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雨のリズム  作者: 海来
43/94

[43] 勇者ユテの孫

 ヒルートとフィーナ、フーミィを乗せたブルリーは、何処に行くのでしょう。その背中では、何やら起こっているようです。

 ブルーリーの背中で、ヒルートが笑っている。

『フィーナ見えたか? スカイが我を忘れて怒ってリクに説教されるとはな。面白いものがみられたじゃないか』

 ブルーリーの翼越しに、下の様子を見ることは出来ないが、ヒルートが風の妖精に送らせている情報を、音声付の映像のようにフィーナにも見せていた。

『ヒルート様。その様な言い方は、スカイ様に失礼です。スカイ様はシルバースノー様をお守りしたのですよ。素敵ではありませんか』

 スカイを素敵と表現したフィーナの言葉に、ヒルートの眉がピクリと動いた。

『私も、お前が危険に見舞われれば、守って見せる』

 フィーナは、クッと笑った。

『ヒルート様、もしかしてヤキモチですか。だったら、とても嬉しいのですけど』

 フィーナの言葉に、ヒルートの顔は微妙に歪んで赤くなったが、何事も無かったかのように表情を無理に戻す。

『さっさァ、下は今少し時間が掛かりそうだ。案内が目覚めるまで、私達は隠れる場所を探さなくてはならん。ブルーリー、あの岩棚に向かってくれ』

 ブルーリーが、フンッと鼻を鳴らした。

『妖精使い、お前も尻に敷かれそうだな。どんな生き物も、女が生み出すもの。女の強さは、その辺りから来るのだよ。お前も、我がの子を産んでくれる女には頭が上がらなくなるさ』

『ご老体、いらぬ口を叩いてないで、早く移動してもらいたいものだな。レイン姫の魔術も時間切れのようだから、お前の艶の無くなったウロコでも月の輝きの元では、かなり目立つと思うが』

『いらぬ口はお前の方よ。私のウロコは月などなくとも輝いておるわ。さァ何処に隠れる早く言わんか。岩棚は目の前だぞ』

 ヒルートは、すっと視線を岩棚に向けると呪文を唱えて目を閉じた。

 ほんの一瞬、目指す岩棚の中腹がキラキラと輝いたかに見えた。

『ブルーリー、見えたか? あそこだ』

 ブルーリーがフンッと鼻を鳴らすと細い煙が上がって風の中に消えた。

『あの場所は安全なのか? 岩棚全体に魔法の波動を感じるぞ。着いたはいいが、魔法に取り込まれるのでは話しにならん』

『心配はいらん。この岩棚の下半分は大地の妖精が守っている。大地の妖精に場所を提供させるのはわけない事。私の妖精の呪文をやぶれる者など、大地の魔術師以外にはいない。彼らにはあいにくだが、大地の魔術師リク様は我らの仲間だ』

『ああ、忘れておったわ。あのリクさ・まの事をな』

 ヒルートにしっかりと肩を抱かれ、その身を預けるようにして座席に座っているフィーナがクフフっと笑った。

『ヒルート様とブルーリーさんは、いつの間にか仲良しになられたんですね。少し妬けてしまいます』

 ブルーリーがクワッと小さく鳴いた。

『妬いてなどいらぬわ! こんなひねくれ者、お前さん以外には惚れる物好きはおらんわ。せいぜい大事にする事だな。一時も離れず守り続けてお見せ、守人のフィーナ』

 フィーナは、ブルーリーの言った事に何も返す様子は無い、何を思っているのか、そのままま岩棚を見つめている。

 ヒルートが不思議そうにフィーナの顔を覗き込んだ。

『どうしたのだフィーナ。乗り物酔いか、気分が悪いのではないか?』

 ヒルートは、フィーナの頭に手を置いて、髪を優しく撫でながら自分の方へ引き寄せた。フィーナは引き寄せられて、さらに密着したヒルートの身体をしっかりと抱き締めた。何かを考え込む様な表情はヒルートには見えない。フィーナは、声に出してヒルートに話しかけた。

