表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/100

第57話

総司の部屋-


珍しいことに、近藤が部屋を訪れていた。

先日、不逞浪士集団への襲撃に手間取り、その後、総司の具合があまりよくないということを土方から聞いたからであった。

総司は、礼庵に無理やりに飲まされた薬のおかげで熱は下がったのだが、今は、近藤に無理やりに床の中で寝かされていた。


総司「近藤先生…。私は本当にもう大丈夫なんです。もう心配いりませんから…」


総司は床の中から懇願するように、自分を睨みつけるようにして傍に座っている近藤に言うのだが、近藤は頑として首を振る。


近藤「私の目をごまかそうとしても駄目だ。お前が本当に寝入るまで、ちゃんとここにいるからな。」


そう言って腕を組み、総司を見つめている。

総司は、近藤にはどうしても逆らえなかった。まるで子どものようになってしまうのである。


総司「…でも…先生はお忙しいのに…。」


総司がそう言うと、近藤は大きく首を振った。


近藤「そんなことはないぞ。気にすることはない。さぁ、まずは目をつぶるんだ。」


総司は言われるまま、目をつぶって見せる。


近藤「そうだなぁ…どうしようかなぁ…。」

総司「?…何がです?」

近藤「こら!目をあけてはいかん!」

総司「…はい…」


総司はあわてて目を閉じた。


近藤「おまえのお姉さんは、どんな子守唄が得意だったのかなぁ。」


それを聞いた総司は、思わず目をあけ半身をおこした。


総司「子守唄だなんて!…よしてください。近藤先生に歌ってもらったら余計に眠れなくなります!」

近藤「なんだ?私の唄ではねられんというのか?」


近藤が少し不機嫌になった。


総司「違うんです!…そんな…近藤先生に唄まで唄わせたら…私は…」

近藤「…?…何だ?」

総司「…試衛館でのことを思い出して…泣きそうになります。」

近藤「…!!…」


総司の少し真面目な表情を近藤は驚いて見た。


近藤「…そんなに…辛い思い出かね。」

総司「いえ…そうではないんですが…何故か…ほら・・こんな風に目が熱くなってしまうんですよ。」


近藤は総司の赤くなった目を見て、自分も目頭を熱くした。

近藤は言葉を発することができずに黙り込んでいた。そして、しばらくして、呟くように言った。


近藤「総司…。おまえはまだ子どもだったのに、お姉さんから離れて…辛い仕事をさせられて…。それでもよくがんばったなぁ・・。」

総司「先生!…私はそんなつもりで…」


近藤はまぁまぁと言って、半身をあげた総司の体をおさえた。


近藤「…よく…ついてきてくれたな…総司。…おまえはこれからもずっとついてきて欲しい。…だから、自分の体をどうか大事にしてくれよ。」

総司「先生…」


総司は胸がつまり何も言えなくなった。


近藤「さぁ、寝ろ。…子守唄は唄わんから。」


その言葉に総司は泣き笑いのような表情になったが、やがて言われるまま目を閉じた。

近藤がまだ赤い目のままで、総司を見ている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