表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/62

エピローグ 冥界への招待

「――貴殿が、イグニッサの先王フランメラルドがご子息、冒険者フランメリック殿にございますな?」


 見上げた星空に甘い夢を思い描いてた俺は、突如響いたその声によって、現実の世界へ引き戻された。


「お初にお目にかかりまする。このような高みからのご挨拶、どうかご無礼をお許しくださいますよう――」


 はるか東方の国チャナタイで、死者を弔う際に鳴らされるという鐘の音を思わせる、不吉な声。その主はどこかと周囲に視線を走らせりゃ、


「フランメリックさん、上です! 神殿の、屋根の上に……!」


 俺より先に、アステルが気づいて指差した。目の前にそびえる神殿の、傾斜の緩い切妻屋根。その上に立つ、四つの人影を。

 アステルが言ってた、ウォーロにヒューリオス、ザバダ――先日コンスルミラで会った三人の神かと思ったが、違う。聞こえてきた声は俺の記憶に残る三人の、いずれの声とも似てねえ。それに、人影の数は四つ――一人多いじゃねえか。


「アステル、あんた……この神殿にゃ今、七人の神がいるって言ってたよな?」

「え? あ……はい。そうです、七人です」


 軍神、風神、海神――あの三人じゃねえとすりゃ、考えられるのは残る四人。


「それじゃ、あいつらが――」


 俺やデュラム、サーラがまだ会ったことがねえ、四人の神なのか。アステルにそう問うと、いつも柔和な表情をしてる神は、らしくもねえ硬い面持ちでうなずく。


「気をつけてください、フランメリックさん。あの四人は――」


 気のせいだろうか。星の神様の声は、心なしか震えてるように聞こえた。

 同じ神であるアステルが、緊張してる。

 あいつら一体、何を司る神様なんだ……?

 俺が抱いた疑問に対する答えは、速やかにもたらされた。神殿の上に並んで立つ、四人の神から。


「我らは、命刈り取る収穫者」


 と、四人のうち一人が言った。

 その後に続いて、二人目、三人目が言う。


「我らは、現世と冥界を隔てる大河の渡し守」

「我らは、冥界の王ヴァハルに仕えし忠実なるしもべ」


 冷たい戦慄が、背筋を突っ走る。

 乾いたのどを震わせ、かすれた声を絞り出した。


「あ、あんたたちは……まさか」

「然様」


 最後の一人――四人目が、一際気味の悪いしわがれ声で告げた。



「我らは――死神にございます」



 夜風が強まり、四人が身にまとう黒い長衣(ローブ)をはためかせた。目深にかぶってた頭巾(フード)も横殴りに吹きつける風にあおられ、下に隠れてた素顔が見える。

 四人そろって血の気がねえ、青ざめた顔。端整だが表情の変化に乏しく、どこか仮面じみて見える細面。酷薄そうな青白い唇が開き、こんな言葉を紡ぎ出す。


「我らの主――ヴァハル神が、貴殿とお近づきになりたいとお望みにございます。なにとぞ、我らとご同行くださいますよう……」


 言葉遣いは丁寧だが、その声はぞっとするほど冷たい響きをともなってた。しかも話の中身にいたっちゃ、死の宣告――あの世への招待に他ならねえときた。

 神々が定めた運命に抗うなんて、生意気なことを言い続けてきたからだろうか。どうやら俺は、とんでもねえ連中に目をつけられちまったらしい。

 神は神でも、命ある者にとっちゃ一際恐ろしい神。

 人間だけじゃねえ。妖精(エルフ)小人(ドワーフ)鬼人(トロール)、巨人――地上に住むあらゆる種族が恐れる、冥界の神々に。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