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環境魔法とはなんぞや  作者: 紅藤
環境魔法について解説している小説
1/4

 

「という訳で、この世界特有の魔法概念、環境魔法についてお勉強していくよ」


 とんがり帽子が印象的な少女が、杖を振り回しながら言った。

 対抗して、奥のほうで斧使いが斧を振り回している。


「何故、特有だって知ってるのかというとだな」


 なんか盗賊っぽい恰好をしたリーダーが、急にしゃべり始める。

 リーダーという看板を持っているから、たぶんきっと彼がリーダーなのだろう。


「異なる世界で活躍していた記憶があるからだぜ」

「おい、説明させろよ」

「お、いいぜ」

「いや、もう全部言われたから! 譲られたからって言える訳ないだろ!」


 リーダー、こと舟長がわめく。

 セリフを横取りしたのは剣士だ。


「とにかく、前の世界にはこんな複雑な概念なかったのは確か」


 黒い衣装が特徴的な少女が発言する。

 これで、五人そろった。

 彼らはスカイアドベンチャー。冒険者のパーティーだ。

 いま居る世界では、少し名が知れてきた中堅パーティーである。


「魔法って言えば、攻撃魔法か、回復魔法しかなかったぜ」

「ここじゃ、日常生活や戦闘以外に、魔法を使うことなんて珍しくないからな」

「魔法具っていうアイテムもあるし、結構、魔法に関しては進んでるのかもね」


 いずれにせよ、二つの世界を知っただけではいろいろと断定しがたい。

 以前いた世界の掘り下げまでしていると、話がそれる。

 とんがり帽子の彼女は、やや強引に話を進める。


「環境魔法は、火山や雪山、海などの、魔法属性に影響を与えやすいフィールドを、陸上・室内で発揮するために作られた魔法だよ」

「主に、人間同士の戦い……対人戦に用いられるな」

「効果範囲が、自分と相手だけってぐらい狭いから、戦争には使われないみたい」

「オレたちが生まれてこのかた、戦争なんてないけどな」


 そこで四人は、斧使いのほうを見た。

 あと、喋っていないのはコイツぐらいであるが。

 彼は開始からずっと斧を振っている。

 ……やっと視線に気づいたらしい。

 斧使いは斧をしまって、こう言った。


「まず、存在する魔法属性の話からしたほうがいいんじゃない?」


 話はすべて、ちゃんと聞いていた男である。


「そうだねえ。まず、環境魔法のイメージがしやすい六属性があって」

「炎・水・氷・風・土・雷だね。あ、覚えなくていいよ」

「次は相反する属性、聖と闇だな?」

「それから、似ているけど違う、月陰と日陽」

「あと一つは、環境魔法に左右されない無属性!」

「影魔法のことも忘れないであげてください」


 全部で十二属性。

 四属性プラス光・闇の基本六属性の、ちょうど倍だ。

 多すぎると思うかもしれないが、この世界の住民にとっては常識。

 そもそも威力の強さは、属性相関ではなく環境によって決まる。

 ここでの戦いは、どう環境魔法を使うか、が重点となる。

 勝敗は、如何に相手の環境を不利にして、自分の環境を有利にするかにかかっているのだ。


「一応、属性相関による弱点も存在するんだけど、ここの人はめったに使わないね」

「あいつら、環境上げ下げして、魔法でぶん殴ることしか考えてないから」

「ザ・脳筋☆」

「脳筋の人には言われたくないんじゃねーかな」


 剣士の余計な一言に、黒装束の彼女――アサシンは一瞬固まった。

 誰が脳筋だって?

