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ミラクルマシン

あっという間にデビュー当日がやって来た。


日付が変わってすぐに龍神サンからメールが来ていた。


“デビューおめでとう!!”


ってメチャクチャ派手なメールで。


もちろん即保存。


家宝だよ。


今日はいつものライヴハウスを貸し切っての最初で最後のワンマンライヴ。


メンバーそれぞれが“自分の来て欲しい人”に感謝の気持ちを込めて直接手渡しでチケットを渡した、完全フリーライヴ。



自分達の身内を含めてお世話になった人ばかりをご招待してるから告知は一切ナシの、ある意味シークレットライヴ。


常連のファンの皆さんも御招待させて頂いて。


誰が言い出すワケでもなく、なぜか自然と決まったんだ。


賛同してくれたライブハウスのオーナーがタダで使えって言ってくれて。


最初は完全にウチらが払うつもりでいたよ?


だからタダで貸してくれるって聞いた時はメチャクチャ遠慮しちゃったよ。


最終的にはドリンクもフードもライブハウスで出すんじゃなくてウチらが用意して、照明もお願いせずにオーナーやスタッフさんにはちゃんと客席でライブを楽しんでもらおうってコトになり。


学校のみんなはもうデビュー曲が配信されてるしウチらがメディアにも出てるからか、今日がデビューだって意識があまりないみたいでいつもと変わらない状態。


通常のデビューライヴは今週末に行われる。


会場を聞いた時みんなビックリしちゃってたよ。


“「Zeppねっ」”


って、溢れんばかりの笑顔で言われた時は一瞬ぽかんとしちゃったけど、次の瞬間みんなで絶叫した。


「Zeppぅぅぅぅぅ?????」


全員の声が見事に合ったトコロでセンちゃんが続けた。


「デビューライヴするトコじゃないでしょぉぉぉぉぉ!!!!!」


みんな激しく頷く。


「渋公とか青年館とか言う意見もあったんだけどとりあえずZeppで決定した。」


恐ろしいコトをあっけらかんと言う人だねぇ、この人は。。。


開いた口が塞がらなかった。


「渋公ぉぉぉぉぉ?????」

「青年館?????」


みんな驚きすぎて声がおかしい。


「別に驚くコト無いよ。グレイトロック上がりはみんなそのクラスでデビューライヴ演ってるんだから」


憎らしい程爽やかに言ってのけるモトさんに対して半ば苛立ちすら感じた。


だけど、即日完売してしまったらしい。


グレイトロック効果は想像以上に凄まじかった。


急遽翌日に追加公演を入れたらしい。


それももう完売。


「龍神&ヒヨ効果だな」


あろうことかテッちゃんが言い出した。


この上ない程に驚くアタシ。


みんなはテッちゃんの意見に同意なのかやたらと頷いている。


ちなみに龍神サン達vivienの皆さんには事務所を通して御招待してる。


もちろんキャンディバーの皆さんも。


「失敗は許されないね」


超真剣な眼差しで言ったテッちゃんの意見に、誰一人反論出来なかった。


まぁ、する必要もないけどね。




...と言うどプレッシャーを抱えたデビューライヴを控えての今日のthanksライヴ。


『おはようございます!』


一旦家に帰ってからライヴハウスに入った。


いつもは対バンの皆さんがいて賑やかなのに今日は静か。


「あっ、ひーちゃん!」


オーナーに呼び止められた。


「荷物届いてるよ」


渡されたのは小包だった。


“向坂龍二”


誰だ?


さきさかりゅうじ?


ん?????りゅうじ?????


『まさか龍神サン?????』


アタシは叫びながら大慌てで包みを開けた。


慌てるあまり手がもつれて上手く開けれない。


手も震えちゃって。


「開けてやるよ」


たまたま現れたテッちゃんが冷静に開けてくれた。


『ありがとう』


中にはメッセージカードと超一流ブランドの箱が入っていた。


メッセージカードに飛び付く。


“Dearヒヨリちゃん。デビューおめでとう。プロとしての誕生日だね。大事な妹へ、オレからのささやかなプレゼントです。誕生日おめでとう。 龍神”


気を失いそう。


全身の穴と言う穴から何かが出そう。


アドレナリン、大分泌show!!!!!って程に。


龍神サンの本名知っちゃったぁぁぁぁぁ。


ファンのくせにそこまでコアな情報は知らなかったアタシ。


はっっっっっ!!!!!


