第一花.百合とはなんぞや?
少女A「ねぇ、Bちゃん?」
私は宿題から顔を上げずに真正面で同じように宿題をしているBちゃんに問いかける。
少女B「んあー、なに?」彼女はこちらに顔を向けて答える。
少女A「百合って何か知ってる?」彼女が返答したのを聞き勉強とは何の関係もない質問を投げかける。
少女B「え?百合?花の百合の事?ユリ目ユリ科ユリ属の多年草?食用にも薬用にもなるあの?」頭の上にはてなマーク、もといクエスチョンマークを沢山上げて答える。
少女A「違う…と思う、多分。てか詳しいね?というか食べれるんだ…。」正直驚いてしまう、何故そんな事知ってるのだろう。
少女B「え?だってウチ花屋だし?」成る程と思った。確かにBちゃんの家は花屋だった。
少女B「でも違うんだ?じゃあ何だろ?むむむ…。」鼻の上にシャーペンを乗せてうんうん唸っている。そんな姿が可愛いと思う。まぁ…ナイショだけど。
少女A「私が聞いちゃったんだけど。勉強に戻らない?」そう、私たちは勉強を、宿題をしていたのだ。宿題中に聞いてしまった私が悪いのだけど。
少女B「でも気になるし?んーんー。」まぁ確かに聞いたのは私なので私も気になる。でも学生の本分は勉強だしそれを蔑ろには出来ない…。
少女A「じゃあ…調べて見る?」少女B「ふぇ?」ふぇ?なんて間の抜けた声を彼女は出す。ちょっと可愛いと思ったのはナイショだけど。
少女A「いやほらネットとかで?」そう最初からネットで調べれば良かったのだ。だけどBちゃんに聞いたのはそうしたかったから…。最初に友達に聞きたかったから。…多分それだけ。
少女B「そっか、ネットか‼」その手があったかーなんて悔しがっているBちゃん。
少女B「じゃあ早速調べよっと♪あっ、ねぇA?」上機嫌に赤いケースに入ったスマホを取り出す。デコったりはしていないシンプルなケース。Bちゃん曰くごちゃごちゃしたのは嫌いだそうだ。
少女A「なに?Bちゃん?」そのケースがBちゃんらしくて私は好きだなー、なんて考えながら返事をする。
少女B「なんで百合の事聞いてきたん?」あぁ、その事か。まぁ、聞くよね。対して重要でもないけどね。
少女A「えっとCちゃんとDちゃんが話しててね?気になったんだ。二人とも教えてくれなくて…。」なんか慌てて変な感じだったけど何だったんだろう?
少女B「へー、CとDが?なんで教えてくれなかったんだろ?」痛いところを突いてくる。友達二人は知ってるのに自分は知らない、それに教えてくれない。その事に対して酷い疎外感を感じた。
少女B「それっていつの話?あたし聞いてないんだけど?」単純に疑問に思っただけなのだろうか?それとも私のように疎外感をBちゃんも感じたのだろうか?
少女A「え?Bちゃんが先生に呼ばれてる時だけど?ほら昼休みに進路の事で…。」
少女B「うぐっ…嫌な事思い出させないでよぉ…。」机に突っ伏しながら嫌そうな顔を浮かべる。
少女A「ちゃんと大切な事だよ?」そう大切。大切な事…。私もBちゃんやCちゃん、Dちゃんと同じ大学に通いたいとかじゃなくて真剣に考えなきゃいけないんだよね。
少女B「わかってるけどさぁ…あたしはA達と一緒にいたいって以外ないんだよねぇー?おっと検索結果でたよー!」Bちゃんも同じこと考えていて嬉しいなんて思っていたら。通信制限になっていたBちゃんのスマホがやっと検索できたようだ。
少女B「もう通信制限いやだよぉ…一つの事調べるのにも時間かかるしさぁ?」なんて不満を漏らしているけど自業自得ではある。
少女A「通信制限ならないようにすれば良いんじゃないかなぁ?それでなんて書いてあるの?」
少女B「それが出来たらやってるよー。えっと、どれどれ?」苦笑しながらネットの誰でも書き換え可能なフリー百科事典の画面を見る。
少女B「えっと百合は…え?」この検索が私たちの運命を、距離を、関係を変えるとはこの時はまだ知る由もなかった。