策謀の鷹
僕はダン博士と聖都マールへ来ていた、いや2人では無かった。その道中...
「ダンなぜマールへ?あの本何か悪いものだったりしたんですか。」
「いや俺の研究対象だ、俺のチームで分析にかける、そしてお前も関係しているかもしれない。」
どういうことだろう、マールへは片道一時間ほどで到着する。カウが引く荷馬車はものすごい速さで進んで行く、カウの勢いの前ではモンスターも轢かれては死ぬことが分かっているのかやってくることはない。カウの前では道を開けるだけだ。
その時だった、荷物が置いてある場所に被せてある布が揺れ始めた。波打つ布にモンスターの気配を感じ僕はサーベルを抜く、何処から入られたのだろうかサーベルで布を剥ぎ取る。
そこにいたのは、
「じゃーーーんきちゃったーーー!!」
リンの姿であった。
「お前何で付いて来てるんだよ!!」
「はぁ、これだから子供は苦手なんだ。」
ダンは呆れたと言わんばかりに大きなため息をつきながら悪態をついた。僕がいるとリンが付いてくる、このリンをダン博士は苦手のようでリンと合わせていつも僕まで子供扱いする。
とこのように2人で探求の旅と行きたかった僕だが結果として3人の面白珍道中になってしまった。
そして聖都マールへと到着したのであった、絢爛なる街の装飾や溢れ出す活気と歓声の多さ。巨大な龍が次々に大門を通り運ばれてくる。街の中には巨大な塔がいくつも立ちこの街の力強さを象徴としている。多くの研究機関はここに籍を置いておりダン博士が在籍する魔導会こそ今回の目的地だ。
「ダンもう着くの?」
「ああもうすぐだ。」
その時だった。
「お前達伏せていろ、絶対にここにいろ。」
急に辺りの気温が下がる、息が白くなり肩が震え出す。
「何これ。」
リンはこの急な事態に目を丸くして震えている。
リンの体を抱き込み2人でしゃがんだ。
魔導士の使う魔は基本的に熱量である、熱を生む魔であるか熱を奪う魔か。その結果魔導士は炎と氷の2つに分かれる、そしてこれは氷の魔の攻撃を受けていると僕は判断した。
カウに乗っているダンが集中力を研ぎ澄ましているのがわかる、魔とは精神の集中から生まれる。
こんな街中で攻撃してくるとは通り魔か何かだろうか。
「ダン上だ!!」
空中に氷塊がいくつも生まれている。
その刹那氷塊は荷車に向けて飛来する、と同時に荷車の上に小さな太陽のような熱の塊が生まれた。ダンの魔である、ダンは獄炎の魔導士と呼ばれる炎使いである。氷塊は溶け僕たちにぬるい水がかかった。
「ハァッ、セイヤッ。」
ダンがカウを走らせる。すると寒さは消えて行き荷車に付いた霜も消えていた。
「急いだ方がいいかもしれないか。まさか街中で仕掛けてくるとはな。」
「ダン何で僕たちが狙われないといけないの?」
「ムゾウお前が持っている本が原因だろう。早めに町を出てよかった、マールならば早々手は出してこないと思ったんだがな。」
それからは誰も話そうとはしなかった。三人の珍道中は一転して不穏な気配を見せ始めた、ダンがリンを見て苦い顔をした理由が分かった気がした。きっとダンはこうなることが分かっていたのだ。
そして僕たちは目的地魔導会に到着したのであった。あの時僕は見ていたダンが太陽のような熱の塊で氷を溶かした時、歩道で鷹ような目で僕たちを獲物を見るように睨んでいた男がいたことを。