「ヒルート様、この旅の間に、もしも私と離れなければならない時がきたなら、これを……これを私だと思って、肌身離さずお持ちください。闇の妖精たちに取り込まれないように、私の歌の魔法を織り込んで編んであります。決して放さないで下さい……」

 そう言って、フィーナはヒルートの手の中に何かを押し付けた。

「何を言っている。お前と私が離れるわけが……」

 ヒルートは自分の手に押し付けられた物を見て、息を詰めた。それは、薄い茶色の髪の毛と薄紫のリボンで編まれた長くて細い平らな紐だった。紛れもなく、それはフィーナの髪とリボンで出来ている。ヒルートは、その時なって初めて自分が撫でているフィーナの長い髪が、一房短く切られていることに気付いた。

「フィーナ……女性にとって髪は大切なものだろうに。ありがとう……お前と共にいる時も、これを身につけていると誓う。大切にするぞ。だが、お前と離れる事など決してありはしない」

 そう言いながら、ヒルートは自分の髪に指を絡め、一気に引き抜いた。

「…クッ…」

 そのまま指を揺らして呪文を唱えると、金の髪は細い鎖に変わった。

「お返しだ。これは私の一部。お前を守る守護者の鎖」

 金の鎖をフィーナの首に巻きつけると、それは継ぎ目なく繋がった。ヒルートは、フィーナに貰った紐を、クルリと自分の首に巻きつけ端に出ているリボンをほどく事が出来ないほどに硬く結んだ。

「これで、二人は今まで以上に繋がった。安心していい」

 ヒルートの言葉にフィーナの瞳から涙が零れ、その瞳には何故か苦悩が浮かんでいる。ヒルートが眉間にしわを寄せ、怒ったような口調で聞いた。

「フィーナ! 何がそんなにっ」

 ヒルートの口をフーミィがいきなり塞いだ。今まで、座席の横から、タカ達のいる方向の森ばかり見つめていたフーミィの存在は、ヒルートの中から忘れられていて、驚いたヒルートは目を見開いた。

 フーミィは、大きな瞳でヒルートを睨みつけた。

「ヒルート、ダメ! フィーナは怖がってるんだよ。怒った声は良くないよ。フィーナはとても不安なんだ。僕には分かるの知ってるでしょう」

 ヒルートは頷きながら、フーミィの小さな両手を自分の口から剥がした。そして、優しい声で聞き返す。

「悪かった。でも、何をそんなに怖がる事があるのだ」

 フーミィは首を振った。

「そんなの分かんないよ。でも、恐れてる気持ちは伝わってくる。心が震えてるんだ」

 今度フーミィは、自分の手をフィーナの胸の直ぐ上にあてがって癒しの魔法を送り込む。少し驚いたものの、フィーナが微笑んだ。

「ありがとうフーミィ、優しいのね」

 ヒルートもフィーナを再び抱きしめる。

「フィーナ、お前が恐れている事とは何だ……」

「予感」

 フィーナの言葉に、ヒルートはピクリと眉を上げた。

「幼い頃から、お前は[悪い予感]がすると言っては、私の行く手を遮ったものだ。だが、そんなのもの……」

 フィーナは、自分を抱きしめるヒルートの腕を強く握った。

「それは、いつも当たりました。ヒルート様は、私の言う事など聞かないで行ってしまわれて、いつも怪我をするか、病に侵されて帰っていらした」

 ヒルートの頬がヒクリと動いた。

「それでも、今回の悪い予感が当たるとは限らん。何を感じているのか知らんが、私達が離れ離れになる事を予感しているなら、いらぬ心配。私はお前を決して放してなどやらんからな!」

