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06話 「敵の電流がこんなに強いわけがない」

 二発目、三発目と電気を固めた弾丸を絶え間なく放ってくる。

 その弾を全て弾き落としながらタカミへと近づくクリア。


「くそっ!全然作られないぞ!?」


 俺はひたすら屋根の破片に口づけをしていた、はたから見ればかなり恥ずかしい光景だがこれを繰り返すしか俺には選択肢がない。


「そこの後ろの男、ふざけるのもいい加減にするッス!」


 タカミが雷弾をヤタに向けて放つ。咄嗟にクリアも反応するが最早間に合うような距離ではない。


「のわっ!」


 間一髪のところでギリギリかわせたが、吹き飛ばされたヤタは頭から屋根へと着地する羽目となった。


「痛てて…唇切れちゃってるよ…」


 ヤタの唇からは少量の血が流れ出し、屋根の素材へと滴る。

 この瞬間、ヤタの脳裏に"ひらめき"が走った。


(まさか、能力の発動条件って…)




「何よそ見してるッスか!」

「…っ!」


 ヤタに気を取られているクリアに向かい電撃を放つ、それを振り返りざまに剣で弾く。

 戦闘中のよそ見が命取りになることくらいクリアにとっては百も承知のこと。しかしヤタを放っては置けないという感情からか、ヤタに気を取られてしまう。


「待たせたなクリア…」


 二度目、ヤタへと振り返った回数が二回目を迎えた時だった。

 ヤタの右手には"見覚えのある物"が握られていた。


「…やったのね」


 ヤタの安否を確認した後、タカミの放った電気を軽く受け流した。


「…プレゼント」


 かわした弾はそのまま真っすぐとヤタのほうへと向かっていき、ヤタの目の前ではじけ飛んだ。


「何ッ!?」


 空中分解されたわけではない。

 "真っすぐとヤタへと向かった弾"を"真っすぐに撃ち抜いた"のだ、生成した銃と弾丸によって相殺したのである。


「なっ、こんなことが…!」

「『ベレッタ84』…FPSでも使わなかったから"本当の意味で始めまして"だけど、流石の380ACP弾だ。ストレートブローバック機構の中でも上位に入るだけあるぜ…」


 タカミが銃に対して恐怖を覚えたのが目に見えて分かった、様々な恐怖が入り混じっている。

 始めてみた"銃"というものへの恐怖、自分の攻撃の無力さへの恐怖。そして…


『絶対に勝ち目がないこと』への恐怖!


「さぁて、待たせたなぁ…っ!」


 唯一の逃げ道だった背後も追いついたゼルによって塞がれ、八方ふさがりとなってしまった。

 恐怖というのは時に人を血迷わせるもの、それは能力者とて例外ではない。


「しょうがないッスねぇ…これは使いたくなかったんすけど…」


 タカミは自分の周りに電気を生成し、そのまま空中へと固定した。


「こぉんなことも出来るんスよぉ…ハハハ…」


 タカミは固定した電気を自らの前へと勢いよく集めた。


「全員、屋根から降りろっ!」


 クリアの声に脳は反応しなくとも身体が反応する、俺とゼルはその場から急いで後ろへと飛んだ。


「消えろォ!!」


 電気の集まった場所から一気に光が広がる、真っ暗だった町は一瞬にして光に包まれた。

 光と共に周辺の民家は吹き飛び、辺りには高圧電流が分散しされた!


(なんて無茶苦茶な、あの電流に当たったら確実に死ぬ!)


 あたりを見回すが隠れられるような場所はどこにもない、それどころか俺の隣にはクリアがいる。

 クリアだけは死なせたくない、何とかして守らなくちゃ…!


「そのまま、動くなよ…」


 俺はクリアを覆うように抱きしめた、方法としてはこれしかない。

 近くに壁にするものが無いのなら俺が壁になる、クリアを命がけで守るしかないんだ。


「…っ!ヤタ!」


 振り向くと、目に見えるほどの大きさの電気の塊が俺のほうへと飛んでくるのが見えた。

 これは死んだ…確実に。


「まぁ…こんな美少女に出会えたんだ、こんな終わり方も悪くないよな」


 視界が光に包まれる、最後に聞こえた言葉。


『そのまま、動くなよ』




 ◆




「おぉ、ヤタよ!死んでしまうとは情けない、しかも呪われておるではないか!」


 …たく、何が「情けない」だ。

 元はといえばこのクソジジイの命令のせいで、こんな命がけのクエストをこなしてくる羽目になったんじゃないか。


「しかも、本当の意味で呪われているしな」


 俺の隣にはボロボロになりながらもシャキシャキと笑顔を振りまくタカミの姿があった、しかも俺たちと同じ特殊部隊の制服つきだ。


「まぁ、あとでゼルには何かお礼をしないとな」



 あの時、電流を喰らう間際。

 最後の言葉だと思って聞こえたあの一言は、ゼルが発した言葉だった。


「ヤタ!お前こそ、そのまま動くなよ!」


 ゼルは俺たち二人を抱えると、力を込めて地面を殴った!


 ゼルの全身全霊を込めたパンチは地面を砕き、土をえぐった。


「うおおおおっ!!」


 電流が到達する寸前、ゼルによって作られた簡易(インスタント)地下シェルターに避難出来たのだ。

 え?タカミはどうして生きているのかって、それはだな…


 本人曰く「自分の技で死ぬほど、阿呆なことは無いッスよ」だそうだ、恐らく自分の場所だけ制御して守っていたか何かだろう。



 そして現在に至る。


「タカミ、サボったら承知しないからな」

「わ、わかってるッスよ~」


 現在、タカミは俺たちの部隊に所属している。

 町から死人は出ずに済んだものの、家などの破壊や慰謝料を含めて多額の請求が来たのだ。

 そこでクソジジイ、もとい王は俺たちの部隊でタカミを働かせようと考えたそうだ。


「といっても、これが意外と役立っている」


 現代から持ち込んだテレビやゲーム機などの電源として、タカミの固定電気球を使用させてもらっているというわけだ。


「おっ!この本面白そうッスね、あ!これも!」


 どうやらタカミと表裏一体というわけでもなく、電気は放っておいてもそのまま固定されるようだ。

 これは無限資源として凄いことなのでは…?


「おいゼノ!この相羽 七って娘可愛いな、ドストライクだぜ!」

「…ロリコンというやつだな」

「んだとぉ!?」


 何はともあれ、俺達「特殊部隊班」はこの場所で仲良くやっていけそうである。


「ワシも、借りていっていいかのう?」

「帰れ」


 王は除いて、だけどな。

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