第一章 強く強く強く張った糸が切れた
時がたち。
再び、あの大会。
何度となく、コースを走った。
晴れた日も走った。
雨の日も走った。
夜も走った。
仲間とも走った。
一人でも走った。
その日が近づいてきた。
日々、緊張が増してきて。
大会当日。
幾つもの想いと応援メッセージをバックパックにつめて、スタート。
・・・
強く強く強く張り詰めていたものが切れてしまった。
そうなると、もはやどうすることもできない。
どうにもならない。
リタイア。
でも「悔しさ」がなかった。
それでは、戦えない。
こんな結末になるとは、想像もしていなかった。
そして、気持ちの切れたあとの感覚がこうであることもはじめて知った。
強く強く強く糸を張りすぎたのかな。
その強く強く強く張った糸は、いとも簡単に切れてしまった。
その後は、主を失った凧のように、まさに迷走。
何度も走り、歩いた山で。
緊張感も集中力も失い。
ただ、歩いているだけなのに。
何度も何度もコケてしまった。
バスに揺られて会場に戻り。
ひとりで会場をあとにした。
数日が過ぎた。
遠い日の出来事だったかのような気がした。
夢の中での出来事だったかのような気さえした。