 確かめたい気持ちをぐっと抑える。

 アサシンは精神年齢が高い女の子なので、我慢することなど造作もない。

 たとえ、射殺しそうな目で仲間を見ているとしてもだ。


「あ、アサシンちゃん、落ち着いて」

「うふふ、後で覚えとけよ」

「アサシン、相手も脳筋だ。気にすることはない」

「それフォローしてるつもりなの?」


 アサシンは一つため息をつくと、椅子に座りなおした。

 目線を剣士と舟長にやる。

 この二人の幼馴染ときたら、本当に遠慮がない。

 ボクだって、年頃の女の子なのに。


「そ、それでね。影魔法を除くすべての魔法属性には環境魔法が存在するの」

「影魔法は、名前こそ魔法とついているが、実質スキル扱いだからな」

「ダメージも素早さ依存だし。どこが魔法なんだろうね」


 実に名ばかりの影魔法である。

 影魔法は習得が難しく、世界中を飛び回っているこの冒険者たちでも、使用者にあったことは一度しかない。

 見せてもらった訳ではないので、信ぴょう性は微妙なところだ。


「魔法使いちゃん、実際に環境魔法を使ってみようよ」

「オッケー! 斧戦士さん!」

「はい、被検体は用意しておきましたよ」


 斧戦士と呼ばれた青年が、懐から何やら丸いものを取り出す。

 それは魔法具だった。

 青い宝石のように光るそれを、容赦なく床にたたきつける。

 魔法具は割れ、中に込められていた魔法が炸裂した。

 白い煙がもくもく。

 向こうの壁が見えないほど白い。

 白いもやの向こうで、黒い影が現れた。

 人の形をしているようだが、動かない。


「サンドバッグです。殺しても生き返るサービス付き」

「生きてるサンドバッグとは珍しいな」

「ついでに喋りますが、耳を傾ける必要はありません」


 煙がすっかり晴れると、だいたい大人サイズのサンドバッグがいた。

 うつろな視線をしている。寝起きのようだ。


「まずは、普通に一発。エナジーフォース!」


 とんがり帽子の魔術師は、杖を突きつけ、魔法を唱えた。

 胸のあたりで停滞していた白い風が、サンドバッグまで飛んで行って弾けた。

 658。

 まずまずのダメージだ。


「あれ。あんまり痛くないな?」

「今日は補助魔法使ってないので」


 そういいながら、斧戦士は言葉を話すサンドバッグを槍で突き刺した。

 この斧使いは、腕力の高さに定評がある戦士だ。

 サンドバッグのHPがゴリっと減った。


「いたーい。キャハ!」


 男性の声でそんなこと言われても、まったく嬉しくない。

 だいたい、キャハとかそっちのキャラのほうがずっと痛々しい。

 斧戦士はそっとサンドバッグから離れると、彼女にサインを出した。

 ゴーサインだ。やっちまえ!


「いっくよー! ノンレス!」


 ノンレスは魔術師の彼女、魔法使いが編み出した環境魔法だ。

 影魔法を除くすべての魔法には環境魔法がある。

 この言葉が正しければ、無属性魔法用の環境魔法だってどこかにあるはずである。

 しかし、無属性はマイナーでしかも、人気がない。

 彼女が通う学園でもなかなか教えてくれなくて、待ちきれなかった魔法使いは、自作の環境魔法を作ってしまったのだ。


「よーし、もっかい! エナジーフォース!」


 足元が異空間みたいになっている魔法使いは、さっきと同じように魔法を唱えた。

 すると、どうだろうか。

 909。

 サンドバッグは倒れた。


「属性値が50から70になったから……」

「ダメージ値からしても1.5……じゃないな。1.4倍ぐらいか」

「まあ、環境魔法を使うと、補助魔法使わなくても威力が出るよ、ってお話なのね」


 魔法使いが言った属性値とは、魔法攻撃の威力増強や軽減に役立つステータスである。

 0から100%の一本のバーで表すことができ、炎~風の六本と、日月一本、聖闇一本の計八本あるとされている。ただし、日陽と月陰の属性値は解明されておらず、ステータスで表示されるのは七本のバーだけだ。

 ちなみに無属性がどこのバーにあるかというと、これがややこしくて、炎~風の属性値のなかに一つずつ存在する。

 詳しくは図を見たほうが早いだろう。



挿絵(By みてみん)



 このように、普段、無属性の威力と言うのは固定で変わらない。

 のだが、世の中には無属性への耐性を失ってもいいから、魔法ダメージをあげたいという人のために、とある環境魔法が存在する。

 その名は、エレメンタルフィール。

 エレメンタルフィールドじゃないのは、文字数の関係とかなんとか。

 そんな裏話は置いておいて、この環境魔法は、ほかの環境魔法より威力が上がる。

 しかも、一属性ではなく六属性すべての威力がぐーんと上がるのだ。



挿絵(By みてみん)



 SP消費が100と重たくても、使いたくなるのがわかるだろうか。

 ただし、エレメントフィールには致命的なデメリットがある。

 無属性魔法攻撃にやたらめったら弱くなるということ。

 それは、同じように威力を上げているノンレスでも言えることで。

 こちらは、六属性すべての攻撃に弱くなるのだから、とんでもない効果である。

 無属性に精通している魔術師はそんなにいないので、この魔法の需要はない。

 作成者である一人を除いては。


「要は、ロマンなんだよ。デメリット付きだけど強化されるって」

「バトル漫画の主人公みたいでかっこいいよね!」

「まあ、わたしは使わないけど」

「おい、作成者。しっかりしろ」


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