お礼しなきゃ↑↑↑↑↑


「せっかくだから着けて写メ送ったら?」


おっっっっっ!!!!!niceな考え。


テッちゃんの言う通り、箱を開けて中を取り出してみた。


ひゃ→→→→→→→→→→


「“dian-blood”じゃん!!さすが天下のvivien」


持つ手が震え目眩さえ感じる。


ただでさえ超一流ブランドってダケで畏縮しちゃうのにそのブランドのなかでもランクが上とされるデザインのペンダントだった。


ラインストーンが散りばめられた、ティアラをモチーフにしたシルバーのペンダント。


「ハイ笑って!」


いつの間にかテッちゃんがアタシのスマホを持っていた。


笑えるかぁ!!!!!


超ひきつってるよ。


「そんなんじゃ送れないよ。笑って!」


そんなコト言われてもぉ。


何度も何度も撮り直して、やっと8回目でムチャ振りオタクは納得した。


しまいには3回目辺りで関が現れてなぜかテッちゃんとのツーショットで撮り出した。


テッちゃんはアタマを下げて。


まだ未成年なのにこんなモノ貰ってイイのか?


撮り終える頃にはみんなが集まっていた。


「すげぇなひぃ。コレ、ン万すんぞ?」


下世話なナオくん。


「お前、とんでもない人物を味方に付けたんじゃねぇの!?」


滅相もないコト言い出すのはセンちゃんだ。


「だから言ったでしょ?」


ん?


得意気なテッちゃん。


「オレ達のグランプリは必然だったんだよ。“いけそうな気がする”って言ったでしょ?」


全員絶句。


今言ってもあまり説得力が・・・。


己のリーダーに恐怖すら感じた。


「vivienファンに知られたらどうなんだろうな」


関が血の気が引くようなコトを言い出した。


「ぃや、龍神サンは恐らく公言すると思うよ。今日辺りブログに載せんじゃない?今の写真」


テッちゃんがサラリと言い放った。


背筋が凍るよ。


「ぃや、龍神サンのやり方はある意味正しいと思う。自分で言ってしまった方が防御出来るでしょ?“攻撃は最大の防御”って言うし。意味違うけど」


「確かに」


みんな納得してるし。


「いやぁ、アレは警戒心を煽るだけっすよ」


と関。


「確かにそうかも知れない。でもソレはあくまでも対ファンだろ?対マスコミには絶好の対策になると思うぞ?」


どっちでもイイよあたしゃ。


恐怖で背中が丸くなってる。


「ヒヨもブログに載せちゃえばイイんだよ。何なら龍神サンより早い方がイイよ。今とりあえず送んな?」


テッちゃんに言われるがまま、アタシはブログに投稿した。


“happy birthday!ワンワー♪”


ってタイトルで。


“龍神サンからプロとしてのbirthdayだってコトで、プレゼントを貰っちゃいました!!皆さんごめんなさい<(_ _;)>この幸せはデビューライヴで皆さんにお裾分けしますから!!龍神サン、ありがとうございました。”


送信っと。


アタシもこの写メ添付して。


「さすが名フロントマン。アドリブ巧いね」


「とっさに“この幸せはデビューライヴで皆さんにお裾分けします”なんて言えねぇよ」


しっかり見てたみんなが口々に褒める。


みんなの言い方はいかにもわざとらしさ爆裂だけど、ステージングもそうだけど意外と追い込まれた時に火事場のクソ力的な力が出るもんなんだよね。


ナチュラルハイに近いかもね。


もちろんペンダントを着けたままステージに上がったよ!!


ペンダントは必要以上に重かったケドね・・・。


でも重さの分、何だか護られてる気がした。


おこがましいのは分かってるケド。


お陰でいつも以上にハイテンションになっちゃったっっっ!!




