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第3話

「・・・・で?」


岩のくぼみに本を立て掛けるように置いた私は、その岩の前になぜか正座をしてすわっていた。


「うむ。まず、私は元は人間だ」


本はいきなり本題に入った。あまりにいきなりだったので、私も思わず聞き逃すところだった。


「・・・・・で?」


「うむ。お前には私にかかった魔法を解いてもらいたい」


なにこれ。お約束すぎじゃないかい?と思いつつも私はとりあえず、本に先を進める。


「・・・・・で?」


「・・・う、うむ。魔法を解くには魔法をかけた魔女を探し出して、そいつに頼まなければならない」


ほうほう。よくある話だ。

思わず、深くうなづいてしまった。


「で?」


「・・・・・・・それをお主に頼みたい」


うんうん。やっぱりね。うん。そんな気がしたけどさ。


「・・・・・で!?」


「・・・いや、だから・・・。お前に私の魔法を解いてもらう手伝いをしてほしいのだが・・・」


いやいや、それは十分に分かったって。

私が聞きたいのはそこじゃなくて・・・・


「・・・・・それを私がして、何の得になるわけ?」


うん。そんなことしたからって、私は元の世界にもどれるのか?それとも、なにか?よくある物語のように、実は王子様で結婚して幸せになりました。とかいうのか!?


「そ、それは・・・・・」


言葉に詰まる本に、私は限界がきた。


「あのさぁ、私に得にならない話に乗るとでも思ってんの?そりゃ、私、ファンタジー大好きさ!!自他共に認めるファンタジー好きさ!!だが、しかし!!実際体験するのと、本を読むのは違うんですよ!!ていうか、元の世界に返せ!!このやろう!!」


思わず近場にあった岩を掴んで本めがけて投げようかと思ったところを、本が慌てて制止させる。


「ま、まて!!まってくれ!!・・・ある!!あるぞ!!お前に得になる事が!だから、と、とりあえず、その岩をおいてくれ!!」


本に手が生えていたら、両手を思い切り振っていたのだろう。

だが、いかんせん、本に手は生えない。

言葉から必死さが伝わってきたので、とりあえず、岩を傍に捨てた。

・・・・どすーん・・・・。

ん。思ったよりも重量があったらしい。

これが火事場の馬鹿力というものだったのだろうか・・・・・。

それを見た本が、(見えているのかどうかはなぞだが、私が岩を持ち上げた事がわかるということはみえているのだろう)ホッと溜息をついたのが聞こえた。


「・・・それで?私に得になる事って何よ」


もう、正座なんてしてやるもんか。

腕組んで仁王立ちで十分だ!


「あ、あぁ。ごほんっ。・・・・その魔法使いはこの世界一の魔法を操る人物だ。もしかしたら、そいつに頼めば元の世界に戻れるかもしれん」


どうだ!とばかりに威張って言う本にライターがあれば燃やせたのに。と思う。

(もうすでに、あの本は焼却処分をしてもいいほど私の中で価値が下がっていた)


「まず、ひとつ。『もしかしたら』と言う事はそれは確証のある事ではないと?」


本に口を挟む隙を与えず、私は話続ける。


「ふたつ。アンタが元の世界に帰せないと言う事は、私をここに呼んだ人物はアンタじゃないのか?」


先程から引っ掛かっていた。


「そして・・・・三つめ。・・・・なぜ、私がこんなところに来なければならなかったのか?」


なによりもこれだ。

せっかくの誕生日になぜ、私はこんなわけのわからない所にいるのだろう。


「以上の3つの問いに、私が納得できる答えが返ってくれば、アンタのいう魔女とやらを探すのを手伝ってあげる」


そう。納得も出来ないのに、こんなところで意味のわからない冒険などできるもんか!!


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