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第1話

新選組屯所-


慶応元年4月下旬-


総司は、土方の部屋にいる。

新人をつのるため江戸に行っていた土方が帰ってきたところである。

総司は、土方が近藤への報告を終えて、部屋へ戻ってくるのを待っていた。


やがて土方が部屋へ戻ってきた。そして、きちんと正座をして待っている総司の姿を見て「わっ」と声を上げた。


総司「いやだなぁ…。人を化け物みたいに。」


総司はにこにことして言った。


土方「ば、ばか…。まさかおまえが部屋にいると思わなかったから…。…近藤さんのところにもいなかったし、どこへ行っていたのかと思ったぞ。」


総司は両手をついて頭を下げた。


総司「お帰りなさい。」

土方「たっただいま。」

総司「お風呂にします?ご飯にします?」

土方「ばかやろう。」


土方はそう笑って、どっかとあぐらをかいて座った。


総司「江戸で、結構かき集められたようですね。」

土方「人聞きの悪い言い方をするな。」


土方は片頬をいがめて苦笑した。


土方「…ちょっと気に入らんのと同行だったがな。」

総司「伊東さんですか…?藤堂さんと同門だとかいう…」

土方「んん…」

総司「なかなかの色男ですからね。」

土方「…私が気に入らんと言うのはそういう意味じゃない。」

総司「大丈夫です。土方さんの方がずっといい男ですよ。」

土方「口の減らん奴だ」


土方は再び片頬をいがませて笑った。苦笑する時の癖である。


土方「おまえは不思議なやつだなぁ…」

総司「何がです?」

土方「…本当は今、誰とも口を利きたくないくらい疲れてるんだ。…しかし、おまえと話すと、その疲れが飛んでしまった…。」

総司「それは何よりです。」


総司はにこにことして言った。


総司「さて、副長をからかうのはこれくらいにして…」

土方「何か言ったか?」


総司は答えず、


総司「お風呂が沸くまでに、まだ時間がかかると思うので、少し横になって休みますか?」


と真顔で土方に尋ねた。

土方は苦笑した。


土方「そうだな…誰か呼んで、布団を引いてくれ。」

総司「私がやりましょう。」


総司はそう言って、立ち上がろうとした。


土方「ばか!助勤のおまえがやることか!誰か新人隊士でも連れて来い!」

総司「ああ、そうだ。彼にしてもらおう。とても綺麗に布団を引くから。」

土方「誰でもいい。早くしてくれ。」


総司は「はい」と行儀よく答えると、部屋を出て行った。


……


総司はしばらくして、大男を連れて帰ってきた。

土方はその男を見て、目を剥いた。


土方「おい!…そいつまだいるのか!!」

総司「もちろんいますよ。なぜです?」

土方「…まったく、その棒振り男のどこがいいんだか。」


土方はぶつぶつと言いながら着替えている。土方に「棒振り男」といわれた新人隊士は、大きな体を小さくした。

総司は微笑んで大男に言った。


総司「気にしないで。こう見えて根は優しいんです。」

土方「つべこべ言わずに、早く布団の用意をさせろ!」

総司「はいはい。…じゃぁ、お願いしますね。」


男は頭を下げると、布団の用意を始めた。

大きな男が布団をちまちまと用意するのを見て、土方は眉をひそめた。


土方「なんだ…手馴れているな。」

総司「新選組に入る前には、旅館で下働きをしていたそうですよ。本当は土方さんの小姓に合っていると思ってたんですけどね。」

土方「いらん!!」


土方はもろに嫌な顔をした。

男は用意を終えると、土方に丁寧に頭を下げた。


土方「おい…ちゃんと総司に刀の振り方を教わるんだぞ。一番隊にお情けで入れてもらったとはいえ、総司に恥をかかせるなよ。」


男は恐縮したように頭を下げ「はい」と答えた。


土方「…で、名はなんと言った?」

総司「中條ちゅうじょう君ですよ。中條英次郎君。」

土方「…ったく、名前だけは立派だな。まぁいい。ご苦労。」


中條という大男は恐縮したまま、総司に連れられて部屋を出て行った。


土方(何か気に入らん男だ…そのうち、下働きにでも格下げするか…。)


土方は大きくため息をついて、体を横たえた。


土方(…気に入らんと言えば…あの伊東 甲子太郎かしたろう…どう料理するか…)


体は休めても、土方の頭の中は休むことがなかった。


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