...その日の龍神サンのブログには見事にペンダントのコトが出ていた。


ひきつりまくったアタシの笑えない笑顔の画像と共に。






今日はデビューライヴ。


昨夜移動してきて今日は朝からリハーサル。


全員珍しく緊張してるんだ。


そりゃそーだ。


Zeppが即日完売なんて。


ワンマンでさえこの前のthanksライヴが初だったってのに。


緊張を解そうと、関がしきりにブログ用に写メを撮ってる


久し振りにピリピリした空気が流れている。


「もう1回!」


自分のイントロに納得いかないまぁクンが叫び、


「ストップ!!!!!」


センちゃんのドラムが遅れ気味でテッちゃんが吼える。


しかも伝染して上手く行っても今度は関がトチる。


いつものコトだから今日はほっとこ。


とか言うアタシも緊張で指が震える。。。


『休憩!』


勝手にアタシが叫んだ。


コレしかテはないなと思って。


「じゃ10分休憩」


モトさんが続けて言ってくれた。


アタシは通路のケータリングのクーラーボックスに走った。


缶コーヒーを全員分持ってフロアに戻る。


みんな各自楽器から離れてなかった。


テッちゃんがこんな状態なのも珍しい。


いつもは1人でも冷静なのに。


ここまで全員緊張してると、“アタシがしっかりしなきゃ”って意識が恐れながらも起きる。


『一息ついて!ハイ』


1人1人に微笑んでコーヒーを渡す。


「ひよー!!」


客席のモトさんがアタシを呼んでる。


モトさんは結局そのままウチらのマネージャーになったんだ。


『はぁぁぁぁぁい!』


ステージの上からみんなにコーヒーを渡しながら叫ぶ。


「裏口に急いで!!可能ならテツも」


胸の鼓動が高鳴った。


龍神サンだ!


直感だった。


『よろしくっっっ!!』


アタシは残りのコーヒーをまとめて関に渡して裏口に猛ダッシュした。


ペンダントを強く握りしめながら。


「おはようございます!」

『おはようございます!!』


テッちゃんと少しズレて挨拶。


目の前には眩しく輝く (アタシvisionで) vivien様ご一行が燦然と立っていた。


ひれ伏したくなる程の神々しさ。


『コレ、ありがとうございました』


まごつきながら。


「すげぇ似合ってるよ!」


vivienの(トキ)サン。


『ありがとうございます。こんな高価なモノ戴いちゃって、なんてお礼したらイイか』


赤面であたふたして。


お礼を言うのが精一杯だよ。


「コイツの気持ちだから気にしないでイイよ」


同じくメンバーの風雅(ふうが)さん。


「似合ってるからそれがお返しだよ」


まっ・・・、ま.ぶ.ひ.ぅいぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!


目を被いたくなる程に眩しい龍神サンだった。


「御花まで頂きまして、ありがとうございます」


モトさんが龍神サン達にアタマを下げた。


えっ!?そーなの??


と思いながらもアタシもアタマを下げる。


テッちゃんも。


「ちょうど今休憩に入ったトコロだったんでとりあえず楽屋へ」


さすがテッちゃん!そつないねぇ。


ボー然気味のアタシに代わってすかさず楽屋に案内出来るなんて。


「いや、構わなければ客席でイイよ。差し入れ持ってきたし」


vivienの風雅サンが紙袋を差し出してきてくれた。


「ありがとうございます!!!」


『ありがとうございます!!!!!』


2人で歓喜の声を上げた。


「さしずめこの時間に休憩ってコトはピリピリし始めて来たんだろ。少し腹ごしらえしな?腹が減っては戦は出来ないぞ」


これまた眩しい笑顔で龍神サンが言ってくれた。


ダメだ、眩しすぎてクラクラする。


立っていられないよ。


とりあえずステージに戻った。


「おはようございます!」

「ぁざっす!!」

「おはようございます!!」

「おはようございます!!」


vivienの登場にステージや客席にいたウチのメンバーが全員直立。


こんな機敏なメンバー見たコトないって程に機敏で、見てるウチらが驚いたよ。


ちょっと笑っちゃった。


差し入れのパンをみんなで頂き何とか雰囲気を戻して再びリハを開始した。


「じゃ、また夜来るよ」


仕事の為そう言ってvivienご一行は帰っていった。


早速ブログ更新!


