第2話
暗闇から急に明るい光が現われたものだから、あまりに眩しくて私は目を瞑った。
しばらくして、目を開けると・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
本当に吃驚した時って、声が出ないんですね。
目の前には、山、緑、緑、山、森・・・・・。
えぇ、360度ぐるりと回ってみましたが、そんな感じでしたよ。
「・・・・お、おちつけー・・・。おちつけー・・・。おち・・・・・・・ついてられるかっ!!!!!」
胸に抱え込んでいた本をバシッと地面にたたきつけてやりました。
「どこだよ!!ここ!!」
あらん限りの力を振り絞って叫びました。
もちろん、答えが返ってくるはずもなく・・・・・・・
「ヴィーナス大陸だが」
帰ってきたよ!!!!?
返事返ってきましたけどぉ!?
急いで、周り360度上下左右を見渡すが、やはり誰もいない。
あるのは、山、緑、森、山、緑・・・・。
「ふぅ・・・・、空耳かぁ・・・・」
出てもない汗をぬぐってみる。
「・・・・空に耳などないぞ?」
!!!?
再び聞こえた声に、きょろきょろと周りを見渡すがやはり、誰もいない。
「し、信じたくないが・・・おば、おば、おばけ・・・・・」
「おばおばおばけ、とはなんだ?」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
走って逃げました。
その際、本を拾う事を忘れずに!!
走りにはしって、森らしきところにくると、肩で息をしつつも後ろを振り返ってみた。
「っはぁ!はぁ…。よし!誰もいない!!」
よいしょっと、木の根元に腰かけると、今度こそ本当に汗をぬぐう。
「…はぁ。日頃の運動不足が…」
先程までいた場所は、ここからでも見えるのに既に肩で息をしてる上、足がガクガクする。
「…はは、膝が笑ってるよ…」
震える膝を、両手で擦る。
「ほう。お前の国では膝が笑うのか。…奇妙な国だな」
「んなわけないでしょ!物の例えっていうやつよ!」
思わずつっこんでしまったが・・・・。
そぉっと後ろを振り向く。
まさかと思うが・・・・・
「誰!?」
「・・・・・・・」
誰もいなかった。
「ひぃいいいいいいい。一体誰なのよ!!もう!!」
涙目になりながら叫ぶと、ため息が聞こえた。
「はぁ・・・。こんなに近くにいるのに気づいてもらえないのは久しぶりだ」
再び聞こえた声は、確かに近くから声がした。
「どこにいるの!?オバケでないなら出てきなさいよ!!」
もう、半分自分で何を言っているのかわからない。
こういうのをキレるというのだろうか・・・・。
なんて考え初めていた。
「ここだ。ここ」
声の聞こえる方を見ると、先程まで私の膝の上にあったはずの本が地面に落ちていた。
「いけない。立ち上がった時に落としちゃったのね。私のバイブル!!」
そう言いながら本を拾い上げると土埃を払う様に本を軽く叩く。
「・・・やっと気づいたか」
聞こえた声に視線をやると、本が喋ってる!?
「ひっ!?」
思わず拾った本を投げた。
「・・・・・なんて扱いだ全く」
地面に投げつけられた本は、開かれた状態で地面に落ちた。
「あぁ!!私の本!!・・・・でも!!」
地面にキスをしている状態の本を拾いたい!!
だけど、喋っている本に触りたくない!!
相反する心の葛藤に私は手をのばしたりひっこめたりする。
「えぇい!!女は度胸!!」
どうにも本がその状態なのを我慢できなかった私は、意味のわからない言葉を発しながら本を拾った。
「・・・・度胸と言う割には、汚いものでも持つ様なその拾い方はいかがなものなんだ?」
ぐぅの音もでない至極まっとうな答えに思わず本を睨む。
「う、うるさい!!本は喋るな!!」
大事な本だが、自分から遠ざけるように親指と人さし指でつまんだ状態で、伸ばしうる限りの腕を伸ばした。
そんな私が見えるのか、はぁっと溜息を本につかれた。
「・・・・まぁ、とにかくそんな状態じゃ話も出来ないから、そこの岩にでも置いてくれ」
そう言われると、素直に私はそれに従った。
・・・・だって、大事な本でも喋る本は持っていたくなかったんだもん・・・・・。