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15話 旅立ち

 ガラモスの襲撃から今日で1ヶ月が経過していた。大怪我を負った俺もカーラさんの回復魔法とハチの献身的な介護のお陰で全開となっている。


 後で知ったのだが俺が起こした大爆発は首都からでも確認されていた。

 

 丁度、カーラさんが首都で危険な魔獣が現れた事を報告していた事もあって、調査隊まで派遣される事態となる。

 調査隊とカーラさんが村の周辺の変わり果てた姿を見て絶句したそうだ。


「なんじゃ……この惨状は?」

 

 広範囲に広がる焼け野原と100を超える魔獣の死体。兵士達も一言も言葉を発する者は居なかったらしい。更に襲われた村人達からハチと俺が魔獣を倒した事を聞かされ驚いたと言っていた。


 次に村人の中でも比較的傷が軽い者達は、家族を守る為に武器を手に取り外で見張りをしてくれている筈の俺の元へ向かったらしい。けれど俺の姿が見当たらず村中を探していると、俺が村から離れた場所で一人で魔獣と戦っている事を知る。


 応援には駆けつけたいが、魔獣は自分達よりも強い上に数は100匹を越えていた。村人達はどうしようも無く、ただ戦いを見守っていたと言う。


 最後に俺が起こした大爆発の衝撃は200m位離れている村まで届き村人も驚いたらしい。

 今回の事件の詳細はカーラさんが魔王に報告するらしく。俺達の処遇は後で言い渡されると聞いた。

 

「村人を助ける為に動いたんだから、悪いようにしない筈じゃ。なぁに心配するでない。王達がもしお主達に手を上げる様ならワシがお主の味方となってやろう」


 カーラさんはそう言って再び首都へと旅立ち数日で帰ってきた。

 その時に言われたのが魔王との謁見だった。カーラさんが言うにはお礼が言いたいらしい。


 魔王と呼ばれているのでどんな人かと思っていたが、この世界では多種族の人達をまとめている魔族側の長と言う事で悪者ではないようだ。


 日頃世話になっているカーラさんに頼まれたら断る事も出来ずに、俺とハチは魔王の元へと向う事になる。


----------------------------------


「お主があの大爆発を起こした者か? それに側に仕えるは伝説の銀狼……」


「あっはい。祐介といいます。そしてこいつはハチです」


 俺はハチを抱き上げて魔王に挨拶をする。魔王は2mを超える大柄の男性で背中からには黒い翼、お尻から細く長い黒い尻尾が生えていた。俺が知っているキャラにいいは代えると、悪魔の姿に近い。


「この度は大事な民を魔獣から守ってくれたと聞く。礼を言う……何か望みは無いか?」


 低く野太い声だが、優しさも感じる。


「いえ、特に望みはありません。俺が危なかった時にカーラさんに助けて貰っています。今回の事でその恩を返せたら嬉しいくらいですかね」


「全く……自分達の功績が理解して居らぬようだな。お主達が魔獣を倒さななければ、被害はかなり拡大していただろう。カーラの客人と言う事は聞いておるが、それだけで何も与えなければ私の器量が疑われる」


 そう言いながら魔王は大きくため息を付いた。どうやら何か望みを言わないと魔王が困ってしまうようだ。


 俺は手を胸に当てて、自分が何をしたいのかもう一度考えてみる。


 日本へ帰りたい……。無理は承知で一度聞いてみようと決めた。


「実は俺は違う世界から召喚された者ですが、元の世界に戻れますか?」


「やはり、召喚者だったのか。遥か昔から人間共が異世界の住人を呼ぶ事があるとは聞かされておったが……ふむ、元の世界に帰りたいと? 悪いがその願いは私には叶えてやる事は出来ないかもしれん。けれど何か方法はあると思う……。魔術師の者達に調べさせておこう」


 どうやら魔王は俺の正体に察しが付いていたようだった。帰る方法も調べてくれるらしいが、すぐには解らない感じのようだ。

 それならばと俺は次の願いを告げた。


「それじゃ、俺とハチが魔族の国に滞在する許可をくれませんか? 好きな時に何処にでも行ける権利を」


「そんな物でいいのなら、許可しよう。魔族の国は広い。お主は魔族の国を回って何をする気だ?」


 俺はこの世界に来てずっと感じていた。俺はハチに頼りすぎている……このままじゃいけない。

 すぐに帰れないなら仕方ないが、その間中ずっとハチに守られるのは嫌だった。


 俺も強くなりたい


「はい、様々な所を回って色々経験したいと思います。森には魔獣も居ると思うけど、どんな魔獣にも対抗出来る力が欲しい。俺は魔力の無い弱者ですが、それでもきっと強くなってみせます」


-----------------------------------


 それから一週間後、俺はハチと共に北へと向かっていた。魔王から貰った高そうな装備もある。

 北にはガラモスが住んでいた森があり、そこにはきっとガラモスが追い出される様な魔獣が居るはず。

 その魔獣に勝てる程の強さを手に入れるつもりだ。


「ハチ、これからは2人だけだけど一緒に頑張ろうな!!」


「うん。私はずっとゆーすけの側にいるよ」


 人化した状態のハチの手を取り最初は魔族の国の北にある大都市へと向う。


 俺とハチの冒険はまだ始まったばかりだ。

この物語はこれで終わります。読んで頂いた皆様有難うございます。

次の作品もよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] たった16話!と思いつつ楽しく読ませていただきました。作者様の作品を数作品読ませていただきましたが、他にはあまり見ないアイデアがあり、楽しませていただいてます。
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