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第10話

京の町中 夜-


一番隊の巡察中である。夜は人気がなく、静かであった。

だが、何かじっとりとまとわりつくような湿気がある。

皆、首のあたりににじむ汗をぬぐったり、手で顔を扇いだりしながら歩いているが、総司だけは涼しい顔をしていた。


総司「夜は涼しくていいな。今夜は人通りも少ないようだし。」


総司がにこにことしてそう言うと、後ろにいた伍長が「はぁ」と同意とも言えない返事をした。

総司はくすくすと笑って、伍長に振り返った。


総司「何でも気の持ちようですよ。…涼しいなと思っていたら涼しくなります。」


そう言ってから前を向き、すぐ前でちょうちんを持って歩いている新人隊士に「ねぇ」と同意を求めた。

新人隊士はいきなり声をかけられたので、緊張して「はいっ!」と答えた。

総司は笑った。


総司「君ももっと力を抜いて。…いざという時に、力が出なくなりますよ。」


総司が新人隊士にそう言うと、新人隊士は一層改まって「はい!」と姿勢を正した。


……


やがて細い入り組んだ道の前へと進んだ。総司は「待て」と言い、隊士達に振り返った。


総司「ここからは、二手に分かれます。」


総司は、巡察前に打ち合わせたとおりに分隊した。


総司「じゃぁ、後で。何かあったら呼子を吹いてください。」


総司は伍長にそう言うと、何人かの隊士を連れて、前の小路へと歩いていった。

伍長は頭を下げると、別の道へと入っていった。


……


総司の隊は小路の中を進んだ。何事もなく進んでいき、やがて大きな通りが前方に見えた。

しかし一番危ないのは、小路から出る時なのである。

総司は通りに出る前に隊を止めた。すぐに死番役が前に進み出て、通りを確認した。

大丈夫であることを確認すると、総司を先頭に全員が通りへ出た。

心地よい風が隊を涼ませた。

ふと全員が息をついたときである。呼子が鳴ったのが遠くに聞こえた。

とたんに、総司の顔が険しくなった。


総司「!!…行きましょう!」


総司が先頭に立って駆け出した。


……


総司達がついたとき、まだ斬りあいの真っ最中だった。

総司たちはその中へとなだれ込んだ。


総司「!!」


総司は近くの軒下で倒れている隊士を見てぎくりとした表情になった。

隊を分ける前まで、自分の前を歩いていた新人隊士だった。持っていた提灯が傍に転がって、まだ火をつけていた。

総司はその隊士の傍に駆け寄った。見ると、苦しげに息をしている。


総司「よかった。息がある。」


総司がほっとしてそう呟くと、ふと後ろを見渡した。全員が斬り合いの真っ只中である。


総司(…このままじゃ、この人が死んでしまう…)


そう思ったとき、一人の隊士が総司の近くに駆け込んできた。

中條であった。


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