桃太郎が貝殻ビキニをきてとび跳ねていました
「イルカさん、サラマットさん!」
「おやおや、浦島さん」
「……」
イルカがにっこりと微笑む。揺れる髪は、まるで流れる水のようだ。
サラマットは得体の知れないものをみるような目をして、言葉を紡げずにいる。
浦島はぷりんハットを掲げてみせた。
「どうっすか?斬新なデザイン、トレンド間違いなしっす」
「おやおや、おいしそうですね」
ぷりんハットの感想を告げながら、視線は浦島の首から下に釘付けである。
浦島はにっと犬歯を覗かせると、胸の貝を手のひらでぽんぽんと叩いた。
「クールビズっす!」
「機能性重視ですか」
「デザインも抜け目ないっすけどね!」
「クールビズか…そうか…」と声がして、サンが現れた。
苦笑する彼女の隣で、イチがおもちゃを与えられた子供のように目を輝かせている。
「浦島、おしゃれさんだなあ。老若男女問わず、君に釘付けだよ」
「イチさん、褒めすぎっす!」
「いやいや、男のロマンを押さえたデザインは称賛に値する。サン、着てみない?」
「アホ」
「残念」
へらへらと笑うイチは、大して残念そうに見えない。
サンが呆れてため息をついた。
「あはは、イチさん。これは男が着るから味があるんすよ!」
浦島の言葉に、サラマットが身震いする。
「イルカさん、サラマットさん。お揃いでどうっすか?」
「僕には着こなせませんから」
「…ガリヴァーノンが優しくみえる」
「そんな難しいファッションじゃないっすよ」
浦島が指を鳴らすと、彼の手に貝殻がふたつ現れる。
「試しに…」
浦島と目があって、サラマットがビクッと後退りする。
「それにしても…浦島、それでパトロールしたら注目の的だね」
「あはは、イチさん。女の子が集まってきて、仕事にならないかもしれないっすよ?」
「ああ、きっと連行されちゃうなあ」
「お持ち帰りっすか!それは困るっす」
頭を抱える浦島に、イチがにんまりと笑う。
会話が噛み合っているようで、ちぐはぐだ。
「パトロール、行ってきたら?」
「おいっ」
「…それは」
「おやおや」
サンとサラマットが凍りつき、イルカが困ったように笑う。
浦島が目を輝かせて踏み出すと、サンとサラマットがすごい剣幕で浦島の肩を掴んだ。