表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/100

第7話

屯所への帰り道-


総司は両腕を組んで、ゆっくりとした歩調で歩いている。その後ろを中條がついて歩いていた。


総司「中條君は好きな人がいますか?」

中條「!?…いえ…」

総司「そう…」


しばらく二人は黙って歩いた。


総司「じゃぁ、あなたも島原組なのですね。」

中條「…島原組…?」

総司「?違うの?」


総司は立ち止まって、中條を見た。

中條は意味もわからず首を振った。


総司「そうですか…。すまなかった。」


総司はそう言って、再び前を見て歩き出した。


総司「人を斬った後は…女性を抱かなくちゃ、神経が耐えられないそうですよ。」

中條「!?」

総司「好きな人がいれば、その人を抱けるが、いない人は島原へ行って、遊女を抱きに行くそうです。」

中條「…それが、島原組…ですか。」

総司「そう…」


中條は下向き加減に尋ねた。


中條「…先生も行かれるのですか?」

総司「島原へ?」


総司は首を振った。


総司「私は大事な人がいるから…」

中條「…じゃぁ、その方を抱きに?」

総司「いや…そんなこと…できませんよ。」


不躾な質問をしていることに中條は気づいていない。が、総司も悪びれることなく答えていた。


総司「君は…どうやって気持ちを切り替えているんですか?」

中條「…別に何も…」

総司「そう…」


中條には、女性を抱けば気持ちを切り替えられる…という考え方自体が理解できなかった。


中條「先生は…どうやって気持ちを切り替えておられるのですか?」

総司「わからない…その方法があれば、教えてもらおうと思ったのですが。…女性を抱く以外にね。」

中條「……」


二人は程なく、屯所へとついた。


……


新選組屯所 中庭-


中條は、汚れた隊服を洗おうと井戸前まで行った。見ると、一人の男が汚れ物を洗っている。

隊士ではない、この屯所の用人らしかった。


中條はその男の傍にいって、桶を置いた。男は中條を見て、人懐こい笑顔を見せた。

中條は時々、賄いや用人たちの仕事を手伝ったりしていたので、お互い顔をよく知っていたのである。


用人「中條はん、お疲れさんどす」

中條「そちらこそ…それ、どなたの隊服ですか?」

用人「沖田はんのどす。助勤以上の方のはわしらが洗うことになってますさかい。」

中條「…それ、僕が洗います。」

用人「!?…いや、中條はん、そんなことまでされたら、わしらが怒られますよって…」

中條「僕が代わりに怒られるから。…沖田先生は僕がいる隊の組長だし…」


用人は少し困っていたが、中條の説得に負け、その場を立ち去っていった。

中條は洗いさしの隊服を持ち上げてみた。そして顔をしかめた。


中條「これじゃ、生地がすぐに痛んでしまう…」


そう呟いて、続きを洗い始めた。が、やがてはっとして手を止めた。

桶に血が浮いていないのである。

中條は自分の返り血を浴びた隊服を見た。

そして、もう一度、沖田の隊服を見た。


中條(…先生は…返り血を浴びてないんだ…)


返り血を浴びるような斬り方では、まだまだだと言われていた。そして刀にも血は残らないという。

中條はまだ自分の力に頼っているような斬り方をしている。そのため、相手の骨や肉が裂けるとともに、かなりの返り血を浴びてしまうのである。

しかし、近藤達の流派は、突きを主体とした流派だと聞いた。突きは返り血を浴びやすい。

中條は、実戦での総司の構え方を頭に思い浮かべた。いつも刀を前に突き出すようにして、平青眼に構える。


中條(…突きを入れても返り血を浴びない…?)


わからなかった。どうしたら、返り血を浴びずにいられるのか。


中條(…やっぱり先生は…鬼なのかもしれない…)


何かぞっとした。…が、やがて我に帰って、再び洗い始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