01:手から幸せ
現代
【ほのぼの/恋愛/彼氏彼女】
──ツンツン
めくれたシャツから覗く肌色の真ん中にへこみがある。あの穴に指を入れようか、入れまいか、入れたいけど入れて良いものか。
考えつつ勝手に手は動き、ゆっくり人差し指を立ててめくれたシャツに近づいていく。
「……なに、やってんの?」
「ほひょ!?」
ビクンと大袈裟に肩を揺らして驚く。人差し指を立てた手は、ガッシリと手首を掴まれ止められていた。
「その指で何するつもりだったの?」
「えっ!? いや、これは……まぁ……ね!」
「分かんないし」
分からないと言いながらめくれたシャツを戻す男に、思わず察してるのではと疑問に思う。が、口には出さない。口は災いの元だ。
「えっと、おはよう?」
「うん」
「手、離してくれるかな」
「何で?」
「何でって、掴まれたままだと不便だし」
「手ぇ離すとろくなことしないだろ」
「そんな事ないよ」
「さっき何しようとしてたの? ん?」
「あれは、ほらっシャツを直してあげようと……」
「人差し指立てて?」
「おっ起きないようにチョイチョイっと……」
「ヘソピンポンダッシュを狙ってたろ」
「……はい」
やっぱり気づかれていたかと項垂れる。
視線が下がったのを確認した男が手首から手を離し、そのまま小さな指に自分の指を絡めると、彼女は驚いた様に顔を上げた。
「悪戯防止」
「ふ……ふへへぇ」
幸せそうに笑う彼女を見て、男も小さく笑った。