第23話
屯所への戻り道-
総司は遠く前を歩いている、山野と中條に気づいた。
総司「…あの二人は隊服を着ていなくても、目立つな…」
総司はそう苦笑して呟きながら、駆け寄った。
高下駄の音に、山野と中條が振り返った。
「あっ!先生!」
二人が恐縮して、総司に頭を下げる。
…下げてから、山野は、はっとした。
山野「先生!お一人で出られてたんですかっ!?」
総司「ん。まぁね。」
山野「駄目じゃないですか!副長から…」
総司「わかったわかった」
総司は笑いながら、先に歩き出した。
山野は呆れ顔で総司について歩いた。中條も続く。
山野「先生、実は中條さんが先ほど、浪人の集団に襲われたのです。」
総司「!…え?」
総司は驚いて立ち止まり、振り返った。
中條はあわてた。
中條「あの…山野さんに助けていただいて、たいしたことはなかったんです…」
総司は険しい表情のまま、中條に尋ねた。
総司「浪人達に言葉のなまりとかあったかい?」
中條「え?いえ…。…生活がかかっている…とか言っていましたが…」
総司「…賞金稼ぎか…」
総司は苦々しく呟き、再び振り返って歩き出した。
二人が続く。
山野「中條さんも、独りで歩いていて襲われたんです。先生もどうか一人でお歩きになるのはやめてください。」
総司「ん…わかった。」
総司が前を向いたまま、抑揚のない声で答えた。山野は、はっとした。
山野「…すいません。…私…つい、おこがましいことを…」
総司「あ、いや…すまない。そういうつもりじゃなかったんだ。」
総司があわてて振り返り、微笑んだ。
総司「土方さんに報告しなきゃ…とかいろいろ考えていたものだから…」
山野「…すいません…」
総司「いつも、心配をかけてすまないね。」
総司の言葉に山野が恐縮した。
総司「中條君もこれからは、必ず山野君と一緒に行動しなさい。また集団で襲われたら、たとえ君が強くても手におえないだろうから。」
中條「僕は…そんなに強くありません…。」
うつむき加減に言う中條に総司はくすっと笑った。
総司「じゃぁ、一人で歩かないことだよ。」
中條「あ…」
中條は、顔を赤らめて「はい」と答えた。
山野「先生はどうされるのですか?」
総司「そうだなぁ…」
総司は腕を組んで首を傾げた。そして、微笑みながら振り返った。
総司「私も山野君についていくことにしよう。」
山野「わかりました…えっ!?」
山野はあわてた。
山野「つ、ついていくって…違いますよ!ついていくのは私の方です!」
総司は大笑いして、歩いていく。
無愛想な中條も、山野のあわてぶりに、ついくすっと笑ってしまった。




