[2] プロローグ [レイン]
プロローグ[リク]の対となる、もう一つのプロローグです。これからレインが大胆な行動をしてしまうキッカケが・・・
「ハアァ……」
「もう、先程から三度目の溜め息ですが……、レイン姫」
「…………」
「私とでは会話も弾みませんか……あなたに会うために長い旅をしてきた花婿候補との一時は、姫様には大変な苦痛の時間のようでございますね……」
「…………」
ここは、このソラルディアの空の領域に存在する[雲の城]の謁見の間。
そして私は、この城の第二皇女。
そして、いま私に向かって長々とイヤミを言ってたのが、[空の城]の第一皇子スカイ、花婿候補って言うのは間違いないけど、私にしてみれば幼馴染のお兄ちゃまって感じ。だって元はと言えばケトィーリナ姉様が、あの[緑の城]の王子と駆け落ちなんかしなければ、スカイとの結婚話なんて私には無関係だったのに、スカイだってケトィーリナ姉様が好きなんだから。
スカイもスカイだわ。親の言いなりで、嫌なら嫌って言えばいいじゃないの……まるで初めて会った者同士みたいな話し方までするなんて、そりゃーこの広間には、執事や衛兵や小姓なんかが一杯いるけど、そこまで他人行儀にする事なんてないじゃない。
自分の本当の気持ちを親に言えないからって、私にヤツアタリなの。冗談じゃないわ、フン。
えっ、文句ばっかりって……文句も言いたくなるわよ、ついこの間まで何も考えずに自由に跳ね回ってた花も恥らう13歳の女の子なのよ。それが結婚ですって、笑わせないでよ。
「……いつまで、お続けになるおつもりですか」
「…………」
「私も長旅で少々疲れているようで、申しわけないがこのまま下がらせていただきます。レイン姫のご機嫌のよろしい時にでもお誘い下されば、お話しもする機会もございましょう。では、失礼いたします」
「…………」
やっぱり最後まで、その調子を崩さないつもりね、くー腹が立つ。そのまま出て行くつもりなの。なに、振り向いた、文句でも言うつもりなら聞いてやろうじゃないの。
「レイン姫、ご自分の気持ちに添わない事を行わなければならないとき、自分自身の心と戦わなくてはいけない。そして、勝たなくては。姫は、もう[雲の城]の唯一の皇女なのですから。雲の城の平穏が、あなたの最大の望みでなくては……今のあなたは、おもちゃを取られた子供のように、ひたすら駄々をこねている。それでも瞳には夕立の空のようなどんよりとした悲しみが、今にも雷を落とそうと潜んでいる……私には、とても危険に見えます……」
「スカイ皇子、ご退出。衛兵、ゲストルームまでお供するように」
「はっ」
「……」
スカイにお供は必要ないでしょうに。自分の城の様に知ってるんだから。
「姫様、お気持ちはお察しいたしますが、あれではスカイ様に申し訳がございませんですよ」
「なによ、ドーリーお前までスカイの味方なの」
「何をおしゃいます。私はレイン様の乳母でございます。ずっとレイン様の味方です。でもスカイ様はお小さい頃にこの城で過ごされいた時からケトィーリナ様との婚姻は決まっていたのですから、それを思えばスカイ様のお気持ちもレイン様と同じかと。そうです、苦しみも同じなのではありませんか」
ドーリーったら、何じーっと見てるのよ。で、何、その溜息。
「どうやら賢すぎる姫様には、お解かりになりませんようでございますね」
何よ。ドーリーまで、私が聞き分けのない子供だって言うの。いいわよ、聞き分けのない子供になってやるわ。子供にだって譲れない事もあるのよ。そうよ、彼だけは諦めないわよ。初めて見つけたときから運命だって信じてるんだから。
「ドーリー……部屋にさがります」
ちょっと淋しそうに言ってみたけど……。
「かしこまりました。お部屋には、何かお飲み物をお持ちいたしましょうかね。そうそう、ハーブティーに蜂蜜などお入れしましょうね」
「何もいらないし、誰も来ないで……しばらく一人にして欲しいの」
「はい……かしこまりました」
ドーリーたら、ウフフ、私が反省してるとでも思ったかしら。今の演技はなかなかじゃない。反省なんかするもんですか。
ち・が・う・わ。彼に会いに行くのよ、今日は必ず成功させるわ。きっと……
いよいよリクとレインは出会い触れあいますが、それはレインの思惑とは違う結果に・・・!とにかく頑張って書きます