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就活オブザデッド—祈りの弾丸—  作者: ぺたへるつ
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第2話 ゾンビテスト

 そして地獄の一丁目。

 近くに大学が密集しているせいか瘴気が濃く、亡者の気配も強い。道を往けば、虚ろな目をした亡者と何

人もすれ違った。みな、本来ならば若い生気に充ち満ちているべき若者達だ。だが、彼らの瞳は光を失い、その足取りは引きずるように重い。肉体からは腐臭がした。中には元気よく奇声をあげて踊り狂うモノの姿もあったが、やはり体は腐っているようだった。


「……大学生は、相変わらずだな」

 《生》の文字が皮肉に見えるほど、彼らは徹底的に死んでいた。私も昔は彼らと同じ大学生だったが、今では嫌悪感すら覚えている。義務教育の過程で現世に絶望し、大学入死を選んで地獄に堕ちた愚か者共。そのくせ地獄に堕ちれば現世が恋しく、未練がましく救人に群がる。地獄で業を積めば積むほど亡者としての評価は高まり再用の機会も増えるが、所詮は一度死んだ存在。現世での生に耐えきれないものも多い。

「君らにしてみれば、地獄の方が天国だろうよ」


 その時だった。

 突如、行く手の角から一人の亡者がまろび出てくる。出てきて、私の正面にふらりと立った。彼もやはり腐っていた。瞳に生気はなく、肩はだらりと下がっている。見れば、その体の至る所に弾痕とおぼしき穴があった。

「お……お……」

 どうやら、私を狙っているらしい。ずるずるとこちらへ向かってくる。私は、素早く上着のホルスターから拳銃を抜き放ち、構えた。すると、彼は狼狽えたように震えた後、全身を痙攣させながら気をつけした。

「動くな。そのままの体勢で名前と、出身大学を言え」

「やまだ、だいすけ……け……けいお、だいがく……きました。けいざ、い、がぐぶ……です」

「趣味は」

「テニ……ス。サークル、かつどう、してた」

「サークルではどんな役割を?」

「ぶ、ぶちょ……う」

「大学で積んだ業は?」

「さ、さーくるかつど。と、ぼ、ぼらんてぃ……あ」

 私がすかさずゾンビテストを開始すると、彼、やまだだいすけは答え始める。ゾンビテストとは、亡者に知性が残っているかどうかを問うものだ。多くの亡者はここで知性を失ったゾンビと判定される。彼は受け答えこそできているが、私は既に怪しいと感じていた。ここまでは大多数の亡者がクリアするのだ。問題はここからである。


「君の、長所は?」


 それは強い言葉だった。彼は一瞬視線を泳がせる。

「ちょ、ちょうしょ……ちょう、ちょうしょ……?」

 そして、ひどく痙攣を始めた。口角泡を噴き、白目をむく。

「君の、長所は?」

 重ねて問うと、彼は大きく全身を痙攣させ、叫んだ。

「おぉおおおおぉおおおおおおんんんんんんんんんしゃあああああぁあああああ」

 絶叫だった。言葉にならない、獣のような咆吼だ。ゾンビハウリング。久しぶりに聞くが、やはり気持ちの良いものではなかった。私は拳銃のトリガーにかけた指に力を込める。乾いた銃声が一つ、響いた。祈りを込めた弾丸が、彼を打ち抜く。その体はのけぞって、後方へ倒れる。

「お、お……ん……しゃ……」

 倒れた彼に近づくと、私の撃った儀式祈祷済みの弾丸は心臓に命中していた。だが、それで彼が死ぬことはない。ただ、しばらくの間ショックで動けなくなるだけだ。今は、虚空を仰いで呆けたように「おんしゃ」と呟いている。


「せめて、君の将来に幸多くあらんことを……」

 それは、せめてもの慰め。

 しかし私の祈りは、きっと彼に届いていなかった。

この世の希望とは泡沫の夢。

ならば。

覚めることのない永久の眠りだけが、人の魂を救うのかも知れない……。


次回、就活オブザデッド

第3話『ミリオン・プレイヤー』


私の祈りは、届くだろうか——。

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