渡った先に
俺は遠くに鈴女の声が聞こえたような気がした。
目を開くと見たことない所にいた。
周りはレンガを積み立てた造りでできていた。
俺は他に何かないか見ようと周りを見回す。そして、俺の横で俺の手を握って眠っている鈴女が目に入った。
手をほどき体を起こすと遠くから人の話し声が聞こえた。声の聞こえた方に近づく、話がなんとか聞こえるとこまで近づく。しかし、急に話し声が聞こえなくなった。
「目が覚めたんか?」
後ろから声が聞こえた。その方を振り向くとさっきまで誰もいなかった通路に男が立っていた。
「彼女の方は先に起きてあんたが起きたら連れてくるはずやったんよ。どないしたん」
男はいいながら、近づいてくる。
すると、歩いてきた通路の先から鈴女の声が聞こえた。
「すみませーん。寝ちゃいましたー」
走ってこっちに近づいてくる。すると男は、
「ドジやな〜。鈴女ちゃんは。一応これが初仕事なんやから成功させな。」
っと言った。
すると、さっきまで話し声のしていた方から足音が聞こえた。
「おかえりー。ゴン。」
男はそう言って足音のした方に手を振る。
やがて、姿が目に見えてきた。
そこには袋を持った男が歩いてきた。
「飯作ってきた。どうせ、二人についてて食ってないんだろ。ミック。二人の分もある仲良く食えよ」
男はそう言うと袋を俺に渡して戻っていった。
「ほな、戻ろか。せっかくの飯やさかいあんたらも食っとき。ゴンの料理はホンマうまいねん」
ミックと呼ばれた男が言う。鈴女はミックと呼ばれた男についていく。俺も鈴女達についていく。すると、さっきいた部屋に戻ってきた。
ミックと呼ばれた男が言う。
「ここは俺っちの部屋やからゆっくりしてええからな。つかさ早よ飯食おうよ」
そして、俺の手から袋を取って中身を俺から取り出した。
中から出てきたのは、野菜炒め、肉巻きオニギリ、ゆで卵だった。
腹が空いていたらしく、ミックと呼ばれた男は食べ始めた。
「うま〜い。やっぱりゴンは料理上手やな。あんたらも食べ。」
そう言われて鈴女が料理に手を伸ばす。俺も手を伸ばす。
確かに、うまい。しかし、何故?俺達にここまでしてくれる?
そう考え始めたときミックと呼ばれた男が言った。
「あんたらを助けた理由を考えてるんか?鈴女ちゃんの彼氏さん」
まるで、考えることなどまるわかりみたいな感じで聞いてきた。
「あんたらを助けた理由はな、『魔の世渡り』に駒にされかけてた。駒にされた人間は心を無くし命令されなきゃ生きていけなくなる。あんたらを敵にするよりは味方にした方が利口っ中考えがな頭んなかに出てきただけや」
ミックと呼ばれた男は続けて言った。
「ちゅうことで、あんたらにも手伝ってもらうから。二時間後に集まりがあるさかい出てもらうで」
ミックと呼ばれた男はそう言うと立ち上がり部屋の壁を蹴った。
すると、壁が回転し通路が出てきた。
「食べるんはもう終わり。待ってるみたいやからな。二人共。行くよ。あんたら、フウ、リン。」
そう言うと、強い風が吹いた。そして、目の前にリンとリンにそっくりな人がいた。
そして、俺達は隠し通路を進んでいった。