ……あの、こちらになります……」
「なかなか、良い銃だな。ほら、代金だ。釣りはいらねぇよ」
少女は銃を受け取ると、本当の代金の1割増程の代金を主人に渡し、店から出ていきました。
それから少女は自分の家に帰ってきました。マッチ売りの少女の家です。
「なんだ? 早かったじゃないか、さっさと金を渡せ」
少女が家に入ると、そこには少女の父親が暖炉の前で猫を撫でていました。ですが父親は、少女を見た途端怒りを顕にします。
「おい、お前……。何服なんて買ってんだ!? 勝手なことをするなっていつも言っているだろ!」
少女の父親は暖炉の側から立ち上がると、そう怒鳴りつけました。いつもならそこで少女は怯むはずですが、少女は顔色一つ変えません。
父親は少しだけ気になって、少女の瞳を覗き込もうとしました。
「うるせぇよ……」
父親はその言葉に面食らいつつも、彼女の肩を掴んで怒鳴り声をあげます。
「なんだと? おい! それが父親に対しての口の聞き方か!!」
その瞬間、家の中にいきなり銃声が鳴り響きます。気付いた時には、少女の父親の額からは血が流ていました。父親は目を見開いたまま、バタンと床に倒れていきます。
「調子に乗るなよ人間風情が……」
少女の手には先程買った銃が握られていました。なんと少女は自分の父親を撃ち殺したのです。
少女は死んだ父親の死体を見おろしながら、舌を打って呟きます。
「このままだとバレた時に面倒だな」
少女は火が消えてしまった暖炉に父親の死体を詰め混んで、残しておいたマッチで火をつけました。ぼうっと火が灯り、父親の死体が焼かれる匂いが立ち込めます。
腐乱臭のする煙は、たしかに少女の鼻にも入りましたが、少女は全く気に止めませんでした。部屋の中は死体の匂いでいっぱいになり、煙ももくもくと立ち込んでいます。
「骨だけになったら砕いて海にでもバラまいてやるよ」
少女は肘掛椅子に腰掛けると、これからの事を考えました。自分の腕をちらりと見やりながら呟きます。
「こいつの名前を知らなかったな、俺が新しく名前を付けてやろう……。そうだな、レイカ……。今日からこいつと俺の名前はレイカだ」
ぽんっと猫が少女の膝の上に乗りました。少女はその猫を撫でながら、燃えている父親を眺め笑います。
「この少女の願いは叶えた、次は俺が暴れる番だ」
少女の呟きは、部屋の中で奇妙に谺こだまして煙に消えていきました。
その頃、街では先程の火災騒動を警察が調べていました。初めに焼かれた民家は森に面した位置に立っており、近くの森も甚大な被害を受け森の動物たちもたくさん焼け死んでおりました。
調査をしていた警察の一人が淡々とした調子で話します。
「火元はこの民家みたいです、火災原因はマッチでの放火と見られます」
「そうか、該当する容疑者を徹底的に洗いだせ」
「はい!」
警察は民家を離れ、容疑者リストに目をやりました。そこには元の少女の名前は書かれていません。
朝になって、少女は再び街に出向きました。にこやかな笑みを湛えながら、"少女"らしく街を歩いていきます。
「お嬢ちゃん、朝から買い物の手伝いかい?偉いねぇ〜」
「はい、ありがとうございます!」
八百屋や、肉屋などである程度の食料を買った少女は、最後に教会に足を運びました。
「この教会があると後々面倒になりそうだな、今日辺りに……」
少女は小さな声で独り言を言い、その場を去っていきました。
そして少女は家に着くと、裁縫箱を取り出して真っ赤な帽子のついたポンチョと洋服を縫い上げました。赤頭巾です。
夜になると、少女は自分で作ったその赤ずきんを着て教会へ向かいました。厳かな雰囲気のある教会のてっぺんには、金色の十字架がかかっています。
少女はそれにふっと目をやったあと、教会の中へ入っていきました。
しばらく歩き、大聖堂までやってきます。たくさん椅子の並んだその向こうに、神父が本を読みながら椅子に座っていました。
少女はあどけない笑みを浮かべながら神父に近づいて行きます。神父は途中で彼女に気付き、微笑み返しました。
「どうしたんだい? こんなところに」
少女は依然、にこにこと笑いながら近付いていくばかりです。神父は不思議に思って立ち上がりました。
途端、少女は隠し持っていた銃を突きつけます。
「なんなのですかあなたは!!」
しかし、少女は何も言わず目元を隠しニヤリと笑いました。
神父が周りを見ると、他の仲間たちは全員撃ち殺されていました。神父はなぜか、ずっと気付かなかったのです。
神父はその場で腰を抜かし、自分の死を覚悟しました。ふるふると手を擦り合わせながら、神へと祈りを捧げます。
しかし、少女は神父を殺さずに腹に銃弾を打ち込むと、そのまま帰って行きました。
「もうこの服も要らないか」
教会を襲撃し終わり、満足した少女は家に着くやいなや、着ていた赤いポンチョと服を暖炉に投げ捨てました。
そのあと昨日買った服に着替え、レイカは不敵な笑みを浮かべました。
「俺がバレる事は絶対にない、明日になったら面白いことが起るだろうな……」
そして少女は眠りにつきました。
朝少女が目を覚ますと、外が騒がしい事に気付きました。窓の向こう、たくさんの人がせかせかと走り回っています。
なんでも教会を襲撃した大悪人が公開処刑されるらしいのです。
少女は急いで広場に向かいました。広場には昨日、自分が着ていた物と全く同じ服とポンチョ──赤ずきんを着た少女が、断頭台に首をのせていました。
人々は口々に赤ずきんを着た少女を指差し、喚き立てています。
「やめて! 私は本当に何もしていないの! 離して!」
赤ずきんの少女は弁明の言葉を執行人に投げかけますが、執行人は聞く耳を持とうとはしません。周りにいる国民たちは、さらなる罵倒を少女たちに浴びせます。
「教会を襲撃した大悪人め! さっさとくたばれ!」
執行の時間が来たのか、執行人は断頭台の横に立ちました。
「お願いします! 助けて! 私は何もして…………」
少女の言葉を遮るように、断頭台の刃は少女の首を切りました。
ボトンッ!という音と共に少女の首が床に落ち、その瞬間周りの国民たちから歓声が上がったのです。
少女の首からは溢れんばかりの血が滴り、地面を濡らしていきます。少女の頭は目を見開いたまま、どこか宙を見て死んでいました。
少女は、レイカの身代わりとでも言うように、何も罪も無いのに殺されてしまったのです。
少女は自分の家に入った瞬間大笑いしました。
「アハハハハ! 身代わりになってくれてありがとよ、名前も知らない赤ずきん!」
ひとしきり笑ったあと、少女は次はどんな事をしてやろうと、また一人考えるのでした
最後まで読んでくださりありがとうございました。
もしよろしければこれを機に本連載作品の「悪逆非道なマッチ売りの少女」を読んでくださると嬉しいです!
良い意味で期待を裏切る作品だと思います。
それではまた他の小説で会えることを楽しみにしております。
それまでさようなら。