 ヒルートはフィーナを抱きしめた腕に力を込める。ヒルートに再び強く抱きしめられて、フィーナは身体をヒルートに預けるようにもたれかかり、強く抱き返した。

「ヒルート様は、私が必ずお守りします。私はあなたの守人ですから」

 フィーナの瞳は、今むかっている炎の民の村を囲っている岩棚を、きつく睨んでいた。

 ブルーリーは、二人の会話が聞こえているのか、いないのか、何も言わず更にゆっくりと岩棚に向って静かに飛んだ。

 ヒルートとフィーナに挟まれていたフーミィがやっとの思いで抜け出してきて、座席の前側にしがみ付いた。

「苦しかったァ〜。でも、フィーナの予感が当たらないといいんだけど」

 ブルーリーが少しだけ振り返った。

『ご苦労様だね、可愛い子。そこの二人には、私からの守りも贈ってやろう。お前も、それならもっと安心できるだろう。ほらっ』

 ブルーリーの口から白い煙のようなキラキラ輝くものが吐き出された。

「これって何?」

『ドラゴンブレスだよ。あらゆる者から姿を隠す、竜の魔法』

 白いキラキラは、ヒルートとフィーナ二人の首の周りでクルクルと輪を描いた。輝きが消えると、二人の首にあった筈の首飾りは消えていた。

『あの二人以外には、何も見えない。お前にもナ』

 フーミィが嬉しそうに笑った。

「ありがとうブルーリー。やさしいね」

『お前もな、可愛い子。それに、お前にも贈り物があるぞ。楽しみにしておれ』

 フーミィの瞳が輝いた。

「贈り物? ねっなに、何!」

『また今度教えてやろう。私とお前には時間があるからな。お前はしばらく私と一緒に隠れていなくてはならんだろうからな』

 フーミィの顔がなんとなく淋しそうになった。

「そうなんだ……」

 その時、ブルーリーは岩棚の輝いていた場所に降り立つ準備に入っていた。













 ユティは、まだ目覚めておらず、フワフワとした空間に身を置いている様に感じていた。

 誰かの呼ぶ声がする……、よく知っている優しい声が、自分の名を呼ぶ。

 いつも見る夢の中だと、冷静になる自分と、また襲ってくる不安と悲しみに怯える自分が、ユティの心を乱した。

「ユティ、ユティ泣いてはいけないわ。強くならなくては、あなたは勇者ユテの孫。賢く強かったあの人の孫なのよ」

 幼い自分が目の前にいるのを、ユティは見ていた。

 その横には、母の様に姉のように面倒を見てくれた人が立っている。

「そんなの無理だもん。ヒックヒッ僕は弱虫なんだ。ウック……読み書きが出来たって、力が強くなきゃっヒック弱虫のバカなんだ」

「誰がそんな事を言ったの? そんな事は間違ってる。力が強いだけでは何も出来ないわ。考える頭がなくては、獣にも劣る。でも、力はなくても賢ければ、何でも出来るわ。ユティ…自分の賢さを軽んじてはいけない。力が弱いと言うだけで、泣いていてはいけないのよ。心を強くなさい。誰にも負けない強い心を持つのです。一人でも生きていけるように……」

 幼いユティは、顔を上げて不思議そうにその人を見つめた。

「なんで? 僕は一人じゃないよ。ディアがいる。ねェディア? ずっと一緒でしょ?」

 ディアと呼ばれたその人は、真っ白な衣裳に身を包み、ゆっくりとユティの前から遠ざかっていく。

「ディア。ディア! 行かないで! まだイヤだ! 行かないで。一人にしないで! ディア」

 











「ディア!!!」

 ユティの伸ばした手を、リクがしっかりと握った。

「やっと起きた。随分とうなされてたぞ? 辛い夢でも見てたのか」

 そう言いながら、リクはユティの心を宥めていく、辛い夢を見た震える心を癒すように、見知らぬ人の中で不安に怯えないように、シルバースノーに対して見せた怒りを抱かぬように、ゆっくりと癒しの魔法を送り込む。

 ユティは、自分の中に流れ込んでくる優しい魔法の波動を感じて、流れの源であるリクの手を見つめ、少しずつ顔を上げてリクの目を見た。

「君は……心の癒し手なのか……こんな子供が? まさかっ、心の癒し手は大地の魔術師にのみ現れる。大地の魔術師は、千年も前に行方不明になってからはいないはずだ。それも、こんな子供が心の癒しの魔法を?……」

