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05:人形師と雪

現代

【人形師/魂の宿った人形/偏った知識】

 私は人形師をしている。

 精巧な人形から、裁縫のみの指人形まで、人形と名のつくものは何でも作る。

 その中で、長い人生を共に歩んできた球体関節人形の「(ゆき)」は、人形師になる前から自分の為だけに作った人形だ。


「ご主人様、お茶が入りましたよ」

「それは茶ではなく茶葉入りの湯呑みだ」

「私に水は大敵ですので、出来る限りの事をしてみました。喜んでいただけましたか?」

「あぁ……うん……」


 湯呑みを傾けて、茶葉をゴリゴリ噛み砕く。

 人形というものは、動力がなければ当然動く事は無い。そして意思などもつはずも無い。

 けれど雪はある日突然動き出した。

 付喪神というには年月だってかなり足りないのに、雪は自らの意思で動いては俺を喜ばせようとしてくれる。どうやって動き出したのか聞けば、俺の想いが魂となり宿ったのだと言うのだ。

 それ程俺にとって雪は想い入れのある大切な作品だったことは否定しない。


「ご主人様、ご褒美を下さい」

「褒美ね、何がいい?」

「キスを下さい」

「ゴホッ……ゲホッ、な、何?」

「愛する者同士はキスをし、抱擁し、セックスするとパソコンで知りました」

「お前いつの間にパソコン使えるようになったの? っていうか、愛する者同士って?」

「ご主人様とわたしです」


 愛してません。愛情はあるけど、違う感情だ。

 いまいち雪は愛情の種類というものが分かっていないような気がする。


「雪、お前にそれはまだ早い」

「どうしてですか? ラップはご用意しましたよ?」

「なんでラップ?」

「キスをするからです」

「だからそれになんでラップが必要なんだよ」

「唇ですので、水分と雑菌があるかと思い、ラップ越しなら大丈夫だと思って」


 何の罰ゲームだよ。思いっきり嫌がられてるパターンのやつじゃないか。雑菌って酷すぎる。


「そういうのは恋人同士でやるの、俺と雪は恋人じゃなく家族。分かる? か、ぞ、く」

「家族は血の繋がりのある者のことですね、私に血液は無いので、ご主人様とは繋がっていません」

「ちょっと待て、なら恋人は血が無くても大丈夫だと思ったわけか」

「ニジゲンモエというジャンルがあるようでしたので」

「お前は二次元枠には入れねーからな?」

「入れないんですか?」

「君は三次元だね、そしてあくまで人間ではなく人形だね」

「ではやはり家族にはなれないのでは?」

「人形やペットに名づけて家族同然に可愛がるとかは普通にあるんじゃないかな?」

「ご主人様は人形師なので人形の私も家族になれるのですね」

「そうだね、そういう事だね」


 後日ラブドールとデートを楽しむ方々の画像を見せられた。お前は俺とどうなりたいわけ?

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