伊上機久子十七歳です!
本作はフィクションです。某声優とは一切関係ありません。無いったら無いの。
前に座ったオバはんが自己紹介する。
「伊上奇久子十七歳です!」
おいおい。
とあるカラオケ店。その一室で某大学研究室主催の合コンが開かれていた。内訳は研究室所属の女の子たち六人とそこと取引のある会社の男たち六人。
俺は可愛くて頭のいい娘と知り合えると聞き、無理言って潜り込ませてもらった。なのにいきなりの電波発言。寒い。暖房が効いているはずの室内の気温が一気に三度は下がった。
十七歳。大学入学したての初々しい女の子なら、まあ許せる。ハタチ過ぎてても可愛ければオッケー。
しかしこの女はシワが目立ち、肌のつやが十代とは言い難い。濃い化粧でも隠しきれないほどだ。どう見たって三十代。いや、それでもサバ読みすぎかもしれない。アラサーではなくアラフォーだろう。「十七歳の娘がいます」と言われたら「アラソー」と納得しそうだ。
……つまらないことを考えてしまった。こいつのせいだ。
他の女の子たちは愛想笑いを浮かべて戸惑っているように見える。
誰もツッコまないのならば、目立つために俺がツッコむべきだろうか。
しかし周りは男も含めて今日初めて会うヤツばかり。下手にツッコんだら空気読めないヤツと思われかねない。それに他の女の子たちは若くてカワイイのに、なぜこいつがいる? もしかしたらリーダーなのでは? だとすれば機嫌を損ねるのは得策ではない。
もう少し静観しよう。
伊上は続ける。
「よく年齢を間違われます」
そりゃそうだろうよ。
「女神のようだって言われます」
そりゃお世辞だろうよ。
「前世はマンボウです」
確かめようがねえよ。
「特技は家事全般です。スタンドが使えます」
家事はいいけどスタンドってなんだよ。
「趣味は正義のために戦うことです」
趣味……なのか?
延々と続き、皆の愛想笑いが苦笑いへと変化する。
いいかげんにしろ、オバはん。聞いていて痛々しい。
場の空気がシラケてきた。このままだと女の子を落とすのが難しくなりかねない。
周りの連中の様子も「誰かこのオバはん止めろ」という雰囲気だ。機は熟したか。
「なかなか面白い自己紹介だよね。でも、もういいでしょ」
努めてソフトな笑顔を装い、俺は伊上の演説を止めた。
「あら、まだまだありますよ? おっぱいが大好きなこととか」
そう言って伊上は隣の女の子の胸を揉み出す。「いやん、えっちぃ」と喘ぐ女の子。うらやま――いやいや違う!
「ちょっと、彼女嫌がっているじゃん。やめなよ。あと、つまんない嘘続けられても困るんだよね」
俺が言った途端、女の子たちの顔色が強張り、場が静まる。
あれ? もしかして俺やっちゃった?
「そんな……ひどい!」
伊上は泣きながら部屋を出て行く。
ありゃりゃ、本当のこと言っただけなのに。
「あー、泣かしちゃった」「一回泣くと面倒なんだよね」「責任とってよ」
女の子たちからの非難轟々。しぶしぶ伊上を追っかける。
伊上はトイレの前に立っていた。俺の姿に気づき口を開く。
「ごめんなさい。取り乱してしまって」
「いや」
わりと落ち着いているようだ。泣いてはいるが涙は出ていないところを見ると嘘泣きってやつかも。
「嘘だ、なんて言われてショックでした。けど疑われるのも無理はないですよね。初めてお会いするのですもの」
「いや」
「信じていただけないかもしれませんが本当のことを言います。わたし……アンドロイドなんです!」
俺は驚愕した。まさか。
「あの後で言おうと……あうっ!」
みなまで言わせなかった。持っていたスタンガンで伊上を昏倒させる。とっさの判断だったが効いたらしい。
俺がこの合コンに参加した真の理由は研究室の内部情報を得るため。セキュリティが堅くて外部から情報を得るのは難しく、女の子を口説いて盗ませるつもりだった。
しかし、まさか本物が出てくるとは。博士のアンドロイド研究はここまで進んでいたのか。合コンに出てきたのは実用試験だったのだろうか。言っていることはひどかったが。
そう言えば博士が研究を始めたのは十七年前だったな。最初はマンボウを造ったとか……。
まあ、後はこいつを連れて帰るだけ――
『システムダウン。敵と認識。排除を最優先事項とします。第二人格『ヰノ』スタンド』
むくりと伊上が立ち上がる。
心なしか顔のシワがより深くなった気がする。
あの程度ではぬるかったか。ならばもう一度。
そう思ったが、
「誰がアラフォーだ、ゴルァ!」
鬼気迫る顔で接近され、いきなり額を鷲掴みされる。すごい握力で頭が物理的に割られそうだ。
「博士が熟女好きなのがいけねえんだよ!」
お、俺に言われても。
壁に叩きつけられる。全身を強打した。
逃げ出そうとするが、蛇のような目に睨まれて動けない。あれ? 女神って、めがみ……目が、巳?
わかりづれえ上、つまんねえ!
「必殺ブラ縛り!」
ブラ紐が伸びてきて全身を絡め取られる。おっぱいが好きで、あと家事が得意だっけ。俺、料理されるのかな……。
朦朧とした意識の中で俺は思った。
『正直にツッコんだら負けなんだ……』
唐突で無茶な後半を改稿する予定……でした。