タイトルは“ごちそうさまでした!”


“初のワンマンでメンバー全員ピリピリしたムードのリハの中、たまらずアタシが休憩を叫んで間もなく、神々しさ爆裂のvivienご一行が来て下さいました!しかもパンの差し入れ付きで!!とっても美味しかったです!ごちそうさまでした♪ ヒヨ”




何とかリハを納得行く状態で終わらせ準備に入ろうとしたら、今度はキャンディバーの皆さんが来てくれた。


さっきよりもメンバー全員緊張。


呼んだのはこっちだけどvivienさんにキャンディバーさんに豪華すぎだろ。


どっちももうドームやアリーナツアー演っちゃうくらいのレベルの人達だよ?


海外だって行ってるし。


ウチらにとっちゃ天上人だよ!!


ホントに神々しさがハンパじゃないワ。


良く厚かましくもこんな天上人を招待したモンだよ。


「招待してくれてありがとう」


ボーカルの巧サン。


「こちらこそ、お忙しい中わざわざお越し頂きましてありがとうございます」


6人の中でも一番リスペクトしているナオくんのテンションは大変なコトになっていた。


挨拶の声が異常な程に上ずっている。


もちろん全員写メ取りまくり。


この時ばかりは数時間後にはデビューライヴを演るって言うプロのミュージシャンのカケラはどこにも無かった。


完全に“ただの素人”


だった。






「いつまでやってんだよ関!セン!!開演だぞ!?」


開演5分前。


いつも準備が遅いのはこの2人。


オンナのアタシよりも遅い。


まぁクンがそんな2人にイライラしてる。


「デビューライヴから押すなんて何様なんだよ」


テッちゃんも容赦なく突っ込む。


全くだ。


「デビューライヴだから手ぇ抜きたく無いの!!」


と反論するセンちゃん。


「おめぇらはいつもだろ。早くしろ!!」


余裕のナオくんのツッコミも容赦無い。


「ヒヨ、頼む」


結局いつも仕上げはアタシがやることになる。


まだスタイリストさんがいないもので。。。


この2人は髪質的になかなか立ちにくいのに他のメンバーよりも良く動くからガッツリ立たせたいらしく、なかなか決まらないのである。


「すいませんモトさん、SEスタートして下さい!」


テッちゃんがモトさんに叫んだ。


「ぁいよっ!」


モトさんも呆れ気味。


「最初っからひーにやってもらえよ」


どっぷり呆れてるメンバーを代表して突っ込んだのはまぁクン。


SEが流れ始めた。


今回用に新しく創った曲。


「行くぞ」


テッちゃんの一言に座っていたメンバーがスッと立つ。


みんなの表情が変わった。


客席は満席。


今までにない音量の歓声が聴こえてくる。


この時点ですでに込み上げてくるモノが・・・。


ステージに繋がるドアの前で全員立ち止まる。


全員自然と深呼吸。


円陣になる。


“ひーちゃぁ〜ん!”

“関っちぃぃぃぃぃ!!”

“テッちゃぁぁぁん!”

“ナオぉぉぉぉぉ!!!”

“セン〜〜〜!!!!!”

“まぁク→→→ン!!!”