 リクがユティの手を放し、自分の頭を掻いた。

「そんなに褒めんなって、恥ずかしいじゃネーカ」

 スカイが、リクの後ろから覗き込んだ。

「リク、馬鹿なことを言っている暇はないぞ。この男に聞きたい事があるんだ」

 ずいっと自分の前に出てきたスカイの姿に、ユティは先程までの状況を思い出して、ビクッと身体を振るわせた。ローショがスカイの傍らに跪き、スカイを見上げた。

「スカイ様。この者に話を聞く役目は、私にさえて下さいませんか」

 ローショの真っ直ぐに見つめる目に、スカイはグッと言葉に詰まる。幼い頃から自分の身の回りの世話をやき、武術の指南役でもあったローショが見せるこの表情は、スカイが過ちを犯す前に、自分自身で引き際を見極めさせようとする時のものだと思い出す。苦笑いのような表情で、スカイはローショを見た。

「ローショ、心配はいらん。私もいつまでも子供ではない。だが、今回はお前に任せたほうが良さそうだ」

 ローショは、優しく微笑んだ。

「スカイ様を子供だとは思っておりません。少々シルバー様の件で気が立っておいででしょう。この男にとっては、私の方が質問に答えやすいと考えたまでです」

「ああ、その様だな」

 スカイは、ユティをチラリと見て、溜め息をつきながら、シルバースノーの横に戻っていった。 

 それを確認してから、ローショはユティに向直った。

「お前の名は何と言う」

「ユティ……です」

「ではユティ、お前が言っていた[炎の竜神の夫になる者]とはどういう意味だ。それに、炎の竜神を解き放つとも言っていた。失われた竜人とは何者だ」

 ユティは、ジッとローショを見つめていたが、スカイとシルバースノーが気になるのか、チラチラとそちらを窺い始めた。

「答える前に、教えてもらえませんか? そのゥ、あの銀の翼の竜人は、あなたの妻ではないのですか?」

 ローショは、しっかりと大きく首を振った。

「違う。あの銀翼のご婦人は、その横にいらっしゃる私の主の奥方になられる方だ」

 ユティは、ローショの答えに明らかに安堵の色を見せたが、新たな疑問が湧いてきたようだった。

「失われた竜人に主がいるなど、相応しくない。竜神の夫になろうと言う者に、主だなんて……」

 ローショは、グッとユティの肩を掴んだ。

「お前の質問は終わった。今度はユティ、お前が話す番だ。違うか」

 ユティは、ゆっくりと起き上がると、怯えた様子を微塵も見せずに周りを囲んでいる者達をくるりと見た。リクに癒してもらった為か、それともユティが初めから持っているものなのか、その瞳には落ち着きと、賢さが見えた。

 ユティは、ゆっくりと話し始めた。

「はい、お話しします。私の言った秘密の伝説とは、炎の民ですらごくわずかな者達しか知らないのです。数年前に勇者ユテの墓石に浮かび上がったのを、俺が偶然に見つけたんです」

 ローショの身体がピクッと動いた。

「勇者ユテの墓石? ユテに墓があるのか」

「はい、勇者ユテをご存知なんですね」

 ローショは、硬い表情でユティを見つめている。

「いいや知らない。ただ、聞いただけだ。先を続けて」

 ユティは怪訝な表情を浮かべたが、直ぐに話を戻した。

「昔から、伝説は存在していました。勇者が現れ炎の竜神を解き放つと言うものです。ですが、勇者ユテの墓に現れた新たな伝説は、長老には予言だと言われましたが、俺は伝説だと新たな伝説だと思ったんです。一瞬だけ見えたそれは、『失われし竜人りゅうびと戻り神と結ばれしとき、新たな竜が解き放たれる』と言うものでした。長老と俺を含めた数名で、これを解き明かそうと研究を続けてきました。その結果、[竜神と竜人の間に新たな神の子供が誕生する]と言う予言ではないかと長老は確信された。失われし竜人は、竜神の夫となり、子供をもうけるのです。あなたが、その竜人なんでしょう、俺には分かる、あなただって。私達の神は解放されるんですよね。これで誰も辛い任務に苦しむ事は無くなる」

