プロローグ 不吉な夢を見た
故郷へ向かう船旅の途中、夢を見た。半年前の冒険以来、夢なんざほとんど見なくなってたのに、なんでだろう?
不吉で嫌な夢だった。乗ってる船が猛烈な嵐に襲われて沈みかけ、乗客たちが脱出用の小舟に乗り込もうと、押し合いへし合い、争ってる。冷たい突風が吹きつけ、豪雨に煙る船上で。
稲妻が暗雲を切り裂き、争う乗客たちの姿を一瞬、暗闇の中にくっきりと浮かび上がらせた。
俺と二人の仲間もその場にいて、離れ離れにならねえよう身を寄せ合ってる。三人とも、顔には焦りと、不安の表情。揉み合う他の乗客たちに阻まれて、小舟に乗り込むどころか近づくことさえままならねえんだ。
さんざん苦労して前に進み、ようやく小舟の前にたどり着いたときにゃ、残る空席――人が座れる場所は、あと一人分になってた。
三人のうち、助かるのは一人だけ。
残酷な運命を突きつけられた俺は、恐る恐る、ゆっくりと首を回し、背後に立つ二人の仲間を見やる。
すらりとした妖精の美青年と、小柄で愛らしい魔女っ子。
二人の顔を交互に見比べ、そして悩んだ挙句――。
――お前が乗れよ!
俺がそう促した相手は、果たしてどっちだったか。
自分でもわからねえうちに、視界が暗転。唐突に悪夢は途切れ、目が覚めた。