ひっきりなりに聴こえてくるコールにアタシはすでにうるうるしていた。


「今日はテツだろ」


まぁクンのコトバに全員頷いた。


自分にフラれる前に言ったとも言うけどネ。


「今日は全員で行こうよ。全員で一言ずつ言った後に、“気合い入れてく”で。押してるけどコレだけはやりたいんだ。イイ?」


・・・アタシ、ヤバし。


涙が流れてきたよ。


テッちゃんの声も目も表情もみんな優しくて。


「今日は後にも先にも無いスタートの日なんで、思う存分暴れましょう!!」


切り出したのはまぁクン。


自然と時計回りに流れた。


まぁクンのコトバにアタシはヒクヒク言い出してきた。


「お前ら全員愛してるぜぃ!!」


センちゃんのコトバに感情爆発。


嗚咽に変わってきた。


「足手まといにならないよう、頑張ります!!」


超笑顔の関。


「あっという間だったけど、演るしか無いから悔いだけは残さないように頑張りましょう」


ナオくんのコトバも効くわぁ。


アタシの番だよ。


ヒクヒクが直らないまま途切れ途切れに言う。


『ホントにありがとう。みんな愛してます』


泣いてるからコレが精一杯。


隣のテッちゃんの手がアタシのアタマに触れる。


「じゃ、覚悟はイイね。失敗とか後悔したらブッ飛ばすから。それでは」


テッちゃんの手が円陣の中央に伸びた。


みんなの手が次々に重なる。


いつもの光景なのにヤケに泣ける。


“ヒヨぉぉぉぉぉ!!!”


客席からのコールも涙の原因だ。


「泣いてたら歌えないぞ!!」


関に突っ込まれる。


ただ頷いた。


「せ〜の、」


テッちゃんの掛け声で初の全員コールが切られた。


約1名、ズビズビの涙声込みで。


ドアを開けるとスタッフさん達がハイタッチで迎えてくれた。


もう顔が上げれなかった。


汗拭き用のタオルが涙拭き用になっていた。


幸いアタシは一番最後に出るから少し落ち着かせてから行こう。


メンバーの登場に客席の歓声がさらに大きくなる。


ヤメてぇぇぇぇぇ!!!!!涙が収まらなくなるでしょおおお→→→


あれ?


1曲目のイントロが始まった?


1曲目はアタシがメインボーカルの曲なのに。


ステージのナオくんが“待て”って言ってる。


背中を叩かれ、振り向くとスタッフのリョウさんが冷え冷えのミネラルウォーターを持ってきてくれた。


だからこーゆーのが泣きの原因になるっての!!


でもすかさずまずは目に当てた。


『ありがとう!』


リョウさんとステージのナオくんに泣き顔で出来る限りの笑顔を見せた。


チラッと関の顔も見える。


アタシのメインボーカルのハズの曲なのにアタシが出てこないコトのどよめきが聴こえてくる。


絶妙のタイミングでアタシのマイクがスタッフから渡された。


アタシは歌いながらステージに向かった。


アタシの声に歓声がさらに大きくなる。


ダメだってばぁぁぁぁぁ。


涙声なの、バレてるよな。


泣き笑顔で登場。


頑張れアタシ!!


胸元のペンダントを強く握り締めた。


“龍神サン、力を下さい”


そう念じて。


隣の関がガンガン煽る。


何とか涙声のまま歌いきり2曲目に突入した。


龍神サン、ありがとうございました。


2曲目が終わったトコロでMC。


『wonderful☆worldでぇぇぇぇぇっす!!』


涙声をごまかすように叫んだ。


返ってくる歓声がハンパない。


またウルッとしちゃうよ。


『今日はデビューライヴにようこそ!!本当にみんなありがとうございます』


深々とアタマを下げた。


涙が床にこぼれ落ちた。


すかさず後ろに水を取りに向かった。


気付いてかそうじゃないのか関が話し始める。


「我がwonderful☆worldは、この度めでたくデビュー致しました!!と言うコトで、メンバーを紹介します!」


関、頼んだよ。


後ろを向いたままで心の中で関にお願い。


「大丈夫?」


テッちゃんが寄ってくれる。


ただ頷いた。


関とセンちゃんの掛け合いの間に何とか収まったよ。


その後は関も特にアタシの涙のコトは触れないでくれて泣かずに済み、何とか本編を終えた。


ソデに引っ込むとソコには龍神サン達がいた!!!


しかもハイタッチで迎えてくれて。


「良かったよ!」


テンションMAXのアタシは限界を振り切って理性が皆無になったようで、あろうことか恐れ多くも龍神サンに抱きついていた!!!


物凄く自然な行動だった。


周りもテンションMAXを振り切っているからか誰も止めずに。


ほんの一瞬だったけど、龍神サンもごく普通に応じてくれた。








アタシはとんでもないコトをしている感覚が、


まるで無かった.....


























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