 一気にまくし立てるように話し終えたユティは、興奮からか大きく肩で息をしていた。ローショは、目を細めただけで、表情を変えることなくユティを見つめていた。

「ユティ……私は失われし竜人など初めて聞いたんだ。自分がそうであるのか、違うのかなど分かるはずも無い。期待していると絶望は大きくなる」

 ユティは、ローショにすがりつくと腕をきつく掴んだ。

「いいえ。あなたです、竜人なんて他にいるはずがありません。あなただ、あなたなんだ!」

 ローショは、首を振ってスカイを振り返った。

「スカイ様、計画の変更が必要です。シルバー様と私は竜族の使者として炎の民の村に入ろうと思っていましたが、失われし竜人などと間違われる事になれば、これから先の目的にも支障が出るかもしれません」

 ローショに軽く頷くと、スカイはシルバースノーの翼に触った。

「ローショには、しばらくの間は翼をしまっておいてもらわねばならんだろうな。スノー一人に使者としての役目を演じてもらう。スノー、今から私とお前は神の竜と従者の関係になる。今までの様には接しられない。分かってくれるな」

 シルバースノーは上目遣いにスカイを見るとニヤリと笑った。

「あら、こんな素敵な従者なら誘惑したくなるわ」

「スノー!」

「冗談よ、分かっているわ。炎の竜を救う為にやって来たとでも言えばいいのかしら? そうすれば、簡単に炎の竜に近づけるのじゃない」

 ローショが、二人の会話に割って入る。

「いいえ、それでは身動きが出来なくなってしまう恐れがあります。予定通り、竜族の再建を目指す若き指導者とそれに賛同する人間の一行と言うことにしましょう。炎の民は、竜族の再建には興味を示すはずですし、上手くすればもてなしてくれるでしょう。炎の民にとって、炎の竜は大切な神であり、竜族は友人なのですから」

 シルバースノーは、スカイを一度見つめてから、ローショに頷いて見せた。

「分かったわ。その役目、きっちり演じてみせるわ」

 スカイが微笑んだ。

「ありがとう、スノー」

 ローショの斜め後ろから様子を見ていたタカが、フーミィがいなくなって淋しいのか、首の辺りを摩りながら話しかける。

「でも、この青年は……ユティさんはどうするんですか。全てを聞いてしまっている。何処かに閉じ込めておくわけにもいかないでしょう?」

 スカイが頷いて、ユティに近付いていく。ユティは、それに気付くと、ゆっくりと後ずさりを始めた。

「何ですか……止めて下さい。俺はっ何もいっいわ言わない。……俺に何かあれば、炎の民は黙っていない」

 スカイの肩をローショが押さえた。

「私がしましょう。彼が少し怯えています」

 ローショの掌が、ユティの額に届いた。

 掌に覆われた額が、パーッと光を放ったとたん、ローショが短い呪文を唱えた。ユティは、放心したように口を開けていたが、何か囁くように言葉を発している。

「俺の……には……竜の巫女……血が……ほのお…民…ユテ……ごを……ない」

 ローショはゆっくりと掌を回しながら、ユティから離れた。

「これで彼は、私達の事を竜族の若き指導者の一行だと思い込んだはずです。後は、村まで案内してくれるでしょう」

 スカイは、小さく頷いたが、その顔は、いつもより冷たいような気がした。スカイの横にやって来たリクが、眉を片方上げてヒルートを真似た顔をする。

「おや、スカイ王子はまだ怒っておいでのようじゃないか。まさかユティを傷つけようなどと考えていたのじゃあるまいな」

 スカイの頬がピクッと動いた。

「う・る・さ・い!」







 勇者ユテの孫、ユティの記憶を操作した一行はうまく炎の民の村に入ることが出来るのか……。

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